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第1話
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春の緑は多彩だ。
濃淡さまざまにまだ芽吹きを待つ枝々のその隙間がより陽光を複雑に映しながら、穏やかな風に揺れる。
初夏にはそれらは一斉に葉を開きその隙間を埋める。
しかし白や紫のマメ科の花やら、あかい実、あおい実の丸みを帯びた重たそうな質感が、これまた目を楽しませてくれる。
風は少し強く、そのなかであちこちに揺れている。
盛夏。
いよいよ似たような緑一色に染まった山は、目を凝らさないとその差異を認め難いくらいに同じに見える。
近づいてよく見ると強い日差しに焼かれ、枯れた白かった花、あおかった葉。
それらが少しくすんだ緑の中に。
僕らは緑を楽しむ事を諦め、より遠景にコントラストを探す。
青い空に白い雲、そして緑の山。
毎年この時期になると僕はチッチに会いに行く。
森の中。
虻が飛び交い高温多湿を極めた不快そのものなそこで、彼女は僕を待っている。
いや、僕を待ってるわけではないのかもしれない。
それでも僕は会いにいく。
会わなきゃいけない。
彼女はこの時期から秋の終わり頃までそこに居る。
正確には僕の行くところに顔を出す。
けれど僕が彼女を狂おしく求め、さまざまな不都合を圧して求めるのはこの時期だけだ。
求められるから求める。
恋とはそういうものではなかろうか?
そして、みんなにそれぞれ都合がある。
僕は秋の間忙しいのである。
濃淡さまざまにまだ芽吹きを待つ枝々のその隙間がより陽光を複雑に映しながら、穏やかな風に揺れる。
初夏にはそれらは一斉に葉を開きその隙間を埋める。
しかし白や紫のマメ科の花やら、あかい実、あおい実の丸みを帯びた重たそうな質感が、これまた目を楽しませてくれる。
風は少し強く、そのなかであちこちに揺れている。
盛夏。
いよいよ似たような緑一色に染まった山は、目を凝らさないとその差異を認め難いくらいに同じに見える。
近づいてよく見ると強い日差しに焼かれ、枯れた白かった花、あおかった葉。
それらが少しくすんだ緑の中に。
僕らは緑を楽しむ事を諦め、より遠景にコントラストを探す。
青い空に白い雲、そして緑の山。
毎年この時期になると僕はチッチに会いに行く。
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いや、僕を待ってるわけではないのかもしれない。
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会わなきゃいけない。
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けれど僕が彼女を狂おしく求め、さまざまな不都合を圧して求めるのはこの時期だけだ。
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僕は秋の間忙しいのである。
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