6 / 22
5 雲雀野市尾輿支所
しおりを挟む
柳澤と杏子は、雲雀野市役所尾輿支所の玄関前に立っていた。この極めてありふれた鉄筋コンクリート造りの二階建て庁舎は、旧尾輿村役場でもある。杏子が事前に電話でアポイントを取った際には、よくわからないが地域振興課で詳しい話をできるかもしれない、という漠然とした返答を得ていた。いかにも地方自治体の役所然としたガラス扉をくぐり、案内図に従って階段を登る。通路左手の棚に地域イベントのパンフレットや市報が雑然と並べられた薄暗い廊下の先に、地域振興課の表示板が見えた。柳澤がドアをノックし、引いて開けるべき戸を押し開けようとして衝突した。
「失礼します。さきほどお電話しました雲雀野署の進藤巡査です」
「どうも、警部補の柳澤です」
柳澤の立てた衝突音で職員の注目が集まる中、杏子が先に挨拶する。入口ドアから離れたデスクで受話器を片手に通話していた、ワイシャツの上に作業着を羽織った中年男性が右手を上げて会釈した。女性職員が二人をデスク右側の応接スペースに案内し、布張りのソファを勧める。テーブルの上には、輪ゴムでまとめられた封筒の束が大量に置かれていた。どうやら電話はもう少し時間がかかるようだ。
「手帳忘れてきたわ、進藤くん出してくれ」
ソファに向かいながら、柳澤が小声で言う。中年男性は受話器を左肩と頬に挟んで、書類をめくりながら話を続けている。デスクにはなぜか、アメリカ映画のFBI職員がデスクに立てているようなスターズ・アンド・ストライプの小旗がある。
「What motherfucking some problem? Bro. ya...ya」
アメリカ映画に登場する黒人男性の台詞ではなく、市役所の中間管理職と思しき中年男性の会話だ。
「コーヒーでよろしいですか? ……スイカなどもありますよ」
ソファに腰掛けた二人に、中年の女性職員が聞いた。
「……ありがとうございます。ではコーヒーだけ、私はブラックで」
「ああ、俺はミルクを多めで」
「Please keep reporting us Miura-san’s condition. Yeah. right. nigga! bye」
受話器を置いた中年男性は、謝意と諦念の入り混じった複雑な表情で柳澤たちに向き直った。
「……地域の自治会長さんなんですがね、映画大好きで、こういう口調で話すと機嫌がいいんですよ。悪い人じゃないです。もちろん黒人男性でもないです」
中年男性はそう弁明しつつ星条旗を寝かせ、メモ用紙を持って椅子から立ち上がった。
「申し遅れました、課長補佐の佐藤です」
佐藤はテーブルを挟んで窓側の椅子に腰掛けた。杏子が警察手帳を見せて挨拶する。
「それで、ええと例のミステリーサークルのことでしたっけ?」
「はい?」
警察官二人は口を揃えて聞き返した。
「先週石川さんの田んぼにハート型のミステリーサークルが作られて騒ぎになったんですが犯人は不明で……そっちじゃない?」
近くのデスクで書類を揃えていた女性職員が、雲雀野自然公園の件で来た警察の方です、と口添えした。FBI捜査官が超常現象について聞き込みに来るような海外ドラマでも観ていたのだろうか。
「ああ、あっち。公園の……カメラですって?」
「ええ。傷害事件が発生したんですが、そのライブカメラに犯行の一部始終が映っていた、という情報を得まして。録画データか何かあれば警察としては非常に助かると」
「なんか知ってる?」
佐藤は椅子から中腰で身を乗り出し、他の職員たちに問いかけた。
「自然公園ってどこだっけ」
「ほら、学心館の下のほうでしょう」
「カメラ? あんなところに防犯カメラなんて付けたの?」
「ああちょっと待って、俺が昔やったやつだそれ」
「街中にも防犯カメラなんてないのにね」
杏子と佐藤課長補佐にはブラックのコーヒーが、柳澤にはコーヒーカップに入った牛乳が運ばれてきた。
「あった、これだ。十九年度の地域通信インフラ整備事業」
