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カラスの届け物
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あるところに少女がいました。少女は木々が生い茂る森の小さな村にすんでいました。
ですがある時、空から「何か」が降ってきて、村は火に包まれました。村は少女を残し焼かれてしまいました。
その時から少女はもう何も見ないように目を閉ざしてしまいました。自分で自分に魔法をかけたのでした。
少女はほんの少しの魔法が使えたので、生活に不便な点はあまりありませんでした。なのでとてもひっそりと暮らし、このままでよいと思っていました。目を閉ざしても見えてしまうものもあるくらいでした。
それから何日、何か月、何年たったか忘れた頃に、来客がありました。「おい、開けてくれよ」
窓を何かが叩く音がしました。少女は聞きました。「どなたでしょう」少女は正直無視するべきだったと思いました。
「ただのカラスだよ、真っ黒だろ」誰かさんは答えました。
「見えないけどなんとなくそうなのね」少女は答えました。
青みがかった色の羽にシュっとしたクチバシをもったカラスが窓を必死に叩きながら言います。
「雨に降られてんだ、雨宿りさせてくれないか」
少女は言いました「いやよ」
「どうして!?」カラスは驚きました。
「私、知らない人は家に入れちゃいけないって言われてたし」
「そ、そうかじゃあ他を探すしかないか」
カラスは飛び立とうとしました。
「どうやら本物のカラスのようね、入ってもい・・・」
と少女が言いかけましたがカラスは飛び去った後でした。
「まあいいか」少女は少し残念そうでした。
しばらくたってまた窓を叩く音がしました。
どうやらまたさっきのカラスのようです。
「タダで雨宿りとは言わねえ、木の実を持って来た」
「いえ、さっきは悪かったわ。入って」
少女は窓を開けました。
本当に木の実が置かれていました。律儀なカラスです。
「私てっきりカラスって悪い奴だと思ってたわ。ゴミを荒らすし」
言いかけてカラスが口をはさみます。
「ああ、そんな奴らと一緒にするな。俺はこういうカラスだ」
「そう」少女は小さく言いました。
同じカラスにも違いはあるようでした。
「ところで、なんたってこんな人がいないところに住んでるんだ?」
カラスは言いました。
「もう巻き込まれたくないからよ」
少女は言いました。
「誰かの手によって私たちの森は焼かれたわ。もうそんな思いしたくない」
「ここにいても同じだとしても?」
「ええ、世界は怖いし醜いし怖いわ」
「そうか」
「じゃあ、礼といっちゃなんだが俺が怖くないと証明してやろう」
カラスは言いました。
「なによそれ。どうするのよ」
少女は言いました。
「俺が外の空気を持ってきてやる。話でも、物でも」
「そうしたら少しは怖くなくなる」
カラスは言いました。
「誰も頼んでないわ」
少女は答えました。
「けれど、勝手にやるんだったらどうぞ」
「よし、分かった。今日からオレたちは友達だ。」
「え?」
翌朝からカラスの届け物が始まりました。
「これ、散歩途中で見つけたんだ。きれいな色してるだろ」
そう言って花を持ってきました。
「そうね。でもそれくらいならどこにでもあるし、わたしにはそれは見えないわ」
少女は答えました。
「なに、見えないのか?」
「自分から見えなくしたのよ」
少女は言いました。カラスは黙って少女を見ていました。
カラスは次の日も来ました。
「これは決死の思いで取って来た獣の毛だ、すごいだろ」
そういって獣の毛を見せつけました。
「その獣は以前図鑑でみたことがあった上に今は見えないわね」
少女は答えました。
「そ、そうか。でも本物は初めてみるだろ?」
「ええ、そうね」
少女は僅かに笑いました。
カラスはその次の日もやってきては、冒険譚やお土産を持ってきました。
