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第1章 覚醒篇 ー6
第20話 相談事
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重たく感じる扉を開き、父親の部屋に入る。
父親本人の肖像画が壁に飾ってあり、豪勢な家具と大きなベッド。
俺が使用していた以前の部屋とも比べ物にならないぐらい、金がかかっている部屋だ。
父親は机で何か仕事をしていたのか、書類を眺めていた目をこちらに向ける。
そして俺を見た瞬間、彼の表情は鬼のように変貌し、力の限り机を叩く。
「何をしにきた!!」
流石にキレすぎでしょ。
無能の俺なんて恥ずかしいかも知れないけど、仮にも子供だよ。そんなに怒ることないでしょ。
そんな風に思案する俺ではあったが、そんなことを言ったらさらに怒らせることは安易に想像できたので、自分の胸の中だけで毒を吐いておく。
「少し話がありまして」
「無い! だからさっさと出て行け!」
「いや、少しぐらい話を聞いてくれても――」
「お前の話を聞く時間が勿体ない!」
父親は手元にあったワイングラスを俺に向かって投げ、憤怒の表情で俺を見据える。
ワイングラスは俺に当たることなく背後の地面で割れ、その音を聞いた召使が中へと入って来た。
「いかがなされましたか?」
「こいつをつまみ出せ! 何故城にこいつを入れた!」
「わ、私は知りません……」
「お前ら全員の責任だ! 仕事を失いたくなければ、今すぐにこいつを連れて行け!」
キレすぎだと感じていたが……これはちょっと異常じゃないか?
怒るにしても度が過ぎる。親でも殺されたように怒り狂っているぞ。
だがどちらにしても話にもならない。なんとか話ぐらいは聞いてもらえると思ったが、これはどうも無理みたいだな。
仕方ない、ここは出直すか。
「失礼しました。出て行きます」
「そうしてくれ。お前の顔を見ているとイライラする!」
俺を睨む父から顔を逸らし、俺は部屋を後にする。
「はぁ……どうするかな」
父親の部屋の前で、肩を落とす俺。
これじゃ目的を達成することができない。
父親の反応がまさかあそこまでとは思ってなかった。話ぐらいは聞いてくれると考えていたのが、間違いだったな。
「ダンカン、何をしているんだ?」
「ニール兄さん……いや、少し父上に相談したいことがあったんだけど、追い出されてね」
「相談か……代わりに僕が話を聞こうか」
「そうしてくれると、ありがたい」
愚痴になってしまうかもしれないけれど、でも聞いてもらえるのなら嬉しい。
ニールと会話できるのを単純に楽しみというのは内緒だ。
俺はニールに促され、彼の部屋に行った。
そして俺たちは椅子に座り、会話を始める。
「それで、父上に相談って、何だったんだい?」
「実はシアラのことなんだけど」
「シアラ? シアラがどうかしたのか?」
「実は彼女、同僚から酷い扱いを受けていてね。それを止めてほしくて、頼みに行こうとしたんだけど」
「追い出されたというわけか」
俺が相談しようとしていたのはシアラのこと。
同じ召使の女性たちから、イジメみたいなことをされていた。
そんなことは許されるわけがない。
それにシアラはまだ子供だ。子供相手に大人が寄ってたかって……
思い出すだけでも腹が立つ。
「だけどそれは許されないね」
「ニール兄さんもそう思うだろ。そうなんだよ、酷いんだよ、あの人たち」
「その件は僕から父上に話をしておくよ。だから安心してくれ」
「ニール兄さん……」
偶然、父上の部屋の前を通りかかっただけなんだろうけど、ニールに話せて良かった。
俺は歓喜に心を躍らせ、笑顔で話の続きをする。
「誰がシアラに対して酷いことをしているか、一部しか俺には分からないから、その辺りは調査する必要があると思うんだ」
「うん。そのことも僕に任せておいてくれ。こちらで独自に調べておく」
「ニール兄さんは頼りになるな。俺は何もできないから、羨ましいよ」
「僕の力はダンカンのためにもある。必要ならいつでも手を貸すよ」
「ありがとう、ニール兄さん」
これでシアラのことは大丈夫だろう。
ニールが動いてくれるなら、きっと解決してくれるはずだ。
まだ子供だと言っても頼りになる存在。
大船に乗ったつもりで朗報を待つとしよう。
ニールと別れ、俺は自分の部屋に戻った。
部屋に戻るとシアラがいて、俺の顔を見るなり恭しく頭を下げてくれる。
「お風呂の準備ができていますが、どういたしますか」
「お風呂か……そうだな。もう入ろうかな」
外は夕暮れ。食事の前にお風呂を済ませておくのもいいだろう。
俺はシアラの提案に肯定し、お風呂をいただくことに。
お風呂はすでに湧かせておいてくれたようで、外のお風呂は熱そうに湯気を立ていた。
俺は服を脱ぎ、温度を確かめるために片足を突っ込む。
「熱いな……でもこれがいい!」
熱さを我慢し、俺は肩までお風呂に浸かる。
「ああ、いい湯だな」
体の芯から熱くなる。そんなお湯だ。
「ダンカン様」
「ん、どうしたシアラ――って、シアラ!?」
シアラの声に振り向くと、彼女はなんと服を脱いでいるではないか。
俺は驚きに顔を背けるが……どういうつもりだ?
