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第一話 「猫又の恋と、白玉あんみつ」
(三)
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優香の家は、この地域では珍しい三階建てだ。一階と二階が食事処となっており、三階部分が居住スペースとなっている。
優香は、何時もの様に食事処の扉を開けて店内に入る。
「ただいまー」
「お帰り、優香」
穏やかな笑顔で父の智久が迎えてくれる。
「おやつ、あるで。二階でみんなと一緒に食べぇや」
そう言って、小皿に取り分けたカステラを優香に手渡す。
「ありがとう、いただきます!」
智久は、おっとり穏やかな性格でいつもにこにこと笑っている。
母親の香織も、優香がテストで赤点さえ取らなければ怒らない穏やかな性格だ。
大学に通うために家を出ている二つ上の兄・智也は、家族の中で一番のしっかり者。
優香は、そんな家族が大好きだ。
二階への階段を上りながら、手にしたカステラを顔に近付けるとふんわりと甘い焼き菓子特有の匂いがする。
(ああ、ダメだ。ダイエットしなきゃなのに…!)
どちらかと言えば、ほっそりより“ややふっくら“としている(と自分で思っている)優香は、ダイエットせねばと意気込みつつも、誘惑に負けてばかりいた。
「明日から本気出す…!」
何千回目か分からぬ決意を口にして、今日も自分自身を甘やかす。
「ただいまー」
慣れた様に声を掛けて襖を開けると、ちょうど餓者髑髏が竹楊枝でカステラを小さく切り分けていた。
『あら、優香。おかえりー』
『あ、ゆかだ!』
『ゆか、おかえりなの…』
餓者髑髏にカステラを切り分けて貰っていたのは、近くのお寺に住み着いている座敷童子の兄妹だ。
『ゆか、あそべ!』
やんちゃ盛りの兄の理久が優香の元に走り寄って来てスカートをグイグイと引っ張る。
「理久、だめ!スカート破れちゃうでしょ」
「やぶれたって、なかみはだいこんあし……いてっ!」
小生意気な口を聞く幼子に優しめの拳固を落としてから、優香も卓袱台に座る。
傍にやって来た理久がすかさず優香の膝の上に座って嬉しそうにしている。
『ちょっと、理久!ほら、切ったわよ』
『ほね、ありがとな!』
『誰が骨や、オイ』
厳つい地声を出して、餓者髑髏が憤慨した。
兄とは違って、妹の花はもぐもぐと幸せそうな顔でカステラを頬張っている。
「花、カステラ美味しい?」
『おいしい…』
花はあまり感情が出ない子だが、甘い物は大好きだ。
『優香どん、お久しゅう』
懐かしい声に振り向くと、卓袱台の向こうでは化けイタチのカナチが呑気に茶を啜っていた。
「カナチ、元気だった?」
『ぼちぼちですわぁ』
間の抜けたのんびりした声で答えると、カナチは再び茶を啜り、そのままごろんと畳に横になる。
優香は、何時もの様に食事処の扉を開けて店内に入る。
「ただいまー」
「お帰り、優香」
穏やかな笑顔で父の智久が迎えてくれる。
「おやつ、あるで。二階でみんなと一緒に食べぇや」
そう言って、小皿に取り分けたカステラを優香に手渡す。
「ありがとう、いただきます!」
智久は、おっとり穏やかな性格でいつもにこにこと笑っている。
母親の香織も、優香がテストで赤点さえ取らなければ怒らない穏やかな性格だ。
大学に通うために家を出ている二つ上の兄・智也は、家族の中で一番のしっかり者。
優香は、そんな家族が大好きだ。
二階への階段を上りながら、手にしたカステラを顔に近付けるとふんわりと甘い焼き菓子特有の匂いがする。
(ああ、ダメだ。ダイエットしなきゃなのに…!)
どちらかと言えば、ほっそりより“ややふっくら“としている(と自分で思っている)優香は、ダイエットせねばと意気込みつつも、誘惑に負けてばかりいた。
「明日から本気出す…!」
何千回目か分からぬ決意を口にして、今日も自分自身を甘やかす。
「ただいまー」
慣れた様に声を掛けて襖を開けると、ちょうど餓者髑髏が竹楊枝でカステラを小さく切り分けていた。
『あら、優香。おかえりー』
『あ、ゆかだ!』
『ゆか、おかえりなの…』
餓者髑髏にカステラを切り分けて貰っていたのは、近くのお寺に住み着いている座敷童子の兄妹だ。
『ゆか、あそべ!』
やんちゃ盛りの兄の理久が優香の元に走り寄って来てスカートをグイグイと引っ張る。
「理久、だめ!スカート破れちゃうでしょ」
「やぶれたって、なかみはだいこんあし……いてっ!」
小生意気な口を聞く幼子に優しめの拳固を落としてから、優香も卓袱台に座る。
傍にやって来た理久がすかさず優香の膝の上に座って嬉しそうにしている。
『ちょっと、理久!ほら、切ったわよ』
『ほね、ありがとな!』
『誰が骨や、オイ』
厳つい地声を出して、餓者髑髏が憤慨した。
兄とは違って、妹の花はもぐもぐと幸せそうな顔でカステラを頬張っている。
「花、カステラ美味しい?」
『おいしい…』
花はあまり感情が出ない子だが、甘い物は大好きだ。
『優香どん、お久しゅう』
懐かしい声に振り向くと、卓袱台の向こうでは化けイタチのカナチが呑気に茶を啜っていた。
「カナチ、元気だった?」
『ぼちぼちですわぁ』
間の抜けたのんびりした声で答えると、カナチは再び茶を啜り、そのままごろんと畳に横になる。
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