【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓

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 授業の終わりを告げる鐘が鳴り、講師が教室を出て行くとエルケは眠たげに眼を擦りながら起き上がる。
 相変わらず授業なんて受けるつもりがサラサラ無いその様子に少し呆れていると、クラーラが教科書を仕舞いながら。

「イルメラさん、殿下と上手く行ってないって噂聞きましたけど、それって本当なんですか?」

「まあ、上手く行ってるとは言えないかな」

 さっきもそんな事を言っていたから分かってはいたが、やはり私と殿下が上手く行っていない話はかなり知られてしまっているようだ。
 しかし考えてみれば、廊下ですれ違う時に挨拶をしても無視される所なんて何度も学園の人たちに見られているのだから、そうなるのも当然と言えば当然だろう。
 と、心配するような表情を浮かべたクラーラは。

「話を聞くくらいのことなら出来ますので、私たちを頼って下さいね」

「クラーラは優しいね。それに対してエルケは……」

「あ、あれは照れ隠しで後付け設定ってことにしただけで、私もイルメラのこと心配してるんだよ?」

「めっちゃ早口じゃん」

 私たち二人にジト目を向けられるのは流石に応えたらしく、冷や汗をかきながら早口でそんな事を言う。
 しかし、何だかんだ私のことを思ってくれているのは知っているし、案外この言葉も本当なのかもしれない。
 もしも殿下との関係がこれ以上悪くなるようなら、クラーラが言ったように頼らせて貰おう。
 心の中でそう決めながら時計に目をやると、そろそろ移動しないと次の授業に間に合わない時間になっていて、私は二人と別れて教室を出た。
 
 すると、少し先に男友達と歩くフロイデン殿下の姿が見え、私は再び不安が胸の中に湧き出す。
 話しかけるべきか話し掛けずに目立たないよう歩くべきか悩んでいると、男友達の口から私の名前が出た。
 私の事を話しているのだと察して少し近付き、耳を澄ませてみると。

「――イルメラとなんて上手くいかなくていいんだよ。どうせ王位継承するまでの関係だし、そろそろ要らなくなる」

「フロイデン様は悪ですねえ」

「お前も中々だろ」

 そう言ってゲラゲラと笑う殿下たちを見て、私は思わず足を止めた。
 あまり積極的に関わって来なくなってから、私への愛も好意も冷めてしまったのだろうと察してはいた。
 しかし、いざ本人がそんな事を言っている所を実際に見ると、心に来るものがある。

 こちらに気付く様子無く教室へと入って行く殿下の後ろ姿から目を逸らすように俯き、私はその場を後にした
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