「そんなのあったねえ、田中補佐の頃だ。あと羽鳥くんで動いてたよね」
「はいはい。えー……また尾輿地区の通信インフラ整備と併せ……雲雀野自然公園へ設置するインターネットカメラによる映像配信を開始し、新時代に対応した新しい尾輿村を目指します? と」
「ははは、誰かの趣味で入れたのかな、これ。合併後どうなったんだっけ」
「雲雀野市のネットワークに統合されたんじゃない?」
「田中補佐なら知ってますよね」
「田中さんは今どこに?」
「去年で定年。再雇用でどこかにいるはずだな」
「たしか本庁の管財課にいるよ」
以上のような内容の会話が、地元出身者以外には理解不能な方言で交わされた。柳澤も杏子も出身地は県内だが、地域は異なるため理解不能な部分がある。二人はコーヒーと牛乳をすすりながら、縁日のお面のような表情で結論が出るのを待っていた。
ちょっと確認してみます、と佐藤が席を立ち、件の田中補佐らしき人物に電話をかけた。通話開始から三分ほどは近況を報告しあう談笑が続き、用件は二十秒で済んだ。言語は純度一〇〇%の県北訛りだった。一度受話器を置くと、佐藤はまた別の部署に内線電話をかける。
「オッス大友さんッスか? その例のカメラなんスけど、いや撮影とかじゃねっス。自分、節制まだなもんでバルクキレてねえんで撮影はちょっと。あがっ」
先刻とは違った口調で通話する佐藤の側頭部を、コーヒーを運んでくれた女性職員がお盆の縁で殴った。
「見てるとムカつくでしょう?」
そう言って柳澤たちに笑いかける。二人は苦笑いを返すしかなかった。どうやらこれが日常茶飯事らしく、職員の誰も特に気に留めている様子はない。佐藤は特濃体育会系口調で話しながらメモを取っている。
「オス、じゃあ、ケツ穴締めて助成金受付頑張ってください、えっ募集してるのは助成じゃなくてダンセイっスかアハハハハハ!」
別の女性職員が、丸めた書類の束で佐藤の後頭部を殴った。雲雀野市の職員は、ずいぶん個性豊かな人物が揃っているらしい。通話を終え、おまたせしました、と佐藤が警官二人のもとに戻ってきた。
「結論から申しますと、録画はしてないそうなんです」
「ああ、そう、そうでしたか……」
「その、公園のカメラですが、防犯カメラというような性格のものでなくて、ただ単に映像をインターネットに流してるだけのものだと。ちょっとパソコンで見てもらっていいですか」
佐藤は自分のデスクへ二人を呼んだ。人差し指だけのたどたどしいキーボード操作で、電話中に取ったメモを見ながらインターネットブラウザを操作する。市のウェブサイト内でいくつかのハイパーリンクを辿り、雲雀野自然公園ライブカメラのページを開いた。
「これですね。私も実は今回初めて知ったんですが、お恥ずかしながら、存在を知ってる職員すらほとんどいなかった状態でして」
液晶モニターには、先程まで柳澤たちがいた公園の様子が映っている。それを見た杏子は、かなたが張ったと思しきアメリカ警察のテープがそのままになっていることに気付いた。佐藤に発見されて海外ドラマのマニアだと思われると、困る。幸い配信映像は解像度が低く、時差にして十三時間ほど場違いなテープの文字までは判読できなかった。
「そういったわけでして、ご期待に添えず申し訳ない」
「いえいえ、しゃーないことです。それはともかく、傷害事件が起きたってのは、とりあえずお知らせした方がいい情報ですよね?」
「それ、どんなもので?」
「目撃証言や情況証拠から見る限りでは、それほど重大な事件ではなさそうです。ただ被害者の行方がわからず、現在病院等に照会しています。そして、犯人がまだ捕まっていないので注意が必要です」
「それで、ですね、もし何か、地域の方から情報提供ありましたら、ご連絡いただけるとありがたいんですが」
そうでしたか、と佐藤は不安げに嘆息し、他の職員たちに意見を求めた。
「どうする? 防災無線使って呼びかける?」
「そこまでしなくても、いいんじゃないですか? 近隣地区の会長さんに言って、連絡網で広めてもらったらどうでしょう」
