吸血鬼狩人、宿敵と同居する

せいいち

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五月・足長おじさんと

5/27(火) 結婚式・プレリュード

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「今から結婚式場行くんだけど、一緒に来ない?」
「いいいや、おおお俺教会はちょっと……」
 彼がどういう意図で誘ったのかは聞かなかった。彼も吸血鬼らしく聖域を怖れるらしい。しかし狩人が行くのは、残念ながら教会とは性質が違う場所だ。
「教会じゃなくて、結婚式場だから。君も入っても問題ないと思うよ」
「ふん。結婚式場と教会と、何の違いがあるんだよ。どちらも誓いの場であることに違いあるまい」
 準備の時間が無い。続きは行きの電車内で話すことにした。
「教会は生活の場だ。生まれてから死ぬまでの、いろいろな境界を。式場には巨大ロボットが居るけど、教会にはいない。僕はこれを操縦しに行く」
 電車に乗った後、彼はカメラロールから一機のロボットと十数名の男女が映った写真を見せた。半球が乗ったような頭、つぶらな瞳、寸胴のボディ、ずんぐりむっくりの四肢。そして全体が薄青に塗られている。周りに整備士らしい若い男女が十一名並んで、若い男性九名は不器用な笑顔を浮かべている。何かの記念撮影だったようだ。
「マジ?」
「今日これが塗り直しと全体整備を兼ねて大学に里帰りするんだ。その前に乗せてもらう」
「なんで?」
「来週の月曜日、結婚式があるんだ。その予行演習」
「はあ」
 それはお前がロボットに乗る理由にはならんだろうが。吸血鬼は細かいことの理解を拒んだ。
「それで大学って……こいつもいるのか?」
「こいつって?」
「あの店員似の赤毛の女だ、このすぐ左隣にいる」
 確かに似た髪色の青年だ。よく見ればあの赤毛の店員と同じように後ろで三つ編みにしているが、一目見ただけではショートカットのように見える髪型をしている。吸血鬼は狩人の返答を待たず、思い出したように言った。
「そういえばあいつに妹がいるって言ってたな。克海がそこ経由であの店員と知り合ったと。その可能性はあるな。聞いてみるか」
「え、もう着くんだけど。直接聞いたほうが早いよ」
「マジか」
「次で降りるよ」
「まだかよ」
 それくらいの時間があればメッセージ一つくらい打てる。克海に[君の友達で赤彦さんの妹って君と同い年でロボットの研究してる?]と送る。返事はすぐは来ない。あれが真面目に授業を受けているとしたら、返事はしないはずだ。
 バスに乗り換え一キロメートルほど、結婚式場前とアナウンスされた駅で降りる。地方都市の高くとも一桁階建て程度の建物の間、広い空を遮るように、豪奢な建物がすぐ真横に見えた。信仰を形だけ真似た、絢爛な教会のような建物だ。
 吸血鬼の怖れる信仰は見当たらないが、必死で幸せな気配を振りまいている気色が良く見える。
 愉快だ。
 結婚式場には表門から堂々と入る。何も後ろめたいことは無い。
「失礼します。ミカジロさんとの打ち合わせで来ました、暁理人です」
「おお、理人! 元気そうで何よりだ」
 今日は式場の最後の打ち合わせをしているらしい。長い犬の背のような白髪、黒髪混じりと言ったほうがいいくらい白髪の多い男が振り返って言う。
「今日は彼らは連れていないんですね」
「ああ。今日は打合せだから、連れて来るなと言われてな。信頼できる人に留守番を頼んでいる。あそこは埃っぽいが庭は広いからね」
 錬金術師とは友達らしい。どういう知り合いなんだ。ミカジロと呼ばれた男が吸血鬼に目を向ける。
「それで、そっちが……」
「付き添いの吸血鬼だ」
「音に聞こえし彼か……」
