【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓

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「それじゃあ、また明日会おう。さっき言った通り、君が受けた脅しについてはこっちでも調べておくよ」

「よろしくお願いします」

 私が頭を下げるとレオナルト殿下は「任せて」とだけ言ってほとんど人が残っていない教室を去って行った。
 自分の中で渦巻いていたモヤモヤはほとんど消えてなくなり、今は胸がとてもすっとしている。もし彼が話しかけてくれなかったら、今も一人で悩み続けていたかもしれない。
 その気分の良さから少しゆっくりとした動作で教科書を仕舞っていると、廊下から視線を感じて目を向けると、そこにはクラーラとエルケの姿があり、二人ともじいっとこちらを見つめていた。
 教室に誰も残っていない事を確認した私は二人にこちらへ来るよう手招きしてみると、何か感じ取ったような表情を見せてこちらへと駆けて来る。

「何か良いことあった?」

「うん、何があったのか話せるようになった」

 私がそう言うと二人は少し驚いたような声を上げ、近くの席に腰掛けて聞く姿勢を取る。
 
「じゃあ、あの人に連れて行かれた時の話なんだけどね……」

 私は出来るだけ詳しく、連れて行かれた後にフロイデンから話された内容と、レオナルト殿下から教えられたことを話した。
 静かに話を聞いていた二人は全て聞き終えると、最初にクラーラが怒りを露にして口を開いた。

「愛してると言いながら脅すって、狂ってるじゃないですか。しかも捏造かもしれないって……」

 怒りと同時に呆れも湧いたらしく、言葉を失った様子で頭を抱える。
 エルケはそんな彼女の落ち着かせるように背を優しい手付きで摩りながら、こちらに強い眼差しを向けて。

「何か手伝うことは私たちには出来ないけど、相談に乗るくらいなら出来る。だから、もっと私たちを頼ってね」

「ありがとう」

 思わず礼を口にした私に、二人は真剣な眼差しを見せる。
 何とも言えない心強さに背を押されるようなものを感じながら私は立ち上がり、二人と共に空腹を満たすべく教室を出て、食堂の方へと向かった。
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