「無線だと地区全体にしか流せないから、大ごとに聞こえちゃうよね」
「問い合わせの電話ガンガンかかってきたらめんどくさいし」
「かと言って回覧用の書類作って届けるのも面倒だね。一応緊急だし、防災無線のテスト兼ねてやるか」
再び通訳の必要な会話が飛び交う。柳澤は牛乳を飲み干し、杏子を促して席を立った。これ以上長居をする理由もなさそうだ。
「ではどうも。お手数おかけしました」
「こちらこそお役に立てませんで。ご苦労さまです」
佐藤をはじめ他の職員たちも頭を下げ、二人は退室した。
「そういえば、自然公園の上に学心館あるじゃない。あそこの磐船講ってまだあるの?」
「そうじゃない? なんだか新手の農本主義活動みたいなことやってるようだけど」
二人が廊下に出るとすぐに、職員たちの雑談が漏れ聞こえてきた。柳澤はジェスチャーで杏子に内容が気になる旨を伝え、スマートフォンを取り出して操作するふりをしながら聞き耳を立てる。
「一応あそこ、もともと単立宗教法人だよ。講って付いてるけど無尽会社とかじゃないんだって」
「ほんとに?」
「あ、それで本家が新興宗教みたいなことやってたのか」
「息子が言ってたんだけどね、ヒナモリのお嬢さん、ここのところ学校に来てないって」
「先代の顔があるからあんまり言いたくないけど、あそこ今の代になってだいぶ変わったみたいね」
「うちの爺さんくらいまでかな、毎月お金納めてたの」
「その頃だねえ、なんか天明教って言ってたっけ、外から人集めて新興宗教みたいなこと始めたり、村にやたらと寄付金出したりしたの」
「税務課の境さん大変だったらしいよ。婆さんが天明教に入れ揚げて、土地だの何だの寄付しようとして家庭崩壊寸前だったって」
「ああ、そのせいかね、たまに天罰が下る、って怖がる年寄りいるじゃん」
「天明教っていうか磐船講ってさ、なんか財宝隠してるとか言ってるね」
「最近聞くね、そういう噂。ここ二ヶ月くらいか」
「昔年寄りから巻き上げたカネとかかい」
「どうだろうね、そのへんは、訴えられてあらかた持ってかれたらしいけど」
「じゃあやっぱり、物部氏の時代から伝わる財宝とか」
「そりゃ財宝ってか、もう文化財って方向じゃないかい?」
「でも隠し財宝の噂って、小森本家の先代とかじゃなかったっけ……」
「失礼します。さきほどお電話しました雲雀野署の進藤巡査です」
「どうも、警部補の柳澤です」
柳澤の立てた衝突音で職員の注目が集まる中、杏子が先に挨拶する。入口ドアから離れたデスクで受話器を片手に通話していた、ワイシャツの上に作業着を羽織った中年男性が右手を上げて会釈した。女性職員が二人をデスク右側の応接スペースに案内し、布張りのソファを勧める。テーブルの上には、輪ゴムでまとめられた封筒の束が大量に置かれていた。どうやら電話はもう少し時間がかかるようだ。
「手帳忘れてきたわ、進藤くん出してくれ」
ソファに向かいながら、柳澤が小声で言う。中年男性は受話器を左肩と頬に挟んで、書類をめくりながら話を続けている。デスクにはなぜか、アメリカ映画のFBI職員がデスクに立てているようなスターズ・アンド・ストライプの小旗がある。
「What motherfucking some problem? Bro. ya...ya」
アメリカ映画に登場する黒人男性の台詞ではなく、市役所の中間管理職と思しき中年男性の会話だ。
「コーヒーでよろしいですか? ……スイカなどもありますよ」
ソファに腰掛けた二人に、中年の女性職員が聞いた。
「……ありがとうございます。ではコーヒーだけ、私はブラックで」
「ああ、俺はミルクを多めで」
「Please keep reporting us Miura-san’s condition. Yeah. right. nigga! bye」
受話器を置いた中年男性は、謝意と諦念の入り混じった複雑な表情で柳澤たちに向き直った。
「……地域の自治会長さんなんですがね、映画大好きで、こういう口調で話すと機嫌がいいんですよ。悪い人じゃないです。もちろん黒人男性でもないです」