少女は少しづつ外の世界を知りました。
季節が一巡りするくらいにずっとそのやりとりは続きました。しかしある日の冬の朝、カラスは来ませんでした。
「もう飽きちゃったのかしら」
少女は少し心配でした。外は凍える寒さです。
「どうしよう」
少女にはどうすることもできません。
冬の日、翌朝もカラスは来ませんでした。
その次の日も次の日も、
カラスはやって来ませんでしたが、代わりにハトがやってきました。
「おい開けてくれよ。外は吹雪なんだよう」
「・・・カラスから聞いていた特徴と同じだからきっとハトなのでしょうね。今開けるわ」
窓を開けるとハトがちょこちょこと入ってきました。
「ひゃー助かる」
「聞きたい事があるんだけど」
「なんだい?あたたまってからでいいなら答えるよ」
「カラスを最近みていないのよ、それで・・・」
少女は言いかけました。
「ああ、あのカラスか。山に登ってったの見たっきり見てないな」
「そう・・・」
少女は小さく言いました。嫌な予感がしました。
「なんたってひきこもってる友達のためにとびきりのアイテムを探しに行くとかどうとか言ってたな」
少女はもっと心配になりました。もしかしたら力尽きているかもしれません。
けれど少女は引きこもってる上に目を閉ざしています。
少女は迷いました。
「吹雪がおさまってきたな。じゃあぼくはこれで」
とハトはどこかへ行こうとしました。
「待って」
少女は引き留めました。初めてのことでした。
「なんだい?」
ハトは答えました。
「私の友達が大変な思いをしているかもしれないの。でも私一人じゃ怖いの」
「案内をしてほしいの」
ハトは僅かに考えると、答えました
「いいよ。カラスのことだね。ぼくに任せて。お礼に案内しよう」
二人は外に出ることになりました。
「うっ寒い」
外はそこら一帯銀色の世界が広がっています。
ですが少女にはまだ見えません。
音と感覚を頼りにハトについて行きます。
「本当に大丈夫なのかな」
ハトは心配そうに見ています。
すこしづつ山に近づいて行きます。寒さも増していきます。
「あの子はここを飛んでいたの?」
「そうだよ」
少女は寒さに耐えながら歩みを進めて行きます。
山の少し進んだところに着きました。
「ここから先はぼくにも厳しいな・・・」
「いいわ、自分で行ってみる」
少女は今度は一人で友達のために歩みはじめました。
登っても登ってもカラスの気配はしません。
「一体どこまで行ってるのよ・・・」
少女は挫けそうです。
途中でまた吹雪がやってきたりしました。獣の声もします。
少女はこの時目を閉じておいて良かったと思いました。余計な物を見ずに済みます。
「今度は私が迎えに行く番だわ」
だんだんと日が暮れてきて明かりを感じなくなってきました。体温も下がります。
「あの子か感じていた寒さはきっとこんなもんじゃないわ」
少女はカラスを思い出し、それでも歩き続けます。
「早くいつも見たいに私の所にきなさいよ・・・」
少女の歩みが、小さくなっていきます。
「あんたのせいでこうなっちゃったじゃないの」
少女は泣きながら歩きます。
怖さの中歩き続けて歩き続けて、
そして山の頂上が見えたかと思った時、カラスの声がしました。
「うわ!?何やってんだこんなとこで!?」
少女は友達を見つけることができました。
「あんまり帰りがおそいから私の方からきたのよ」
「それにしてもここまでくるか・・・」
「ま、いいか」
「それで、なにを見せたがって探してたのよ」
「それはいずれ分かる」
カラスはなにやら変な機械を首にぶら下げていました。
「カメラって言うんだそうだ。あ、盗んだりしてないぞ。もらいものだ」
そうカラスが言っているうちに夜が明け、真っ白な光が目に入り込んできました。
少女はいつの間にか目を開けてしまっていました。
そしてそこに映っていたのは、一面雪で包まれた世界の姿でした。
「ほら、すごいだろ?」
カラスはいいました。
「これでも怖いとか醜いとか言うのか?」
