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フロイデンから脅迫を受けたあの日から四日が経った。
結局、屋敷内の人間には内通者と思わしき人間は見つからなかった。
しかし、一昨日の段階でフロイデンは私が既に父へ密告していることに気付いていない様子を見せているため、あれはただのブラフだった可能性が高そうだ。
「心の準備は出来てるか?」
「はい、出来てます」
対面の席でリラックスした様子で背もたれに身体を預ける父に答えながら、馬車の窓から見える王城へ目を向ける。
なぜ城へ来ているのかと言えば、国王陛下とフロイデンの二人とこれから話し合いを行うためだ。
脅迫された話は勿論のこと、髪を引っ張ったり胸倉を掴んだりされたことや、裏で陰口ばかり叩いていたことなど、私がされて来た事全てを陛下に相談するのである。
陛下が一体どんな回答をされるのか分からない不安はあるのだが、父が不安そうな表情を見せない辺り、きっと大丈夫なのだろう。
と、一人でそんな事を考えている間に馬車は停まり、ルドルフが馬車の扉を開けた。
先に降りた父に続いて私も馬車を降りると城に仕える執事服に身を包んだ初老の男と騎士たちがこちらへゆっくりとした足取りで近付いて来た。
「ライムント様とイルメラ様ですね。国王陛下がお待ちしているお部屋までご案内いたします」
「ああ、頼んだ」
父がそう答えると執事は優美な一礼をして歩き出し、私たちはその後に続いて歩く。
騎士たちは私たちの護衛のため送られて来た人たちだったらしく、私たちを囲むようにして周囲を歩き始め、少しだけ安心感を覚える。
可能性は低いとは言え、証言される前に私たちを殺そうとするのではないかという不安があったが、これならその心配は要らないだろう。
すると父は私を振り返り、安心させるかのように背を撫でて。
「あの男と顔を合わせるのは辛いだろうが、今日だけの我慢だ。何なら、今までの不満全てをぶちまけてやれ」
「は、はい」
国王陛下の前でそんなことが出来るとは思えないが、やられて来た事は全て話してしまおう。
きっとフロイデンにはかなり重い罰が下る事になるのだろうが、私を含めたたくさんの人たちに酷い事をして来た罪を償ってもらおう。
私は段々と高まりつつある緊張を和らげるべく深呼吸をしていると、執事は一つの部屋の前で立ち止まった。
「ご準備の方はよろしいですか?」
「ああ、大丈夫だ」
父が返事をすると執事は一つ頷くと執事はコンコンと扉をノックして、中からの返事が聞こえたタイミングで扉が開かれた。
先に入った父の後に続いて中へ入ると、ソファに腰掛ける陛下と、その横で顔を真っ青に染めるフロイデンの姿があった。
すると陛下は整えられた白い髭を撫でながら、ニヤリと笑みを浮かべて。
「よく来たなあ、ライムント。一杯やるか?」
「この一件が片付いてからなら喜んで付き合おう」
まるで旧友のようなやり取りを始める二人を見て、なぜ父があそこまで緊張していないのかを察した。
結局、屋敷内の人間には内通者と思わしき人間は見つからなかった。
しかし、一昨日の段階でフロイデンは私が既に父へ密告していることに気付いていない様子を見せているため、あれはただのブラフだった可能性が高そうだ。
「心の準備は出来てるか?」
「はい、出来てます」
対面の席でリラックスした様子で背もたれに身体を預ける父に答えながら、馬車の窓から見える王城へ目を向ける。
なぜ城へ来ているのかと言えば、国王陛下とフロイデンの二人とこれから話し合いを行うためだ。
脅迫された話は勿論のこと、髪を引っ張ったり胸倉を掴んだりされたことや、裏で陰口ばかり叩いていたことなど、私がされて来た事全てを陛下に相談するのである。
陛下が一体どんな回答をされるのか分からない不安はあるのだが、父が不安そうな表情を見せない辺り、きっと大丈夫なのだろう。
と、一人でそんな事を考えている間に馬車は停まり、ルドルフが馬車の扉を開けた。
先に降りた父に続いて私も馬車を降りると城に仕える執事服に身を包んだ初老の男と騎士たちがこちらへゆっくりとした足取りで近付いて来た。
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「ああ、頼んだ」
父がそう答えると執事は優美な一礼をして歩き出し、私たちはその後に続いて歩く。
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可能性は低いとは言え、証言される前に私たちを殺そうとするのではないかという不安があったが、これならその心配は要らないだろう。
すると父は私を振り返り、安心させるかのように背を撫でて。
「あの男と顔を合わせるのは辛いだろうが、今日だけの我慢だ。何なら、今までの不満全てをぶちまけてやれ」
「は、はい」
国王陛下の前でそんなことが出来るとは思えないが、やられて来た事は全て話してしまおう。
きっとフロイデンにはかなり重い罰が下る事になるのだろうが、私を含めたたくさんの人たちに酷い事をして来た罪を償ってもらおう。
私は段々と高まりつつある緊張を和らげるべく深呼吸をしていると、執事は一つの部屋の前で立ち止まった。
「ご準備の方はよろしいですか?」
「ああ、大丈夫だ」
父が返事をすると執事は一つ頷くと執事はコンコンと扉をノックして、中からの返事が聞こえたタイミングで扉が開かれた。
先に入った父の後に続いて中へ入ると、ソファに腰掛ける陛下と、その横で顔を真っ青に染めるフロイデンの姿があった。
すると陛下は整えられた白い髭を撫でながら、ニヤリと笑みを浮かべて。
「よく来たなあ、ライムント。一杯やるか?」
「この一件が片付いてからなら喜んで付き合おう」
まるで旧友のようなやり取りを始める二人を見て、なぜ父があそこまで緊張していないのかを察した。
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