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絶望の檻

4 力の源泉 2

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「時間を動かす力か……初めて聞いたが、面白え理論だ」
「この力に関しちゃ、今まで話す相手なんていなかったからな」
「しかしその理論でいくと、リーパーってのは力を使った分だけ、俺ら凡人の何倍も早く歳を取る、ってことにならねえか?」
 バックマンの推論すいろんにリースベットは面食らい、口に含んでいたスープを噴き出しそうになった。真向かいにいたアウロラは思わず身をかわす。
「マジか……」
 素地に自信があるのか単に興味がないのか、リースベットは外見を殊更ことさらよそおうことはない。エステルも認める絹糸のような髪の手入れは怠っていないが、それで満足しているようだ。だが加齢の過剰進行仮説には衝撃を受けたようだった。
 圧倒的な力と面倒見の良さで山賊たちをまとめ上げているリースベットだが、彼女はまだ二十歳を過ぎたばかりだ。
「お前も力の使い方を覚えりゃ、もっと重量のある武器でも扱えるようになるはずだ」
「そうすれば、この前みたいなことにもならないのか……」
 カールソンの襲撃に際して、アウロラは自身の不甲斐なさを痛感していた。エステルの助力がなければ、彼女自身にはよりひどい結末が待ち受けていたことだろう。
「練習してえなら、保管庫にゃもっとデカい鎚鉾メイス戦鎚ハンマーそろえてあるぜ」
「……ちょっと考えてみる」
「急ぐ必要はねえぞ。慣れないうちに無理に重い得物えものを振り回すと、大抵肘を痛める。あたしらは出せる力が大きい分、空振った時にその力を受け止める肘や膝の負担もデカいんだ」
「ただ暴れてるだけじゃなかったのね」
「お前な……もう四年近くも付き合ってる力だ。いいかげん扱い方も覚えるさ」
「何だ、それじゃあ俺と会った時点じゃ、リーパーの力に目覚めてまだ日は浅かったのか」
 バックマンがリードホルム連合部隊から逃げ出してリースベットと出会ったのは、三年ほど前のことだった。
「まあな……力自体は、それより前からあったのかも知れねえが。もう少し早く気付けてればな……」
「いつだってそいつが問題なんだ。遅れに遅れて、俺達みたいなのがここに集まってる」
 ほんの少し早いだけで救えたはずの命があり、己の身も守ることができたかも知れない。リースベットは胸に去来きょらいした今より少し幼い自分と、かつての同居人モニカ・コールバリの姿を振り払った。
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