吸血鬼狩人、宿敵と同居する

せいいち

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十一月・飯のバリエーションを増やせ

11/5(水) 餃子の日

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「お帰り」
「何やってんの」
「餃子作ってる」
 狩人が学校から帰って来たとき、吸血鬼は言った通り見た通り、餃子の皮を包んでいた。
 市販の餃子にはニンニクが入っているものが多い。それならば自分で作ったほうが安心だ。吸血鬼の言い分はこうだった。
「たねのペース配分大丈夫?」
「大丈夫じゃないな」
 よく見たところ最初のほうは中身が少なすぎてワンタンのような形をしていたり、工夫を凝らして包んでやろうという気がありありと見て取れるお洒落な形をしていた。飽きてきて普通に包もうとした今は、ようやく適正量を詰められるようになったらしい。餃子の襞を作るのもうまくなっている。
「余った分は後でハンバーグにしてやる」
「そう……僕も手伝おうか」
「荷物置いて手洗って着替えてからな」
 狩人が餃子作りに参加した時点で、皮は残り三枚。楽しそうな様子を見る限り、後で手洗う手間が増えるんだからやめろよとも言えない。
「ぎゅうぎゅう詰めにしていい?」
「焼くのは俺だ、好きにしろよ」
 フェルトじゃないんだからそんなに伸びないんだよ。案の定尻から破って手のひらにたねをぶちまける。あーあ。
「……どうしよ」
「なんとか包んどけ。あとは俺がやる。食うなよ。生だぞ」
「……かぁっこいい」
 狩人は一枚包み損ねただけで手を洗いに行く。吸血鬼は残り二枚を包み、余ったたねは宣言通りハンバーグにするため丸めてこねる。明日の弁当箱に入るくらいの大きさだ。
 ピー、と炊飯器が自分の仕事を終えたと告げる。こちらもこれを焼いてしまわなければならない。吸血鬼は皿とボウルを抱えて立ちあがった。胡坐をかいていた足が痺れた。
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