えのきたけ

第５話

　散々だった。
　初めての相手。
「入れた？」
　コンドームがぶかぶか。
　彼女がピル飲んでくれたり。
　それでも満足させられず、やがて他の男へ。
　先輩に連れられて行った風俗では
「長っ！」
「細いから長く見えるだけなんだよ。最大勃起時で13.5cm。日本人の平均だね」
「………。」
　中学生の頃読んだ親父のエロ小説。
「坊や、耳掻きよ。綿棒突っ込まれて乱暴にされるのと、耳掻きで痒いとこほじくってもらうの、どっちが気持ち良いと思って？」
　それを心の支えにタテ・ヨコ・ナナメ、丸書いてちょん。
　めたくそに腰を駆使しても、誰も満足させられなかった。
　松さんに出会うまでは。
　酔ったはずみでホテル。
「きゃはー、エノキくんの、マジエノキタケうける！」
　落涙。
　そんな僕を抱きしめて「ごめんなさい、わたし、ほんとはおっきいの怖いんだ」
　幼い頃ジャングルジムで股間を強打したトラウマ。
　彼女も泣きながら。
「だからわたし、まだ処女なの。ほんとだよ。エノキくんのエノキタケなら、怖くない。わたしを女にしてちょうだい。お金なら払うよ。男たちから巻き上げたお金がいっぱいあるんだ。おっぱいもあるよ」
　自慢のGカップの先の、ガチガチに勃った乳首を僕の唇にペシペシしながら。
「わたし、オナニーではイケるんだ。だからセックスはもっと気持ち良い筈よ。お願いします。」
　なんだこの女、と思ったけど、ちんぽも勃ってたし、挿れてみた。
　最初はお互いダメだった。
　しかしそれから、性にコンプレックスを抱く２人は、ストイックに修練を続けた。
　付きあっていたのだろうか？
　時に酔っぱらってお互いを罵倒し、時に綿密な会議の末の試行錯誤。
　僕らに「快楽」の文字は遠く、どちらか挫けそうな時には励まし合い、遂に僕らは究極の性技を会得した。