【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓

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「それじゃあ、また明日」

「またねー」

「また明日お会いしましょう」

 学園前の通りに停まった馬車の前で手を振りながら別れを告げると、二人も手を振り返しながらそう言って自分の馬車の方へ歩いて行った。
 そんな後ろ姿を少しの間だけ眺めた私は馬車の扉を開けて待っていてくれたルドルフを振り返って。

「じゃあ、今日もお願いね」

「はい、お任せを……質問をしてもよろしいですか?」

「どうかした?」

 何かに気付いた様子でそんな事を言い出した彼に思わず首を傾げる。
 するとルドルフは私の首元を手で差し示して。

「襟の周りが乱れていますが、何かございましたか?」

「……よく気付いたね」

 そこはさっきフロイデンに掴まれたカ所で、応急処置程度に直してはいたがバレてしまったらしい。
 思っていた以上の観察眼を発揮されて驚いていると、彼は慣れた手つきで私の襟に手を伸ばして。

「その様子ですと、殿下に何かされたのですね?」

「私の心読んでるよね」

 まだ何も言っていないと言うのに易々と見抜くルドルフに思わずそんな言葉が出る。
 幼いころから私の世話をしてくれていたが、まさか私の表情だけ見て全て言い当てるなんて、両親にも出来ないだろう。
 それとも、私は考えていることが全て顔に出ているのだろうか。
 と、私の襟周りを正してくれたルドルフはよしと呟いて。

「さて、帰りましょうか。旦那様には私がある程度話を通しておきますので、詳しい事はお嬢様からお話しください」

 頼もうとしていたことまで読み取った彼の優秀さに言葉も出なくなりながら頷き、馬車へと乗り込む。
 さて、彼の優秀さについては後で考えるとして、帰ったら早いところ書類にサインをして、父に胸倉を掴まれたことを話してから提出しよう。
 きっと父ほどの権力を持つ人が提出したら、きっとすんなり通ってくれるだろう。

 私はそんな期待を胸に、窓の外の景色に目を向けた。
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