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6話 ホワイトな職場
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「今日からここで働くことになった深川桂里奈さんデス。分からない事が多いと思うので、皆さんは優しく教えてあげるようにお願いしマス」
「よろしくお願いします」
語尾だけ少し片言になる話し方をする傘部長に続いてそう言いながら頭を下げると、明るい雰囲気で歓迎する声が上がる。
ちなみに傘部長はその名の通りからかさ小僧の血を受け継いでいるらしく、それが原因なのか開いた傘のような変わった髪型をしている。
と、傘部長は一番手前のデスクに腰掛ける若い男を手で差して。
「しばらくは彼が教育係りとして深川さんに色々教えてくれマス。もし彼が居ない時は他の方に聞いてクダサイ」
「分かりました」
私はその指示に従うようにして彼の元へ向かう。
すると彼は少し警戒したような表情をしながら横のデスクの椅子を後ろに引いて。
「よ、よろしく。君の席ここね」
「は、はい」
私は何か失礼な事をしてしまったのかと疑問に思いながら足元に鞄を置いて席に着き、じいっとこちらを見る彼の方を向くと、彼はビクッと体を震わせた。
「失礼、俺は猫田蒼馬。君と同じく大村で働いてたことがあるんだ」
「そうだったんですか。もしかして鬼塚社長から勧誘を受けたんですか?」
「いや、こっちの方が職場環境が遥かに良いって友人を通して知っちゃってね。一年くらいで辞めてこっちに再就職したんだ」
どこか猫っぽい雰囲気があったため、てっきり私のように勧誘を受けたのかと思ったのだが、そんな事は無かったらしい。
「それじゃあ、会話はこのくらいにして仕事に入ろうか。でも簡単なものだから安心して欲しいかな」
そう言いながら渡して来たのは、本当に簡単な仕事だった。
「本当に簡単ですね。これなら大丈夫そうです」
最初はこんなものかと考えながら作業を始めると、横で猫田さんがチラチラとこちらを見ている事に気付いた。
その様子はまるで私を怖がっているかのように見え、何か失礼なことをしてしまったのかという不安に襲われる。
私に流れているというあやかしの血か、それとも猫田さんのあやかしの血のどちらかに問題があるのだろうが、初対面でこれはちょっと傷付くものだ。
幸先の悪さに不安を覚えながら、私はその簡単な仕事をテキパキと進める。
今はとにかく他の先輩たちに追いつくことを目標に頑張るとしよう。
「よろしくお願いします」
語尾だけ少し片言になる話し方をする傘部長に続いてそう言いながら頭を下げると、明るい雰囲気で歓迎する声が上がる。
ちなみに傘部長はその名の通りからかさ小僧の血を受け継いでいるらしく、それが原因なのか開いた傘のような変わった髪型をしている。
と、傘部長は一番手前のデスクに腰掛ける若い男を手で差して。
「しばらくは彼が教育係りとして深川さんに色々教えてくれマス。もし彼が居ない時は他の方に聞いてクダサイ」
「分かりました」
私はその指示に従うようにして彼の元へ向かう。
すると彼は少し警戒したような表情をしながら横のデスクの椅子を後ろに引いて。
「よ、よろしく。君の席ここね」
「は、はい」
私は何か失礼な事をしてしまったのかと疑問に思いながら足元に鞄を置いて席に着き、じいっとこちらを見る彼の方を向くと、彼はビクッと体を震わせた。
「失礼、俺は猫田蒼馬。君と同じく大村で働いてたことがあるんだ」
「そうだったんですか。もしかして鬼塚社長から勧誘を受けたんですか?」
「いや、こっちの方が職場環境が遥かに良いって友人を通して知っちゃってね。一年くらいで辞めてこっちに再就職したんだ」
どこか猫っぽい雰囲気があったため、てっきり私のように勧誘を受けたのかと思ったのだが、そんな事は無かったらしい。
「それじゃあ、会話はこのくらいにして仕事に入ろうか。でも簡単なものだから安心して欲しいかな」
そう言いながら渡して来たのは、本当に簡単な仕事だった。
「本当に簡単ですね。これなら大丈夫そうです」
最初はこんなものかと考えながら作業を始めると、横で猫田さんがチラチラとこちらを見ている事に気付いた。
その様子はまるで私を怖がっているかのように見え、何か失礼なことをしてしまったのかという不安に襲われる。
私に流れているというあやかしの血か、それとも猫田さんのあやかしの血のどちらかに問題があるのだろうが、初対面でこれはちょっと傷付くものだ。
幸先の悪さに不安を覚えながら、私はその簡単な仕事をテキパキと進める。
今はとにかく他の先輩たちに追いつくことを目標に頑張るとしよう。
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