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2話 唐突な解雇

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 ベッド横に置かれている椅子を引っ張り出し、ドスッと音を立てて座った鳩山はイラついているのを隠しもせずに溜息を一つ吐いた。
 それによって煙草の臭いがふんわりと漂い、気持ちの悪さから思わず息を止める。

「そんで? いつ戻れんだ」

「まだ聞かされてないので何とも……」

 さっき聞いておけば良かった。
 すると鳩山は私を鋭い目で睨み付けて。

「三日以内に退院しろ。出来ないならここで仕事しろ」

「ゆっくり休むよう言われたんですけど……」

 過労で倒れたという話は聞いていないのだろうか?
 仮に知らないとしても入院してる人間に働けなんて言える精神は狂っているとしか言いようがない。
 内心ドン引きしていると鳩山は私の台詞を無視して、鞄から分厚いファイルを取り出して。

「ほらよ、やれ」

「えぇ……」

 それを恐る恐る受け取ると、それは前に鳩山が私へ押し付けて来た仕事だった。
 不快感から私は思わず鳩山を睨み付けて。

「これ、部長が鳩山さんにやるよう言ってたものじゃないですか。サボらないで下さいよ」

「サボりだぁ? 調子乗ってんじゃねえぞ」

 きっといつもなら、話が全く通じないこの男と話をしたくないからと、私はここで引き下がっただろう。
 しかし、今はもっと言い返さないと気が済まず、私は更に睨み付けて。

「サボってることには変わらないじゃないですか。今までだってあなたが押し付けて来たせいで一週間家に帰れないことだってあったんですけど? 少しは自分でやって下さい」

 そう言って私が突き返した書類を奪い取るようにして受け取った彼は、ギロリと睨み付けて、

「もういい、お前はクビだ。二度と来るな!」

 そう怒鳴ると乱暴にカーテンを閉めて去って行った。
 病院内では静かにして欲しいのだが、彼にはそんな良心も無いらしい。

 思わず溜息を吐いた私はスマホを取り出し、銀行アプリで貯金を確認する。
 遊ぶ時間も無かっただけあってそこには全く減っていないそこそこ多額の貯金が表示され、これなら再就職先はゆっくり決めて良さそうだと心に余裕が出来る。
 部長と口論してまで残業代と働いた分をしっかり払わせただけのことはある。

 それにしても、鳩山には良いように使われるだけ使われて捨てられたのが悔しい。
 ……今度は給料が安くてもホワイトな職場を探そう。

 私はそう心に決めて再び蛇の育成ゲームを始め、働いている間は一切無かった長期休暇に胸躍らせた。
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