【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓

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「また食堂で会いましょうね」

「う、うん。またね」

 心配する雰囲気をまだ見せるクラーラとその横に並ぶエルケに申し訳無さを覚えながら背を向け、次の教室へ向かって歩き出す。
 いつも悩みや困ったことがあればすぐに二人へ相談していた事もあって、話したくても話せないこの状況はとてもムズムズする。
 思わず溜息を吐きながら、考え事をしている間に到着していた教室へ入ると、いつも私が座る席の隣に見覚えのある茶髪の美青年が座っていることに気が付いた。
 一瞬、他の席に座ろうかと考えて周囲を見回してみるが良さげな席は空いて無く、私は諦めていつもの席に近付く。
 すると青年はこちらに気付いた様子で目を向けると、ニコリと優し気な笑みを浮かべて。

「やあ、いつも兄が世話になっているね」

「レオナルト殿下、ですよね?」

「そうだよ」

 肯定しながら私が座ろうとしていた席を引いてくれた彼に礼を言って一先ず席に着く。
 第二王子であるレオナルト殿下は幼い頃に話したり、遊んだりした記憶がある。しかし、フロイデンとの婚約話が出て来たあたりから関わることは無くなり、最近に至っては同じ教室にいても話す事はほとんど無かった。
 あまりの懐かしさと、今まで全く関わろうとして来なかった彼に何を話せば良いのか分からないでいると、彼はゆったりとした雰囲気で話し始める。

「兄との婚約破棄、上手く行かないかもしれないって話を聞いてね。少し手伝えたらと思って来たんだ」

「そのお気持ちは嬉しいですが……」

「もう脅されたのか」

「……あの人はいつも人を脅してるんですか?」

 フロイデンの事はよく知っているのであろうレオナルト殿下におずおずと尋ねると、コクリと頷いて。

「兄は何かを手に入れるためなら犯罪だって当たり前のようにやる人間だ。恐喝や詐欺なんて常套手段さ」

「そうだったんですか……」

 私が婚約した時の優しくて正義感に溢れていた彼は一体どこへ行ってしまったのだろうか。それとも、あれすらも嘘で、本当の彼は元から醜かったのだろうか。
 婚約者でありながら極悪人であると見抜けなかった自分に気恥ずかしさすら覚えていると、レオナルト殿下は昔のように私の背を摩って。

「彼との婚約破棄、僕が手伝ってあげるよ。君が苦悩している姿は見たくないからね」

「それは嬉しいですが……何で私のためにそんな危険な事をしてくれるんですか?」

「君が好きだからさ」

 即答した彼に私は言葉が出て来なかった。
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