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八月・ここまできたらだいたい一日イチャイチャしてる

8/17(日) 映画を見た後にスーパーに行ってアボカドとか買うこと

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 スーパーに行くと、先ず目に入る野菜コーナーにアボカドが安売りされていた。あまり見ない野菜、あるいは果実であるが、一体世間に何が起こっているのか。財布の紐が、そんなことはどうでもいい。
「まだ固いな」
 このように安売りされているものでは売れ切って少し爪を立てただけで手を汚すようなものであるという偏見が吸血鬼にはあったが、これはまだ熟しきっていないようだ。
「明日あたり食べるか。食べたことある?」
「ない」
「俺も」
 狩人は吸血鬼がそれを選ぶ際に掴みぎゅっと指で押し込んだ山の一番上の一つと、無作為に選んだもう一つを袋に入れて、買い物カゴに放り込む。卵型の硬い肌がちょっと凹んでいる。それ以上を買って食えるかはわからない。不味かったら失敗だ。とりあえずちょっとだけ、お試しで買ってみる。
 このスーパーではこういう珍しい食材には食べ方のポップが付いている。それによればアボカドに合わせて食うべきなのは刺身とか、トマトらしい。明日また買いに来よう、とポップをスマホでに写しておく。現代には斯様に便利なものがある。しかしどんなに便利なものでも、吸血鬼は写真には映らない。たとえレンズに指がかかったとしても、縁にかかる謎の靄でしかない。

 ひととおり必要な買い物を終えたので、おやつを見に行く。このあたりの帰るなり食器棚の下に仕舞われるおやつは、狩人の好奇心を満たすため珍しい味の新商品を試すか、もっぱら吸血鬼が雑に腹を膨らませたいとき用になっていた。
 リコリスのグミに手を伸ばす吸血鬼を、狩人は信じがたいものを見る目で見る。吸血鬼は未だかつて狩人のこのような顔を見たことが無かった。絶望とは案外傍にあるものだ。
「どうしてタイヤのグミを買おうとするの? 買わないよ」
「お前、リコリスキャンディ食べたことないの? 俺は無い」
 そう言ってグミをカゴに放り込もうとする手を、狩人は強めに掴んで止めた。
「なんで止める」
「食べたことがある。だから止めてる。きっと君はこれを不味いって言って全部僕に押し付けようとする。僕は食べたくない」
「なんでそんなこと言うの~。言わないし押し付けないから」
「君、前に買った変な味のヨーグルトは全部僕に押し付けただろ」
「そりゃその時だからだろ。今回は違う」
「今回は本当に嫌だ。買わない。見てわかるだろう、自転車のタイヤのゴムと同じ味だ。今すぐ戻して」
 ちょっと長めの攻防の後、唇をむっと尖らせて、吸血鬼は自転車のタイヤが描かれたパッケージを戻した。あまり飯に文句を言わない狩人がここまで言って止めるのなら本当に不味いのだろう。隙を見てまた買えばいい、と懲りずに吸血鬼は考える。まだこの売り場にリコリスのグミがあればの話だが。不味ければ民意がこれを置かないだろう。あまりに売れ残るようなら安売りされるかもしれない。それなら、ラッキーだ。
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