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第1章 覚醒篇 ー6
第23話 ワイルドボア2
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仲間の血の匂いに引き寄せられたのか、ワイルドボアの軍団が周囲を徘徊しながらこちらを眺めている。
敵の数は20といったところか。数的有利からすでに勝利を収めたような目付きをしているワイルドボアたち。
「ダンカン様。どういたしましょうか」
「相手は猪。なら調理するしかないな」
「猪料理は初めてです」
「なら良かった。俺も初めてだ!」
俺とシアラは視線を合わせただけで、お互いの思考を理解し合う。
同時に駆け出し、ワイルドボアに攻撃を開始する。
ワイルドボアを鋭い刃で切り裂くと、後方でシアラが敵を吹き飛ばす。
シアラが右にズレる。俺はその足音を聞き、シアラの真後ろに位置する場所に移動し、そこにいるワイルドボアを【ヴァナッシュ】で真っ二つに切り裂く。
互いの位置を確認し、互いを守り合うように戦う。
自身の見える範囲、180度を警戒しながら、後ろの180度はシアラに任せる。
細かい話をすると隙が無いわけじゃないが、相手は猪突猛進の猪モンスター。ちょっとぐらいの隙はカバーできる程度の相手だ。
「ほい。これで3匹」
「私も3匹目です」
最初に一匹、そしてそれぞれが3匹ずつワイルドボアを倒し、計7匹を討伐する俺たち。
だがワイルドボアは仲間をやられたからといって怯む様子は見られない。
何も考えていないのか、蛮勇なのか。恐らく前者なのだろうが、とにかく殺気駄々洩れで襲ってくるのは逆にありがたい。
油断することができないこの状況、俺にとってもシアラにとってもいい訓練になる。
少しでも油断をすると命の保証がない状態。これほどまでに生きた訓練は自身を強くさせてくれるのだから。
純粋な力は敵を倒していれば上昇していくが、こういう経験を積むのはなかなかできない。
敵は格下と言えども、こちらの命を狙っているのだ。適度な緊張感を味わいつつ経験値稼ぎができるなんて、ある意味で幸せではないだろうか。
「シアラ、問題は?」
「全くございません」
13匹のワイルドボアを倒した辺りで、敵の動きが変化する。
どうやら勝ち目がないと悟ったのか、ゆっくりと交代を開始した。
「……逃げるようですね」
「ああ。深追いする必要もない。いい訓練だっただけに残念だけどな」
「ですね。もっと続けたいぐらいでした」
ワイルドボアたちが去って行く。
肩を並べてその様子を眺める俺とシアラ。
どうやらシアラも同じ気持ちだったらしく、どこか物足りなさそうな表情を浮かべているように見えた。
「ゴブリンやスライムたちより手ごたえがありましたし、丁度いいぐらいの相手でしたのにね」
「だな。ああ、もう一度仲間を引き連れてやって来てくれないかな……って」
そんなことを思案し、望みを口にしようとした時であった。
遠くからドドドと地面を揺らす音が響く。
全身が震え、足元が揺れる感覚。
これは……モンスターの大群か?
「ダンカン様のご要望を聞き入れてくれたようです」
「ははは。でもちょっと数が多いような……」
どうやらワイルドボアが仲間を引き連れて戻って来たようだ。
その数なんと、およそ50。
さきほどと比べて1.5倍倍ほどに敵の数が増し、俺は苦笑いを浮かべるほかなかった。
「あれぐらいでしたら、どうとでもなると思います。ダンカン様と一緒なら」
「そうか……ああ、そうだな」
シアラは子供ながら、すでに信頼のおける仲間。
彼女といれば、あの程度のモンスター、恐るるに足らず。
若干の怯えは歓喜に変化し、俺は見えざる刃を構え、ワイルドボアの大群を前にして笑みを浮かべる。
「よし。シアラ。後ろは任せたぞ」
「かしこまりました」
ワイルドボアたちの足音が接近する。
俺は敵の数に構わず、敵と同じくして突進を開始した。
「行くぞ!」
縦横無尽に敵を刃で捌いていく。
左を斬り、右を斬り、近づく敵を見境なしに攻撃する。
血しぶきが舞い、地面にモンスターの死骸が積まれていく。
正面からでも敵を切り伏せることができる。俺はまた強くなっている。
そんな実感と共にワイルドボアを相手取っていたのだが、後ろのシアラの視線に振り返る俺。
「どうしたんだ?」
「いえ。ダンカン様があまりにも凄すぎるもので……」
いつもの無表情に見えるが、シアラはどうやら唖然としていたようだ。
ワイルドボアを軽々と倒すその姿は、どうやらシアラから見ればとんでもないことだったみたいで。
さっきと同じことをしていると自分では思っていたのだが、違うのかな?
「シアラも同じようなことをしてただろ」
ワイルドボアを倒しながら俺がそう聞く。
シアラは我に返ったのか、迫るワイルドボアを倒しながら口を開いた。
「敵の数は倍以上。ですがダンカン様の勢いはさっきの3倍以上ですよ。私は等倍程度でしか敵を倒せません」
確かに今の俺は勢いに乗っているが……そんなに勢いよく倒してるか?