「大丈夫です。こちらから噛みつかない限り、暴れたりはしません。僕が保証します」
「ああ……そうか。君も厄介な奴に絡まれたな」
「それは理人に言うべきじゃないか?」
 細かいことはいいのだ、と言ってミカジロは頭を振り、係員の案内と共に中庭に行く。
「なあ、これどういう状況? なんでこの男の結婚式でお前がロボットに乗る? どういう関係? 赤毛の女は?」
「ミカジロさんは義父さんの知り合いなんだ」
「ふーん。じゃああのお義兄様にはお鉢は回って来ないわけ?」
「式には参加する予定のようだが、むろん打ち合わせには来ないぞ。地球の裏側にいる人を結婚式程度で呼び立てするわけにはいかんからな」
「先月日本に来てたはずだけど、ご挨拶とかしなかったの?」
「なにッ、あのせがれめ……ま、過ぎたことを恨んでも仕方がないか」
 ミカジロは明るいというか、能天気っぽい性格だ。
「っていうかさ。子供を働かせていいわけ? 式やるの平日なんだろ? こいつ学校あるぜ」
「いいんだよ。僕は。休むって言ってあるし」
「それは違う!」
 ミカジロが強く否定しようとするが、だんだんと語気が弱まっていく。
「いいわけはない。だが働かせているのは事実であるし、そうではあるのだけど、理人はあの暁の奴よりこの仕事には向いているし、出来ることなら手伝ってほしいというか、これは理人にしか出来んことではないけど、結婚式には出てほしいというか……ごめんなさいという他言葉が無いな」
「ミカジロさんを困らせないで。僕がやるって言ったんだから」
「引き受けてくれるのは本当に助かるのだけれど、困るのはそういうところでござるよ……」
 彼は常識的な大人であろうとしているらしい。全くできていないが。
「結婚式って、一人でやるのか? それとも犬と?」
「いいや、人間の女性とだ」
「ミカジロさん、結婚するつもりはないって言ってたのに。ちゃっかりものなんだ」
「いや。好きで結婚するわけではないというか。まあ……逃げ切るつもりが幸せの形に追い込まれてしまったのだ。おれもこれで年貢の納め時というわけだな。因縁に決着も付けたいことだし」
「因縁?」
 御多分に漏れず、奇妙な名前の彼も何やらきな臭いものを抱えているらしい。
「だからこそここを選んだ。ここは場が良く、いくら荒らしても問題がないと言ってくれた。どれだけぶっ壊れるかわからんが、まあ一日二日もあれば元に戻せる。彼をおびき寄せ、仕留めるチャンスだ。晴れ舞台を楽しみにしている妻には悪いが、ここを奴の最期にさせてもらう」
「お前の妻は気の毒だ」
「おれに首輪を付けた女だ。そう簡単には折れないし、何ならおれよりもキレるかもしれない。その処理も……いやまあこれは冗談だが」
「今日は彼女はいないのか?」
「せっかくこちらに来たのだから、観光している」
「この地方都市に見る所があるんですか!?」
「住んでいるところの悪口はやめろ。土地がキレるぞ。話を戻そう」
 話を振ったのは吸血鬼だが、妻になる人の話しかしていない。
「角目! あと頼むわ!」
 係員と思しき男が中庭に声をかけ、後は彼女に聞いて、私は事務所のほうにいるからなんかあったら声かけて、と言って引っ込む。
「はーい、こっちでーす!」
 開け放した首のコックピットハッチから、半球型の黄色いヘルメットを被った快活そうな赤毛の女が手を振っている。写真で見たのと同じ、どこぞの団体の所属証らしいTシャツを着ている。
 乗ったまま二足歩行のロボットがモチモチしたシルエットには似つかわしくない足音を立てて、彼ら三人の目の前に来る。
「こちらの式場でアルバイトをしてます、角目といいます。今日はえっと、どちらが運転する予定で?」
「はい、私です」
「マニュアルは読む派ですか?」
「あれば欲しいです」