心臓をドキドキさせながら、シアラの足音が近づくのを聞いていた。
父親本人の肖像画が壁に飾ってあり、豪勢な家具と大きなベッド。
俺が使用していた以前の部屋とも比べ物にならないぐらい、金がかかっている部屋だ。
父親は机で何か仕事をしていたのか、書類を眺めていた目をこちらに向ける。
そして俺を見た瞬間、彼の表情は鬼のように変貌し、力の限り机を叩く。
「何をしにきた!!」
流石にキレすぎでしょ。
無能の俺なんて恥ずかしいかも知れないけど、仮にも子供だよ。そんなに怒ることないでしょ。
そんな風に思案する俺ではあったが、そんなことを言ったらさらに怒らせることは安易に想像できたので、自分の胸の中だけで毒を吐いておく。
「少し話がありまして」
「無い! だからさっさと出て行け!」
「いや、少しぐらい話を聞いてくれても――」
「お前の話を聞く時間が勿体ない!」
父親は手元にあったワイングラスを俺に向かって投げ、憤怒の表情で俺を見据える。
ワイングラスは俺に当たることなく背後の地面で割れ、その音を聞いた召使が中へと入って来た。
「いかがなされましたか?」
「こいつをつまみ出せ! 何故城にこいつを入れた!」
「わ、私は知りません……」
「お前ら全員の責任だ! 仕事を失いたくなければ、今すぐにこいつを連れて行け!」
キレすぎだと感じていたが……これはちょっと異常じゃないか?
怒るにしても度が過ぎる。親でも殺されたように怒り狂っているぞ。
だがどちらにしても話にもならない。なんとか話ぐらいは聞いてもらえると思ったが、これはどうも無理みたいだな。
仕方ない、ここは出直すか。
「失礼しました。出て行きます」
「そうしてくれ。お前の顔を見ているとイライラする!」
俺を睨む父から顔を逸らし、俺は部屋を後にする。
「はぁ……どうするかな」
父親の部屋の前で、肩を落とす俺。
これじゃ目的を達成することができない。
父親の反応がまさかあそこまでとは思ってなかった。話ぐらいは聞いてくれると考えていたのが、間違いだったな。
「ダンカン、何をしているんだ?」
「ニール兄さん……いや、少し父上に相談したいことがあったんだけど、追い出されてね」
「相談か……代わりに僕が話を聞こうか」
「そうしてくれると、ありがたい」
愚痴になってしまうかもしれないけれど、でも聞いてもらえるのなら嬉しい。
ニールと会話できるのを単純に楽しみというのは内緒だ。
俺はニールに促され、彼の部屋に行った。
そして俺たちは椅子に座り、会話を始める。
「それで、父上に相談って、何だったんだい?」
「実はシアラのことなんだけど」
「シアラ? シアラがどうかしたのか?」
「実は彼女、同僚から酷い扱いを受けていてね。それを止めてほしくて、頼みに行こうとしたんだけど」
「追い出されたというわけか」
俺が相談しようとしていたのはシアラのこと。
同じ召使の女性たちから、イジメみたいなことをされていた。
そんなことは許されるわけがない。
それにシアラはまだ子供だ。子供相手に大人が寄ってたかって……
思い出すだけでも腹が立つ。
「だけどそれは許されないね」
「ニール兄さんもそう思うだろ。そうなんだよ、酷いんだよ、あの人たち」
「その件は僕から父上に話をしておくよ。だから安心してくれ」
「ニール兄さん……」
偶然、父上の部屋の前を通りかかっただけなんだろうけど、ニールに話せて良かった。
俺は歓喜に心を躍らせ、笑顔で話の続きをする。
「誰がシアラに対して酷いことをしているか、一部しか俺には分からないから、その辺りは調査する必要があると思うんだ」
「うん。そのことも僕に任せておいてくれ。こちらで独自に調べておく」
「ニール兄さんは頼りになるな。俺は何もできないから、羨ましいよ」
「僕の力はダンカンのためにもある。必要ならいつでも手を貸すよ」
「ありがとう、ニール兄さん」
これでシアラのことは大丈夫だろう。
ニールが動いてくれるなら、きっと解決してくれるはずだ。
まだ子供だと言っても頼りになる存在。
大船に乗ったつもりで朗報を待つとしよう。
ニールと別れ、俺は自分の部屋に戻った。
部屋に戻るとシアラがいて、俺の顔を見るなり恭しく頭を下げてくれる。
「お風呂の準備ができていますが、どういたしますか」
「お風呂か……そうだな。もう入ろうかな」
外は夕暮れ。食事の前にお風呂を済ませておくのもいいだろう。
俺はシアラの提案に肯定し、お風呂をいただくことに。
お風呂はすでに湧かせておいてくれたようで、外のお風呂は熱そうに湯気を立ていた。
俺は服を脱ぎ、温度を確かめるために片足を突っ込む。
「熱いな……でもこれがいい!」
熱さを我慢し、俺は肩までお風呂に浸かる。
「ああ、いい湯だな」
体の芯から熱くなる。そんなお湯だ。
「ダンカン様」
「ん、どうしたシアラ――って、シアラ!?」
シアラの声に振り向くと、彼女はなんと服を脱いでいるではないか。
俺は驚きに顔を背けるが……どういうつもりだ?
心臓をドキドキさせながら、シアラの足音が近づくのを聞いていた。
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