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9話
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久々の美味しい料理によってすっかり膨れた腹を摩る。
昼食を満足に食べたのは一体いつぶりだろうか。少なくとも就職してからこんなに満足に食べたことは無い気がする。
と、私の横で満足そうな溜息を吐いた狐塚さんがこちらを見て。
「どう、美味しかったでしょ?」
「うん、本当に美味しかった」
その言葉に嬉しそうな笑みを見せた彼女はコップに残っていた水を飲み干して。
「私の自己紹介まだだったよね。会社で教えたと思うけど、私の名前は狐塚七海。名前にも狐が入っているから分かると思うけど、先祖は妖狐だったみたい」
「物に化ける能力があったり?」
「それが無いんだよね。木の葉を頭に乗せてみたりしたんだけど何も出来なかった」
木の葉を頭に乗せている狐塚さんを想像すると絶対に可愛いであろうことが予想出来る。
それはさて置き、昔話のように変身が出来ないとなると、狐の雰囲気があるだけなのだろうか。それとも、分かり難いだけで何か別の力があるのだろうか。
解けることのない謎が脳内に浮かび上がっていると、サービスで出されたお茶を一口飲んだ猫田さんが「ちょっといいかい」と私に声を掛けて。
「深川さんも自己紹介しちゃって。俺たちが一番知りたいのは君のことだから」
「分かりました」
その言葉で居住まいを正した私は先輩たちの方を向く。
「私は深川桂里奈です。大村で働いていましたが諸々の事情で解雇されて、鬼塚社長に勧誘して頂き、あやかしデジタルに入社しました。改めてよろしくお願いします」
言い終えると同時に頭を下げると全員が「よろしく」と声を掛け、小さいが拍手もされた。
その温かさにここなら上手くやっていけるかもしれないという思いが脳裏を過ると同時、木綿谷先輩が興味ある様子で。
「あやかしはまだ分かって無いんだよね? 自分の好き嫌いとか身体的特徴とかであやかしと関係ありそうだなってことは何か無いの?」
「今のところ分かっているのは物理的にも精神的にもかなりタフなことくらいです。これと言って得意なことはありませんし……」
運動も勉強も頑張ればそれなりの成績を出せたがその程度で、これと言って得意な物は特に無い。
すると猫田さんが何か思い出した様子で小さく手を上げて。
「今日初めて会った時、何でか知らないけど深川さんを見た時すげえ恐かったんだよ。何て言うか、食われそうって感じ?」
「食べませんよ?」
「分かっとるわ」
笑いながらツッコミを入れた猫田さんによって小さな笑いが起きる中、私もその時のことを思い出した。
初対面でいきなり警戒されたり、目を向けたら体を震わせたりと、今考えてみれば天敵に怯える猫のようだ。猫の天敵が関係していたりするのだろうか。
と、矢壁先輩が水を飲み干して。
「もしかしたらだけどさ、深川さんのあやかしって俺たちが考えてるよりもずっと強力なものかもな。鬼塚社長、何か言ってなかった?」
「そう言えば私のタフさを知ったら、鬼の仲間かそれよりもっと強力な存在かもしれないって話してました」
勧誘に来た時、私には強力なあやかしの気配を感じると話していた。お世辞だったのかもしれないが、鬼に並ぶような妖怪の可能性もあるかもしれない。
「まあ、深川さんのあやかしの正体はまだ分からなさそうだし、そろそろ会社戻ろうか」
猫田さんの言葉に私は頷き、立ち上がると他の先輩たちもスマホや財布を手にしてぞろぞろと立ち上がる。
そうして会計を済ませた私たちは残りの仕事をするべく、雑談をしながら会社へと戻った。
昼食を満足に食べたのは一体いつぶりだろうか。少なくとも就職してからこんなに満足に食べたことは無い気がする。
と、私の横で満足そうな溜息を吐いた狐塚さんがこちらを見て。
「どう、美味しかったでしょ?」
「うん、本当に美味しかった」
その言葉に嬉しそうな笑みを見せた彼女はコップに残っていた水を飲み干して。
「私の自己紹介まだだったよね。会社で教えたと思うけど、私の名前は狐塚七海。名前にも狐が入っているから分かると思うけど、先祖は妖狐だったみたい」
「物に化ける能力があったり?」
「それが無いんだよね。木の葉を頭に乗せてみたりしたんだけど何も出来なかった」
木の葉を頭に乗せている狐塚さんを想像すると絶対に可愛いであろうことが予想出来る。
それはさて置き、昔話のように変身が出来ないとなると、狐の雰囲気があるだけなのだろうか。それとも、分かり難いだけで何か別の力があるのだろうか。
解けることのない謎が脳内に浮かび上がっていると、サービスで出されたお茶を一口飲んだ猫田さんが「ちょっといいかい」と私に声を掛けて。
「深川さんも自己紹介しちゃって。俺たちが一番知りたいのは君のことだから」
「分かりました」
その言葉で居住まいを正した私は先輩たちの方を向く。
「私は深川桂里奈です。大村で働いていましたが諸々の事情で解雇されて、鬼塚社長に勧誘して頂き、あやかしデジタルに入社しました。改めてよろしくお願いします」
言い終えると同時に頭を下げると全員が「よろしく」と声を掛け、小さいが拍手もされた。
その温かさにここなら上手くやっていけるかもしれないという思いが脳裏を過ると同時、木綿谷先輩が興味ある様子で。
「あやかしはまだ分かって無いんだよね? 自分の好き嫌いとか身体的特徴とかであやかしと関係ありそうだなってことは何か無いの?」
「今のところ分かっているのは物理的にも精神的にもかなりタフなことくらいです。これと言って得意なことはありませんし……」
運動も勉強も頑張ればそれなりの成績を出せたがその程度で、これと言って得意な物は特に無い。
すると猫田さんが何か思い出した様子で小さく手を上げて。
「今日初めて会った時、何でか知らないけど深川さんを見た時すげえ恐かったんだよ。何て言うか、食われそうって感じ?」
「食べませんよ?」
「分かっとるわ」
笑いながらツッコミを入れた猫田さんによって小さな笑いが起きる中、私もその時のことを思い出した。
初対面でいきなり警戒されたり、目を向けたら体を震わせたりと、今考えてみれば天敵に怯える猫のようだ。猫の天敵が関係していたりするのだろうか。
と、矢壁先輩が水を飲み干して。
「もしかしたらだけどさ、深川さんのあやかしって俺たちが考えてるよりもずっと強力なものかもな。鬼塚社長、何か言ってなかった?」
「そう言えば私のタフさを知ったら、鬼の仲間かそれよりもっと強力な存在かもしれないって話してました」
勧誘に来た時、私には強力なあやかしの気配を感じると話していた。お世辞だったのかもしれないが、鬼に並ぶような妖怪の可能性もあるかもしれない。
「まあ、深川さんのあやかしの正体はまだ分からなさそうだし、そろそろ会社戻ろうか」
猫田さんの言葉に私は頷き、立ち上がると他の先輩たちもスマホや財布を手にしてぞろぞろと立ち上がる。
そうして会計を済ませた私たちは残りの仕事をするべく、雑談をしながら会社へと戻った。
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