「ええ、世界は醜いし怖い」
「けれど」
少女は続けました。
「今あなたと見てる景色は、とても、きれいだわ」
ですがある時、空から「何か」が降ってきて、村は火に包まれました。村は少女を残し焼かれてしまいました。
その時から少女はもう何も見ないように目を閉ざしてしまいました。自分で自分に魔法をかけたのでした。
少女はほんの少しの魔法が使えたので、生活に不便な点はあまりありませんでした。なのでとてもひっそりと暮らし、このままでよいと思っていました。目を閉ざしても見えてしまうものもあるくらいでした。
それから何日、何か月、何年たったか忘れた頃に、来客がありました。「おい、開けてくれよ」
窓を何かが叩く音がしました。少女は聞きました。「どなたでしょう」少女は正直無視するべきだったと思いました。
「ただのカラスだよ、真っ黒だろ」誰かさんは答えました。
「見えないけどなんとなくそうなのね」少女は答えました。
青みがかった色の羽にシュっとしたクチバシをもったカラスが窓を必死に叩きながら言います。
「雨に降られてんだ、雨宿りさせてくれないか」
少女は言いました「いやよ」
「どうして!?」カラスは驚きました。
「私、知らない人は家に入れちゃいけないって言われてたし」
「そ、そうかじゃあ他を探すしかないか」
カラスは飛び立とうとしました。
「どうやら本物のカラスのようね、入ってもい・・・」
と少女が言いかけましたがカラスは飛び去った後でした。
「まあいいか」少女は少し残念そうでした。
しばらくたってまた窓を叩く音がしました。
どうやらまたさっきのカラスのようです。
「タダで雨宿りとは言わねえ、木の実を持って来た」
「いえ、さっきは悪かったわ。入って」
少女は窓を開けました。
本当に木の実が置かれていました。律儀なカラスです。
「私てっきりカラスって悪い奴だと思ってたわ。ゴミを荒らすし」
言いかけてカラスが口をはさみます。
「ああ、そんな奴らと一緒にするな。俺はこういうカラスだ」
「そう」少女は小さく言いました。
同じカラスにも違いはあるようでした。
「ところで、なんたってこんな人がいないところに住んでるんだ?」
カラスは言いました。
「もう巻き込まれたくないからよ」
少女は言いました。
「誰かの手によって私たちの森は焼かれたわ。もうそんな思いしたくない」
「ここにいても同じだとしても?」
「ええ、世界は怖いし醜いし怖いわ」
「そうか」
「じゃあ、礼といっちゃなんだが俺が怖くないと証明してやろう」
カラスは言いました。
「なによそれ。どうするのよ」
少女は言いました。
「俺が外の空気を持ってきてやる。話でも、物でも」
「そうしたら少しは怖くなくなる」
カラスは言いました。
「誰も頼んでないわ」
少女は答えました。
「けれど、勝手にやるんだったらどうぞ」
「よし、分かった。今日からオレたちは友達だ。」
「え?」
翌朝からカラスの届け物が始まりました。
「これ、散歩途中で見つけたんだ。きれいな色してるだろ」
そう言って花を持ってきました。
「そうね。でもそれくらいならどこにでもあるし、わたしにはそれは見えないわ」
少女は答えました。
「なに、見えないのか?」
「自分から見えなくしたのよ」
少女は言いました。カラスは黙って少女を見ていました。
カラスは次の日も来ました。
「これは決死の思いで取って来た獣の毛だ、すごいだろ」
そういって獣の毛を見せつけました。
「その獣は以前図鑑でみたことがあった上に今は見えないわね」
少女は答えました。
「そ、そうか。でも本物は初めてみるだろ?」
「ええ、そうね」
少女は僅かに笑いました。
カラスはその次の日もやってきては、冒険譚やお土産を持ってきました。
少女は少しづつ外の世界を知りました。
季節が一巡りするくらいにずっとそのやりとりは続きました。しかしある日の冬の朝、カラスは来ませんでした。
「もう飽きちゃったのかしら」