「一日で一通り動かせるようになって貰いますので、さっさか行きましょう。乗ってください。そちらのお二方は下がって」
 モチモチロボットがしゃがんでタラップを出す。角目妹が狩人に昇って来いとハンドサインをする。狩人に席を譲り、早速指示を出して立ち上がり、歩かせる。
「コックピット内でよっぽど下手な体重移動しない限りは倒れたりしないです」
「これシートベルト無いんですね、危なくないですか」
「ヘルメット付けてコックピット閉めて、まともに乗っていればケガすることはありませんよ。でっかい地震とか来たらちょっと危ないですが、最近は全然来ませんので。関節は見ての通り外からは隠されてますし、わざわざ指を差し出すような間抜けは今まで居ませんでしたから」
 下にいる二人からはちょっと遠くからなのであまり聞こえていないが、聞こえる限りでは案外きついことを言っている。
「ここが開閉稈ですが、今は使わないでください。立ちながらコックピットを閉めると、一応安全弁はありますが首が飛ぶものだと思ってください。火災時の緊急脱出機構などは備わってないので、そこは気を付けてください。ここに一応消火器があるんで、もしもの時はこれを使ってください。脚に付けられたスチーマーは所詮飾り用なので消化の機能はありません」
「スチーマーとは?」
「ブシュ―ッてなる霧みたいなあれです。ここのスイッチで出ます。ポチッとな」
 ロボットの太ももあたりから霧のようなものが出た。中庭が少し涼しくなった気がする。
 コックピットを開け放した状態のまま操縦方法を教わる狩人を尻目に、吸血鬼は中庭の見物をするミカジロについていくことにした。彼も年頃の少年であるため巨大ロボットにはワクワクドキドキを隠せないが、さすがにあの上に三人は乗れそうにない。言ってみるだけ言ってみてもいいかもしれない。
「なあ、ミカジロ殿。あんたが抱えている因縁ってなんだ」
「おれはある鬼につけられていてな。十三年前、理人の母親の話はもう彼から聞いたか?」
「ああー……聞いたよ」
 なんとなく察しはつく。吸血鬼自身もだいたいそのくらいに実家を出た。俺たちは運命の双子だ、似たような時期に人生の大イベントが起こっていても不思議じゃない。
「その理人の母親の仇の、伴侶というべき鬼だ。十三年前に奴を仕留めたプリークネスの男は海を渡って故郷に帰ったし、もう一人のレジャー殿は吸血鬼狩人としては再起不能の状態であるし。おれは最後の生き残りというわけだ。だから狙われている。それを押しておれと結婚をしようというのだから、真実剛毅な女よな」
「あんたべた惚れだな?」
「ああ、そのようだ」
 何を話してもべた惚れになった女の話に持っていかれる。理人とは古い知り合いみたいだし、どんな人間とも仲良くなっておいて損はない。
「ところでおれは君の話が聞きたいな。あ奴の運命の宿敵なのだろう? 出来ることならどういうきっかけがあって仲良くなったのだ?」
「仲良くはなってないな。あっちが俺のこと好きなだけ」
「ほう。未だに命を狙っていると? それならば……」
「俺は仲良くしたくないとは言ってないだろ? 向こうは俺の命を未だに狙ってるみたいだし。俺は仲良くしたいの」
「……?」
 振り返って、吸血鬼のほうに顔を向けた。ミカジロは理解できないものを見る表情をしている。この矛盾が気になったらしい。可愛い人間だ。
「好きなのに、命を狙っていると? それは……きみの解釈であるのだろう? そうなのか?」
「どう考えてるかは本人に直接聞けよ。使命と感情の狭間で揺れているんだろうよ。可愛いだろ?」
「……なるほどぉ?」
 ミカジロは高い庭木に目をやった。わからないものをわからないまま納得しようという口調だ。大きな疑問符を抱えたミカジロに、吸血鬼は継いで聞く。
