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十一月・飯のバリエーションを増やせ

11/1(土) 義兄から電話がきた

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 狩人が風呂に入ってしばらく。吸血鬼は冷蔵庫に日々作り貯めている常備菜――吸血鬼が朝起きられなかったときに狩人が弁当箱に好きに詰められるようなおかずを作っているときのことだった。今日は玉子焼きを作っていた。冷蔵庫に入れて置けば明日まではもつ。余れば朝飯にすればいい。
 卵液の最後の一滴をフライパンに落としたと同じくらいに、理人の携帯電話が鳴った。最後の一巻きを終えてから火を止め、ちゃぶ台に置いてある携帯電話に表示された名前を見に行く。国際電話で、掛けて来た者の名前が表示されている。ルチエ・プリークネス――義兄上だ。
「はァい、もしもし」
『あれっ、……ああ、吸血鬼殿か。リヒトは?』
「今風呂入ってるよ。替わる?」
『いいや、君にも言っておきたい。歩きながら話してくれ。今年じゅう――いや、少なくとも三月までには、そちらに行こうと思っている。そろそろ風呂に着いただろ、電話を替わってくれ』
「一言じゃねえか……おい理人、電話だ」
 腕一本通る程度に開けた戸から携帯電話を引っ掴み、すぐにバタンと閉じる。戸の向こうからくぐもった声が聞こえるが、受話器の向こうの声までは聴けない。耳を付けてもうちょっと集中したいが、余熱で玉子焼きが焦げるといけない。吸血鬼はしぶしぶ風呂場の前から立ち去った。
「シャンジュ? 電話……いないのか……」
 電話を終えた狩人はドアを開け、誰もいない場所へ手を伸ばす破目になった。
 狩人はしぶしぶ、携帯電話を風呂前のマットの上に置いた。
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