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いつもの席に三人で固まって座ると、エルケはふいーっと息を吐きながら溶けそうな勢いで机に突っ伏した。
学園の生徒のほとんどが登校する時間な事もあってあの場を見ていた生徒はかなり多く、ここまで来る間にいくつもの視線に晒され、精神的な疲労が溜まってしまったのだろう。
クラーラもそれは同じな様子で、リュックを椅子に掛けると少し疲れた様子で腰掛ける。
「ごめんね、私のせいで巻き込んじゃって」
思わず二人に謝罪の言葉を口にすると、二人は私の方を向いて笑って見せる。
「気にしないで下さい。私たちだって昔から色々助けてもらってますから」
「そうそう、昨日デザート譲ってもらったし、このくらいのこと気にしなくて良いんだよ」
本心からそう思っていそうなクラーラと冗談めかして話すエルケの二人を見て、やはり良い友達を持ったものだと再び実感する。
昔から色々助けてもらっているなんて言っているが、私が二人にした事なんて今回の事に比べれば大したことでは無いし、何なら私の方が迷惑を掛けている。
近い内にでも、二人には何かお礼をしよう。
と、教科書を小脇に抱えた講師がのんびりとした動作で教室に入って来た事に気付き、私はリュックから教科書と筆記用具を取り出す。
二人も講師がやって来た事に気付いた様子で各々リュックから必要な物を取り出し、机に並べ始める。
チラとエルケの方を見てみると、今日は珍しく今日の授業の範囲であるページを開いていて、思わず感心しそうになるが――
「え、エルケ……? それ、あなたが描いたの?」
「うん、昨日暇だったから落書きしてたの。よく出来てるでしょ?」
そう言って少し自慢気に見せて来たのは、筋骨隆々の体にされてしまった大賢者の肖像画だった。
本来であればもっと弱弱しい雰囲気がある老人なのだが、その面影は一切残っておらず、山賊にいても何ら違和感のない仕上がりとなっている。
「この落書きへの熱意を勉強には向けられ無いの?」
「ムリ」
即答して見せたエルケに呆れと共に笑いが込み上げ、気付けば普段通り二人と笑い合っていた。
そのおかげかさっきまで気になって仕方なかった周囲の視線もどうでも良くなり、普段通り授業を受けることが出来た。
学園の生徒のほとんどが登校する時間な事もあってあの場を見ていた生徒はかなり多く、ここまで来る間にいくつもの視線に晒され、精神的な疲労が溜まってしまったのだろう。
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本心からそう思っていそうなクラーラと冗談めかして話すエルケの二人を見て、やはり良い友達を持ったものだと再び実感する。
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近い内にでも、二人には何かお礼をしよう。
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