「なあミカジロ殿、あんた理人とは仲良いのか?」
「遠い親戚という感じかな。似たタイプの人間関係がないのでわからぬが、不思議な縁でござるよ」
「今ござるって言った?」
「間違えた」
 何を間違えたのだか知らないが、かなり面白い人であるらしい。
「そういえば、今日は何故ついてきたのだ?」
「今日に限って、理人についてくるかって聞かれたんだよ」
「そして、君は素直についてきたと」
「巨大ロボットがあるんだろ? わくわくするじゃねえか」
「この世の中にそうありふれたものではないからな、あれは。最先端の技術を以て作られたものがこんな場所で働くとは、夢の無い話ではあるが……」
 素晴らしき工学の子、武器を持たぬ鉄の城。アニメに登場するような破壊兵器ではない、単なる祝福のための道具。それらしい穏やかな色合い、可愛らしい丸いシルエット。
「平和でいい」
「おう、真実その通り」
 一通り見回り終えて、昼になったのでミカジロは飯を食いに帰るらしい。二時間ほどぶっ続けで操縦し続けていた彼らも、休憩をとると控室に戻った。
 狩人の特訓は今日の三時までは続けられるらしい。それまで吸血鬼は、彼が操縦する機体を指をくわえて見ていることになった。
 まったくなんでこんなところに呼んだんだか。俺がここに来る必要は別に無いだろう? あの白髪のやんちゃなおじさまと顔見知りにさせるため? それならもっと別に機会を設けたって……いや、あんまり暇そうじゃない人だし。知り合う機会なんて無くったって良かった。
 ふと携帯電話を見ると魚継から連絡があることに気が付いた。昼休み中にメッセージを送って来たらしい。だとするとあの角目妹は一日授業をサボったのか。それともこれに行けば授業をサボってもいいのか。
[そうですよ]
[今日一日ロボットの整備に出てるらしいですよ]
 向こうはなんでそんなこと聞くんだろ、と思っていることだろう。[結婚式場に行ったら会ったわ]と書いて送り、疑問に答えてやる。
 すぐに返事が来た。[結婚するんですか!?][誰と!?]だと。ああどういう用事か書いてなかったわと思い出して[俺は結婚しない][理人の付き添いで来た]と書き送る。遠くの人とこう一瞬でやり取りできるのは便利だ。そういえばミカジロ殿とも連絡先の交換をしたし、理人の昔話を聞いてもいいかもしれない。
 それにしても授業はどうした。魚継は暇なのか。[理人さんはどういう精神状態で結婚式場の下見を?][宿敵を差し置いて誰と結婚するんですか?]こっちが聞きたいよ。なんで俺が出て来るんだよ。[下見ではない][結婚はしない][知り合いの打ち合わせに呼ばれたんだと][なんで俺も付いてくることになったかは謎][いや嘘。ロボットがあるって聞いたからついてっちゃった]と送る。魚継から[わかる][ロボはロマン]というアニメのスタンプが来た。どうしてこんな狭すぎる状況に則したスタンプがあるのかよ。スタンプの詳細を調べると、どうやら巨大ロボット競技もののホビーアニメらしい。なるほど、オタクの間でだけは汎用性があるのかもしれない。
 ともかく、スタンプが来たということは会話はお仕舞いにしたいらしい。無限に会話を繋げたいタイプの女だが、授業中にもかかわらずメッセージに応えてくれたということか。なんて奴だ。真面目に授業出ろよ。吸血鬼は携帯電話をコートのポケットに仕舞った。
 顔を上げると日の光が強く目を刺す。まだ狩人はロボットに乗っていて、こちらに歩いてくる。くっそー自分ばっかり楽しそうにしやがって。こっちに手を振るんじゃないよ。
「シャンジュ! 最後、一緒に乗っていいって!」
 彼の狙いはこれだったらしい。この瞬間のために、わざわざ昼間の殆どの時間を使って、吸血鬼を連れ出したというわけだ。吸血鬼は呆れて微笑み、常に日陰に隠れたベンチから立った。
