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第17話 新しい武器を【融合】する

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 町で装備を整えた俺は、それらを【融合】して使いやすい物にすることにした。
 並みの道具でもかけ合わせれば爆発的な力を発揮することもある。
 
 今回購入し木造の床に並べたのは『銀の剣』が三本、後は『ツーハンデッドソード』に『回復ポーションⅡ』。
 これらはランクⅡの道具だ。
 そしてランクⅠの『投げナイフ』に『ブーメラン』と『スライムの液体』。

 極めつけはランクⅢの道具が二つ!
 一つは使用者の魔力を上昇させる効果のある『ルーンブレイド』。
 もう一つは雷の力を宿した『ヴォルトの雷球』。
 この二つは奮発して買ったんだよ。
 お金はSランクパーティで仕事をしていたんだ。
 それなりに蓄えはあった。

 だがこの二つを買うのが限界だ。
 いや、限界どころか懐事情の限界突破。
 だってセリスに足りない分を出してもらったのだから。
 
 彼女に出してもらうのに気が引けたけれど、でも俺の装備が充実すればそれだけ彼女も助かるとのこと。
 そりゃそうだよな。
 仲間が強くなればそれだけチームの底力が上がるってことだもんな。
 ってことで、武器の用意はしっかりとしておこう。
 彼女をガッカリさせないように、実戦もサポートもこなせるように。

「まずは『銀の剣』だな……」

 銀色に輝く直剣。
 俺はそれに『スライムんの液体』を手にする。
 この二つをかけ合わせれば、面白い武器になるかもしれない。

 ベースは『銀の剣』。
 『スライムの液体』から【伸縮性】を摘出……伸び縮みするスライムの特性だ。
 そしてスキルで二つを【融合】。

 輝く剣。
 そして新しい姿となって目の前に現れる。
 刀身は緑色。
 軽く振るってみると――ゴムのように伸びる剣。
 うん。意外性があって面白い武器だと思う。
 攻撃能力自体は通常の『銀の剣』と変わらないが、これなら虚をつく戦いができる。
 ついでにこれに【巧】を【付与】。
 【巧】は器用さが上昇する【付与】で、伸縮して扱いの難しそうなこの武器を手軽に使えるようになると言うわけだ。
 なんていい組み合わせ。
 これなら不器用な人間が使ったとしても問題ないだろう。
 ちなみに俺は器用じゃないから大助かり。
 ま、ほとんど自分のために【付与】したものだ。
 
「よし。こいつの名前は『伸縮剣』にしよう。単純明快だしこれでいいだろう」

 名前も決まったところで次の武器。
 
 ダンジョン内で【融合】した『爆発する剣ボム・ソード』。
 あれの改良版だ。
 『銀の剣』に『火薬』を【合成】。
 そして【火力強化】を【付与】して完成。
 これも他の人が使えるように【専用化】は控えておこう。
 純粋に火力の上がった『爆発する剣ボム・ソード』。
 次回使うのが楽しみだ。

 さらにもう一本の『銀の剣』に【融合】を施していると、セリスが部屋へと入って来る。

「やってるな」

「ああ……そうだ、セリス」

「なんだ――って、何をしている!?」

 仮面姿のセリスのお腹に、先ほど完成した『銀の剣』で突き刺す・・・・
 深々と刺さった剣を見下ろし、セリスは驚嘆の声をあげる。

「お、お前……気でも狂った……って、痛くない?」

「ははは。これ面白いだろ? 名付けて、『癒しの剣ヒールソード』。剣と『回復ポーション』を掛け合わせてみたんだ」

 剣には優しい光が宿っており、これは斬った対象者の傷を治すというものだ。
 貫かれたセリスは驚きつつも呆れている様子。

「お前な……そういうことは先に言え。ビックリしただろ」

「悪い悪い。これをやるから許してくれ」

 俺は【複製】したコーラを彼女に手渡す。
 もう一本【複製】したコーラを、俺も口にする。

「うん……美味いな」

「だろ? でも急いで飲まないと消えるぞ。俺のスキルの効果は、手元を離れたら三十秒で消える」

「そうなのか?」

「ああ。後ついでに言っておくと、急いで飲んだ方がいいけど急いで飲まない方がいいぞ」

「?」

 俺が言うより速く、グビグビとコーラを飲み干すセリス。
 だがそこで、炭酸のきつさに気づいたらしく、むせだした。

「あー……悪い。もう少し早く言ったら良かったな」

「……私はもう飲まん」

 こんなに美味しいのに、のんびり飲ませてやれないのが玉に瑕。
 いや、コーラは悪くないんだけどね。

「それで、他の武器の様子はどうだ?」

「残りはこれからだ。俺の想像通りに完成したら、面白い武器になると思うぞ」

「面白さより実用性を優先しろよ」

「分かってる分かってる。セリスの役に立てるように良い物を作りますよ」

 なんて言ったが、面白さも大事であろう。
 なんというか、いたずら心とでもいうのか……実用性が大事なのも重々承知はしている。 
 しかし! 面白さと実用性を共存させ、良いバランスの武器を作るのが楽しいんじゃないか。
 
 『伸縮剣』も『癒しの剣ヒールソード』もそう。
 ただ強いだけじゃ面白くないし、虚をつくことはできないと思う。
 って、『癒しの剣ヒールソード』に虚は必要ないけれど。

 まぁとにかく、役立ちつつ面白い武器を生産するのが俺の楽しみなのだ。
 だから想像して楽しい物を作り、仲間の力になれる武器を創造するんだ。
 
 俺はワクワクしながら武器作りの手を再開させる。
 だがセリスはまるで、俺を監視するかのようにその作業を眺めていた。
 『癒しの剣ヒールソード』みたいな武器をまた作るとでも思っているのだろう。
 少しやりにくい気分ではあるが、まぁいいだろう。
 楽しく武器を作るとしようではないか。
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