【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓

文字の大きさ
上 下
3 / 27

3

しおりを挟む
 気付けば授業終了のチャイムが鳴っていた。
 いつもなら板書や講師の話していた内容で大半が埋まるノートも殆ど真白なままで、授業内容も全く記憶に無い。
 ……昼食の時間だし、いつもの待ち合わせ場所に向かおう。

 再びぼーっとしそうになる自分にそう言い聞かせ、席から立ち上がって教室を出る。
 完全にあの人に対しての気持ちは萎え切っているものなのだと思っていたが、どうやら心の底では違うらしい。
 思わず溜息を吐きながら、いつも待ち合わせ場所として利用している裏庭へ続く人の通りが少ない廊下を歩いていると、後ろから掛けて来る足音が聞こえた。
 何となく誰なのか察しながら振り返ると、案の定小走りで向かって来るエルケとクラーラの姿があった。

「顔色悪いけどどうしたの?」

「え?」

 エルケが何かを感じ取ったかのように、心配するような声色でそんな事を言って、私は思わず変な声を出した。
 するとクラーラも察した様子で私の隣に来て手を握ると。

「何かあったんですか?」

「な、なにも……」

「隠し事下手だねえ」

 エルケは若干揶揄うような口調でそう言って笑うと、私の手を取って裏庭の方へ歩き出し、何とも言えない気恥ずかしさと微かな嬉しさを覚えながらその後に続く。
 顔には出ていないと思っていたが、この様子だとバッチリ顔に出ていたらしい。公爵令嬢なのに隠し事すら出来ないとは恥ずかしいものだ。

 そんな事を考えている間に裏庭に到着すると、エルケは私をベンチに座らせ、二人は私を挟むようにして両側に座る。
 何から話そうか考えているとエルケがニコリと笑みを浮かべて。

「さあさあ、この大親友に話してみなさい。私の天才的頭脳が全てを解決するんだから」

「すっかすかのおつむが何を解決するんですか?」

「なっ……」

 クラーラの毒舌に血を吐きそうな顔をするエルケを見て、私は笑わせられながらも何があったのか全て話す事に決めた。
 今までも殿下の事で相談した時は何だかんだで参考になる答えをくれたのだから、きっと私と彼の関係を良くするような助言をくれるはずだ。
 私は一度深呼吸をして、殿下と男友達が話していた内容を、二人に打ち明けた。
しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ? 

青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。 チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。 しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは…… これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦) それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。

今、婚約破棄宣言した2人に聞きたいことがある!

白雪なこ
恋愛
学園の卒業と成人を祝うパーティ会場に響く、婚約破棄宣言。 婚約破棄された貴族令嬢は現れないが、代わりにパーティの主催者が、婚約破棄を宣言した貴族令息とその恋人という当事者の2名と話をし出した。

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

[完結]婚約破棄したいので愛など今更、結構です

シマ
恋愛
私はリリーナ・アインシュタインは、皇太子の婚約者ですが、皇太子アイザック様は他にもお好きな方がいるようです。 人前でキスするくらいお好きな様ですし、婚約破棄して頂けますか? え?勘違い?私の事を愛してる?そんなの今更、結構です。

他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。    第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。  その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。  追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。  ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。  私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。

穏便に婚約解消する予定がざまぁすることになりました

よーこ
恋愛
ずっと好きだった婚約者が、他の人に恋していることに気付いたから、悲しくて辛いけれども婚約解消をすることを決意し、その提案を婚約者に伝えた。 そうしたら、婚約解消するつもりはないって言うんです。 わたくしとは政略結婚をして、恋する人は愛人にして囲うとか、悪びれることなく言うんです。 ちょっと酷くありません? 当然、ざまぁすることになりますわね!

【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……

小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。 この作品は『小説家になろう』でも公開中です。

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

処理中です...