 ロボットが膝を折り、タラップが出る。角目アルバイト搭乗員はそれを使わずに飛び降りる。
「座席の背もたれに捕まって、危ないのであんまりじたばたしないようにしてください」
「このロボットの名前、何て言うの?」
「ゴッドスピードユー、略してユウって呼ばれてます」
「OK、クソったれ。ありがとう」
 ド直球で祝福らしい名前だ。誰が付けたんだか、誰もこの名前以外に良い名前を思いつかなかったらしい。
 タラップをよじ登る。四メートルの機体は思っていたより高く、吸血鬼は高所恐怖症ではないはずなのに、不安定な視座に身震いさえして背もたれにしがみついた。自分で飛んでいたらこうはならない。日もあるし、もし転んだら、すぐには変身できないかもしれない。
「掴まった?」
「うん」
 ロボットが立ち上がる。駆動音は下で聞いた印象よりも静かで、可愛くないがロボットらしい音を立てている。不安定な足場に背もたれに顔を寄せ、髪を撫でる慣れない高さの風に震える。
「どう?」
「話しかけるな、気が散る」
「運転してるの、僕のはずなんだけどなあ」
 非正規搭乗員二人を乗せたロボットは中庭内を一回り遊覧歩行して、再びしゃがみ込んだ。
「……」
「大丈夫ですか?」
 巨大ロボットが吸血鬼が思っていたより楽しいものではなかった。子鹿のような震える足でタラップを降りる。名前が悪いんだ名前が、とぶつくさ言いながら。技術、聖なるもの。それを無邪気に信じる人間ども。全て苦手だ。
「やっぱコックピットハッチ閉めといたほうが良かったんじゃないですか?」
「あれ閉じてよかったんですか?」
「狭いですけど、後ろがしゃがんでいれば閉じられるので……いや、狭いし揺れるのが怖いならむしろ開けといて良かったかもしれませんね」
「怖くない!」
「ええ……」
 明らかに怖そうな感じしてたでしょ、と言いたげな顔をしている。それを言わないのは生の二年の差が生んだものか。
「ところでさっき魚継、喫茶ソロモンってところでアルバイトしてる友達から連絡があったんですが、知り合いだったんですか?」
「そうだよ。なんて言ってた?」
「あー、そっちに理人さんとシャンジュさんがいる? って。知り合いだったんですね」
「そうだよ。世間って狭いよね」
 角目に送られてきた本文は[そっちにゴス系美少年とグリフィス似の分厚い男来てない!?][バ先の常連なんだけどその人たち何しに来たか教えて!!][後生にござる!!]である。角目はこれを文字通り読み上げてしまえるほど、初対面の相手に押し付ける情報量を見誤ってはいない。似ているといわれたものにも似ていないと思っていた。魚継とは友人だが、感性までは似ていない。
「血吸わせてくれない? 喫茶店で働いてるお兄さんと会ったんだけど吸わせてくれなくってさ」
「嫌です! 痛いの嫌なんで」
「大丈夫だいじょうぶ、蚊が刺したくらいにしか感じないから」
「痒いのも嫌です! 感染症とか怖いし」
 予定していた時間より少し早く、モチモチロボットを回収するトラックが来た。人間が歩くより遅いものが公道を歩いて行くわけにはいかない。今日はこれでお開きだ。
「それでは、今日はお疲れ様でした」
「こちらこそ、今日はありがとうございました」
 モチモチロボットはうまくトラックの荷台に収まって、ロープで巻かれて連れ去られていった。
「帰ろう」
「うん」
 吸血鬼は特に何もしていないのに、やたらとくたびれた声を上げた。
「飯さ、今日は外に食いに行かね?」
「いいね。どこ行く?」
 大通りを真っ直ぐ行き、大学生のたまり場らしいファミレスチェーン店に入り、早めの夕食をとった。
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