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とんでもない事を言い出したフロイデンを見て、私は慌てて後ろの騎士たちを振り返る。
しかし、命じられた騎士たちは兜越しにも困惑したように顔を見合わせていて、その様子を見ていると命令に従うつもりは無い様に見える。
するとフロイデンは焦りを見せながら指を差して。
「おい! 従わないならお前らの家族を全員始末すると話したはずだ! 早く動け!」
そのとんでもない発言に私は驚きから思わず変な声が出る。
まさか自分が婚約していた人間が、人の家族を人質に取って言うことを聞かせるような人間だったなんて、恐ろし過ぎて鳥肌が立つ。
それはこの部屋にいる人たちも同じ様子を見せているが、当の本人は気付く様子無く騎士たちに命令を聞かせようと、女ならレイプしてから殺すだの、子どもは火あぶりにして殺すだのと、とんでもない発言を繰り返す。
すると言われっぱなしだった騎士たちはぞろぞろと動き出し――私たちをスルーしてフロイデンをあっさりとその場に組み伏せた
ますます大声で下劣な言葉を放つ彼だったが、横で呆れたように溜息を吐いたレオナルト殿下が立ち上がり、近付いたことで少し静かになる。
「兄上の専属執事たちに色々聞き込みをしたと、そして話してくれたと言いましたよね。なぜ、噂を流した話だけしか聞いていないと思ったんですか?」
「てめえ、ふざけんなよ」
「ふざけてるのは兄上でしょう。いざとなったら、人質を取った騎士たちを使って王の首を取るなんて馬鹿げた計画、阻止するに決まってるじゃないですか」
再び呆れたような溜息を吐いたレオナルト殿下は騎士たちに牢へ連れて行くように命令し、再び私の横へ座り直した。
わーぎゃーと醜く叫び続けるフロイデンだったが騎士たちの力に敵うはずも無く連行されていき、やがてそのうるさい声は全く聞こえなくなった。
気分を落ち着けるようにさっき淹れ直された紅茶を一口飲んだ陛下は、疲れたような大きな溜息を吐くと。
「まさかこんな事を企んでいたとはな。レオナルト、お前には褒美を用意しておこう」
「光栄です、父上。これらの証拠はいかがなさいますか?」
「それは俺が預かっておこう。国家転覆を計った以上、あいつが死ぬことには変わらんがな」
サラッと恐ろしい事を言ってのけた陛下はもう一度紅茶を口にすると、私と父に目を向ける。
「恐い思いさせて悪かったな。詫びになるかは知らんが、今日は城に泊って行け」
「その言葉に甘えよう。もっとも、私は何もしてないがな」
そう言って笑った父に彼も笑って見せ、部屋の中にはほんわかとした雰囲気が流れ始める。
少し疑問が湧いた私はレオナルト殿下の方を向き、ガヤガヤと騒がしくなった隙にそれを尋ねる。
「あの、家族を人質に取られていたにしては、あの騎士たちは困惑してるような雰囲気だったのですが、どんな手を打ったんですか?」
そう、殺せと命令が出た時、騎士たちは迷ったりするのでは無く、何の話をしているのか分からないと言った様子で、とても脅迫を受けているようには見えなかった。
レオナルト殿下は「そう言えば説明していなかったね」と呟いて。
「兄が脅した騎士たちと僕の私兵を交換したんだ。脅されてるだけなだけあって、皆大喜びで協力してくれたよ」
「なるほど……」
「本当はこうなる前に僕が全て暴露しようと思ってたんだけど、ちょっと遅かったね」
そう言って爽やかな笑みを浮かべた彼は書類を陛下へと渡し、用事があるからと言って騎士たちを連れて部屋を後にした。
――こうして、フロイデンによって引き起こされた騒ぎは、あっさりと幕を閉じた。
しかし、命じられた騎士たちは兜越しにも困惑したように顔を見合わせていて、その様子を見ていると命令に従うつもりは無い様に見える。
するとフロイデンは焦りを見せながら指を差して。
「おい! 従わないならお前らの家族を全員始末すると話したはずだ! 早く動け!」
そのとんでもない発言に私は驚きから思わず変な声が出る。
まさか自分が婚約していた人間が、人の家族を人質に取って言うことを聞かせるような人間だったなんて、恐ろし過ぎて鳥肌が立つ。
それはこの部屋にいる人たちも同じ様子を見せているが、当の本人は気付く様子無く騎士たちに命令を聞かせようと、女ならレイプしてから殺すだの、子どもは火あぶりにして殺すだのと、とんでもない発言を繰り返す。
すると言われっぱなしだった騎士たちはぞろぞろと動き出し――私たちをスルーしてフロイデンをあっさりとその場に組み伏せた
ますます大声で下劣な言葉を放つ彼だったが、横で呆れたように溜息を吐いたレオナルト殿下が立ち上がり、近付いたことで少し静かになる。
「兄上の専属執事たちに色々聞き込みをしたと、そして話してくれたと言いましたよね。なぜ、噂を流した話だけしか聞いていないと思ったんですか?」
「てめえ、ふざけんなよ」
「ふざけてるのは兄上でしょう。いざとなったら、人質を取った騎士たちを使って王の首を取るなんて馬鹿げた計画、阻止するに決まってるじゃないですか」
再び呆れたような溜息を吐いたレオナルト殿下は騎士たちに牢へ連れて行くように命令し、再び私の横へ座り直した。
わーぎゃーと醜く叫び続けるフロイデンだったが騎士たちの力に敵うはずも無く連行されていき、やがてそのうるさい声は全く聞こえなくなった。
気分を落ち着けるようにさっき淹れ直された紅茶を一口飲んだ陛下は、疲れたような大きな溜息を吐くと。
「まさかこんな事を企んでいたとはな。レオナルト、お前には褒美を用意しておこう」
「光栄です、父上。これらの証拠はいかがなさいますか?」
「それは俺が預かっておこう。国家転覆を計った以上、あいつが死ぬことには変わらんがな」
サラッと恐ろしい事を言ってのけた陛下はもう一度紅茶を口にすると、私と父に目を向ける。
「恐い思いさせて悪かったな。詫びになるかは知らんが、今日は城に泊って行け」
「その言葉に甘えよう。もっとも、私は何もしてないがな」
そう言って笑った父に彼も笑って見せ、部屋の中にはほんわかとした雰囲気が流れ始める。
少し疑問が湧いた私はレオナルト殿下の方を向き、ガヤガヤと騒がしくなった隙にそれを尋ねる。
「あの、家族を人質に取られていたにしては、あの騎士たちは困惑してるような雰囲気だったのですが、どんな手を打ったんですか?」
そう、殺せと命令が出た時、騎士たちは迷ったりするのでは無く、何の話をしているのか分からないと言った様子で、とても脅迫を受けているようには見えなかった。
レオナルト殿下は「そう言えば説明していなかったね」と呟いて。
「兄が脅した騎士たちと僕の私兵を交換したんだ。脅されてるだけなだけあって、皆大喜びで協力してくれたよ」
「なるほど……」
「本当はこうなる前に僕が全て暴露しようと思ってたんだけど、ちょっと遅かったね」
そう言って爽やかな笑みを浮かべた彼は書類を陛下へと渡し、用事があるからと言って騎士たちを連れて部屋を後にした。
――こうして、フロイデンによって引き起こされた騒ぎは、あっさりと幕を閉じた。
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