中年男性はそう弁明しつつ星条旗を寝かせ、メモ用紙を持って椅子から立ち上がった。
「申し遅れました、課長補佐の佐藤です」
佐藤はテーブルを挟んで窓側の椅子に腰掛けた。杏子が警察手帳を見せて挨拶する。
「それで、ええと例のミステリーサークルのことでしたっけ?」
「はい?」
警察官二人は口を揃えて聞き返した。
「先週石川さんの田んぼにハート型のミステリーサークルが作られて騒ぎになったんですが犯人は不明で……そっちじゃない?」
近くのデスクで書類を揃えていた女性職員が、雲雀野自然公園の件で来た警察の方です、と口添えした。FBI捜査官が超常現象について聞き込みに来るような海外ドラマでも観ていたのだろうか。
「ああ、あっち。公園の……カメラですって?」
「ええ。傷害事件が発生したんですが、そのライブカメラに犯行の一部始終が映っていた、という情報を得まして。録画データか何かあれば警察としては非常に助かると」
「なんか知ってる?」
佐藤は椅子から中腰で身を乗り出し、他の職員たちに問いかけた。
「自然公園ってどこだっけ」
「ほら、学心館の下のほうでしょう」
「カメラ? あんなところに防犯カメラなんて付けたの?」
「ああちょっと待って、俺が昔やったやつだそれ」
「街中にも防犯カメラなんてないのにね」
杏子と佐藤課長補佐にはブラックのコーヒーが、柳澤にはコーヒーカップに入った牛乳が運ばれてきた。
「あった、これだ。十九年度の地域通信インフラ整備事業」
「そんなのあったねえ、田中補佐の頃だ。あと羽鳥くんで動いてたよね」
「はいはい。えー……また尾輿地区の通信インフラ整備と併せ……雲雀野自然公園へ設置するインターネットカメラによる映像配信を開始し、新時代に対応した新しい尾輿村を目指します? と」
「ははは、誰かの趣味で入れたのかな、これ。合併後どうなったんだっけ」
「雲雀野市のネットワークに統合されたんじゃない?」
「田中補佐なら知ってますよね」
「田中さんは今どこに?」
「去年で定年。再雇用でどこかにいるはずだな」
「たしか本庁の管財課にいるよ」
以上のような内容の会話が、地元出身者以外には理解不能な方言で交わされた。柳澤も杏子も出身地は県内だが、地域は異なるため理解不能な部分がある。二人はコーヒーと牛乳をすすりながら、縁日のお面のような表情で結論が出るのを待っていた。
ちょっと確認してみます、と佐藤が席を立ち、件の田中補佐らしき人物に電話をかけた。通話開始から三分ほどは近況を報告しあう談笑が続き、用件は二十秒で済んだ。言語は純度一〇〇%の県北訛りだった。一度受話器を置くと、佐藤はまた別の部署に内線電話をかける。
「オッス大友さんッスか? その例のカメラなんスけど、いや撮影とかじゃねっス。自分、節制まだなもんでバルクキレてねえんで撮影はちょっと。あがっ」
先刻とは違った口調で通話する佐藤の側頭部を、コーヒーを運んでくれた女性職員がお盆の縁で殴った。
「見てるとムカつくでしょう?」
そう言って柳澤たちに笑いかける。二人は苦笑いを返すしかなかった。どうやらこれが日常茶飯事らしく、職員の誰も特に気に留めている様子はない。佐藤は特濃体育会系口調で話しながらメモを取っている。
「オス、じゃあ、ケツ穴締めて助成金受付頑張ってください、えっ募集してるのは助成じゃなくてダンセイっスかアハハハハハ!」
別の女性職員が、丸めた書類の束で佐藤の後頭部を殴った。雲雀野市の職員は、ずいぶん個性豊かな人物が揃っているらしい。通話を終え、おまたせしました、と佐藤が警官二人のもとに戻ってきた。
「結論から申しますと、録画はしてないそうなんです」
「ああ、そう、そうでしたか……」
「その、公園のカメラですが、防犯カメラというような性格のものでなくて、ただ単に映像をインターネットに流してるだけのものだと。ちょっとパソコンで見てもらっていいですか」