少女は少し心配でした。外は凍える寒さです。
「どうしよう」
少女にはどうすることもできません。
冬の日、翌朝もカラスは来ませんでした。
その次の日も次の日も、
カラスはやって来ませんでしたが、代わりにハトがやってきました。
「おい開けてくれよ。外は吹雪なんだよう」
「・・・カラスから聞いていた特徴と同じだからきっとハトなのでしょうね。今開けるわ」
窓を開けるとハトがちょこちょこと入ってきました。
「ひゃー助かる」
「聞きたい事があるんだけど」
「なんだい?あたたまってからでいいなら答えるよ」
「カラスを最近みていないのよ、それで・・・」
少女は言いかけました。
「ああ、あのカラスか。山に登ってったの見たっきり見てないな」
「そう・・・」
少女は小さく言いました。嫌な予感がしました。
「なんたってひきこもってる友達のためにとびきりのアイテムを探しに行くとかどうとか言ってたな」
少女はもっと心配になりました。もしかしたら力尽きているかもしれません。
けれど少女は引きこもってる上に目を閉ざしています。
少女は迷いました。
「吹雪がおさまってきたな。じゃあぼくはこれで」
とハトはどこかへ行こうとしました。
「待って」
少女は引き留めました。初めてのことでした。
「なんだい?」
ハトは答えました。
「私の友達が大変な思いをしているかもしれないの。でも私一人じゃ怖いの」
「案内をしてほしいの」
ハトは僅かに考えると、答えました
「いいよ。カラスのことだね。ぼくに任せて。お礼に案内しよう」
二人は外に出ることになりました。
「うっ寒い」
外はそこら一帯銀色の世界が広がっています。
ですが少女にはまだ見えません。
音と感覚を頼りにハトについて行きます。
「本当に大丈夫なのかな」
ハトは心配そうに見ています。
すこしづつ山に近づいて行きます。寒さも増していきます。
「あの子はここを飛んでいたの?」
「そうだよ」
少女は寒さに耐えながら歩みを進めて行きます。
山の少し進んだところに着きました。
「ここから先はぼくにも厳しいな・・・」
「いいわ、自分で行ってみる」
少女は今度は一人で友達のために歩みはじめました。
登っても登ってもカラスの気配はしません。
「一体どこまで行ってるのよ・・・」
少女は挫けそうです。
途中でまた吹雪がやってきたりしました。獣の声もします。
少女はこの時目を閉じておいて良かったと思いました。余計な物を見ずに済みます。
「今度は私が迎えに行く番だわ」
だんだんと日が暮れてきて明かりを感じなくなってきました。体温も下がります。
「あの子か感じていた寒さはきっとこんなもんじゃないわ」
少女はカラスを思い出し、それでも歩き続けます。
「早くいつも見たいに私の所にきなさいよ・・・」
少女の歩みが、小さくなっていきます。
「あんたのせいでこうなっちゃったじゃないの」
少女は泣きながら歩きます。
怖さの中歩き続けて歩き続けて、
そして山の頂上が見えたかと思った時、カラスの声がしました。
「うわ!?何やってんだこんなとこで!?」
少女は友達を見つけることができました。
「あんまり帰りがおそいから私の方からきたのよ」
「それにしてもここまでくるか・・・」
「ま、いいか」
「それで、なにを見せたがって探してたのよ」
「それはいずれ分かる」
カラスはなにやら変な機械を首にぶら下げていました。
「カメラって言うんだそうだ。あ、盗んだりしてないぞ。もらいものだ」
そうカラスが言っているうちに夜が明け、真っ白な光が目に入り込んできました。
少女はいつの間にか目を開けてしまっていました。
そしてそこに映っていたのは、一面雪で包まれた世界の姿でした。
「ほら、すごいだろ?」
カラスはいいました。
「これでも怖いとか醜いとか言うのか?」
「ええ、世界は醜いし怖い」
「けれど」
少女は続けました。
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