だが足元の死体が真実を物語っており、自分がやったことをようやく理解する俺。
自分で苦笑いしながらも強くなっている実感に胸が躍る。
ワイルドボアとの戦いはまだ終わっていない。
まだ成長できる。そんな気持ちが俺とシアラを突き動かす。
敵の数は20といったところか。数的有利からすでに勝利を収めたような目付きをしているワイルドボアたち。
「ダンカン様。どういたしましょうか」
「相手は猪。なら調理するしかないな」
「猪料理は初めてです」
「なら良かった。俺も初めてだ!」
俺とシアラは視線を合わせただけで、お互いの思考を理解し合う。
同時に駆け出し、ワイルドボアに攻撃を開始する。
ワイルドボアを鋭い刃で切り裂くと、後方でシアラが敵を吹き飛ばす。
シアラが右にズレる。俺はその足音を聞き、シアラの真後ろに位置する場所に移動し、そこにいるワイルドボアを【ヴァナッシュ】で真っ二つに切り裂く。
互いの位置を確認し、互いを守り合うように戦う。
自身の見える範囲、180度を警戒しながら、後ろの180度はシアラに任せる。
細かい話をすると隙が無いわけじゃないが、相手は猪突猛進の猪モンスター。ちょっとぐらいの隙はカバーできる程度の相手だ。
「ほい。これで3匹」
「私も3匹目です」
最初に一匹、そしてそれぞれが3匹ずつワイルドボアを倒し、計7匹を討伐する俺たち。
だがワイルドボアは仲間をやられたからといって怯む様子は見られない。
何も考えていないのか、蛮勇なのか。恐らく前者なのだろうが、とにかく殺気駄々洩れで襲ってくるのは逆にありがたい。
油断することができないこの状況、俺にとってもシアラにとってもいい訓練になる。
少しでも油断をすると命の保証がない状態。これほどまでに生きた訓練は自身を強くさせてくれるのだから。
純粋な力は敵を倒していれば上昇していくが、こういう経験を積むのはなかなかできない。
敵は格下と言えども、こちらの命を狙っているのだ。適度な緊張感を味わいつつ経験値稼ぎができるなんて、ある意味で幸せではないだろうか。
「シアラ、問題は?」
「全くございません」
13匹のワイルドボアを倒した辺りで、敵の動きが変化する。
どうやら勝ち目がないと悟ったのか、ゆっくりと交代を開始した。
「……逃げるようですね」
「ああ。深追いする必要もない。いい訓練だっただけに残念だけどな」
「ですね。もっと続けたいぐらいでした」
ワイルドボアたちが去って行く。
肩を並べてその様子を眺める俺とシアラ。
どうやらシアラも同じ気持ちだったらしく、どこか物足りなさそうな表情を浮かべているように見えた。
「ゴブリンやスライムたちより手ごたえがありましたし、丁度いいぐらいの相手でしたのにね」
「だな。ああ、もう一度仲間を引き連れてやって来てくれないかな……って」
そんなことを思案し、望みを口にしようとした時であった。
遠くからドドドと地面を揺らす音が響く。
全身が震え、足元が揺れる感覚。
これは……モンスターの大群か?
「ダンカン様のご要望を聞き入れてくれたようです」
「ははは。でもちょっと数が多いような……」
どうやらワイルドボアが仲間を引き連れて戻って来たようだ。
その数なんと、およそ50。
さきほどと比べて1.5倍倍ほどに敵の数が増し、俺は苦笑いを浮かべるほかなかった。
「あれぐらいでしたら、どうとでもなると思います。ダンカン様と一緒なら」
「そうか……ああ、そうだな」
シアラは子供ながら、すでに信頼のおける仲間。
彼女といれば、あの程度のモンスター、恐るるに足らず。
若干の怯えは歓喜に変化し、俺は見えざる刃を構え、ワイルドボアの大群を前にして笑みを浮かべる。
「よし。シアラ。後ろは任せたぞ」
「かしこまりました」
ワイルドボアたちの足音が接近する。
俺は敵の数に構わず、敵と同じくして突進を開始した。
「行くぞ!」
縦横無尽に敵を刃で捌いていく。
左を斬り、右を斬り、近づく敵を見境なしに攻撃する。
血しぶきが舞い、地面にモンスターの死骸が積まれていく。
正面からでも敵を切り伏せることができる。俺はまた強くなっている。
そんな実感と共にワイルドボアを相手取っていたのだが、後ろのシアラの視線に振り返る俺。
「どうしたんだ?」
「いえ。ダンカン様があまりにも凄すぎるもので……」
いつもの無表情に見えるが、シアラはどうやら唖然としていたようだ。
ワイルドボアを軽々と倒すその姿は、どうやらシアラから見ればとんでもないことだったみたいで。
さっきと同じことをしていると自分では思っていたのだが、違うのかな?
「シアラも同じようなことをしてただろ」
ワイルドボアを倒しながら俺がそう聞く。
シアラは我に返ったのか、迫るワイルドボアを倒しながら口を開いた。
「敵の数は倍以上。ですがダンカン様の勢いはさっきの3倍以上ですよ。私は等倍程度でしか敵を倒せません」
確かに今の俺は勢いに乗っているが……そんなに勢いよく倒してるか?
だが足元の死体が真実を物語っており、自分がやったことをようやく理解する俺。
自分で苦笑いしながらも強くなっている実感に胸が躍る。
ワイルドボアとの戦いはまだ終わっていない。
まだ成長できる。そんな気持ちが俺とシアラを突き動かす。
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