佐藤は自分のデスクへ二人を呼んだ。人差し指だけのたどたどしいキーボード操作で、電話中に取ったメモを見ながらインターネットブラウザを操作する。市のウェブサイト内でいくつかのハイパーリンクを辿り、雲雀野自然公園ライブカメラのページを開いた。
「これですね。私も実は今回初めて知ったんですが、お恥ずかしながら、存在を知ってる職員すらほとんどいなかった状態でして」
液晶モニターには、先程まで柳澤たちがいた公園の様子が映っている。それを見た杏子は、かなたが張ったと思しきアメリカ警察のテープがそのままになっていることに気付いた。佐藤に発見されて海外ドラマのマニアだと思われると、困る。幸い配信映像は解像度が低く、時差にして十三時間ほど場違いなテープの文字までは判読できなかった。
「そういったわけでして、ご期待に添えず申し訳ない」
「いえいえ、しゃーないことです。それはともかく、傷害事件が起きたってのは、とりあえずお知らせした方がいい情報ですよね?」
「それ、どんなもので?」
「目撃証言や情況証拠から見る限りでは、それほど重大な事件ではなさそうです。ただ被害者の行方がわからず、現在病院等に照会しています。そして、犯人がまだ捕まっていないので注意が必要です」
「それで、ですね、もし何か、地域の方から情報提供ありましたら、ご連絡いただけるとありがたいんですが」
そうでしたか、と佐藤は不安げに嘆息し、他の職員たちに意見を求めた。
「どうする? 防災無線使って呼びかける?」
「そこまでしなくても、いいんじゃないですか? 近隣地区の会長さんに言って、連絡網で広めてもらったらどうでしょう」
「無線だと地区全体にしか流せないから、大ごとに聞こえちゃうよね」
「問い合わせの電話ガンガンかかってきたらめんどくさいし」
「かと言って回覧用の書類作って届けるのも面倒だね。一応緊急だし、防災無線のテスト兼ねてやるか」
再び通訳の必要な会話が飛び交う。柳澤は牛乳を飲み干し、杏子を促して席を立った。これ以上長居をする理由もなさそうだ。
「ではどうも。お手数おかけしました」
「こちらこそお役に立てませんで。ご苦労さまです」
佐藤をはじめ他の職員たちも頭を下げ、二人は退室した。
「そういえば、自然公園の上に学心館あるじゃない。あそこの磐船講ってまだあるの?」
「そうじゃない? なんだか新手の農本主義活動みたいなことやってるようだけど」
二人が廊下に出るとすぐに、職員たちの雑談が漏れ聞こえてきた。柳澤はジェスチャーで杏子に内容が気になる旨を伝え、スマートフォンを取り出して操作するふりをしながら聞き耳を立てる。
「一応あそこ、もともと単立宗教法人だよ。講って付いてるけど無尽会社とかじゃないんだって」
「ほんとに?」
「あ、それで本家が新興宗教みたいなことやってたのか」
「息子が言ってたんだけどね、ヒナモリのお嬢さん、ここのところ学校に来てないって」
「先代の顔があるからあんまり言いたくないけど、あそこ今の代になってだいぶ変わったみたいね」
「うちの爺さんくらいまでかな、毎月お金納めてたの」
「その頃だねえ、なんか天明教って言ってたっけ、外から人集めて新興宗教みたいなこと始めたり、村にやたらと寄付金出したりしたの」
「税務課の境さん大変だったらしいよ。婆さんが天明教に入れ揚げて、土地だの何だの寄付しようとして家庭崩壊寸前だったって」
「ああ、そのせいかね、たまに天罰が下る、って怖がる年寄りいるじゃん」
「天明教っていうか磐船講ってさ、なんか財宝隠してるとか言ってるね」
「最近聞くね、そういう噂。ここ二ヶ月くらいか」
「昔年寄りから巻き上げたカネとかかい」
「どうだろうね、そのへんは、訴えられてあらかた持ってかれたらしいけど」
「じゃあやっぱり、物部氏の時代から伝わる財宝とか」
「そりゃ財宝ってか、もう文化財って方向じゃないかい?」
「でも隠し財宝の噂って、小森本家の先代とかじゃなかったっけ……」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる