上 下
28 / 31

そして、日常に戻れなくなった少女は…

しおりを挟む
ドレドレみそみそヤ○ト味噌~♪と何処の国のなんだか調子っぱずれな歌を口遊みながら、『ジャニアリィ』は慣れた感じで冒険者ギルドの扉を開けた。

「あれぇ、ジャニさんじゃありませんかあ~」

ギルド職員の制服を着た若い受付嬢が仕事中にも拘らず、最近評価がうなぎ登りの『少年』に弾んだ声を掛けた。

「アーニャ、仕事しろよ。そこの兄さんが困ってんだろ」
「え…だって~、声を掛けなきゃジャニさん別の子の受付卓に行っちゃうじゃないですか~」
「当たり前だろ。大体、あんた人気有り過ぎ。その列並んでたら俺が仕事にありつけるのが夜中になっちまうわ。俺は野郎に人気無くても目の前の俺だけを相手してくれるカワイイ達がいいの」

事もなげに言ってのける『彼』の男前発言にアーニャ含めた受付嬢全員の目がハート型になってピンクに輝いている。
本人は男達の恨みがましい視線をものともせずに、さっさと大依頼板からソロで回れそうな物を数枚取って受付済ませて出て行ってしまう。

「ははは、『男』って楽しいなー!」

まあ『師匠』程振り切れて無いがな。しょうがない。だって、『ジャニさん』の男じゃないんだも。











「T・S・転・生、キタコレ───────‼︎」








【西田睦月】改め、【ジャニアリィ・ブレイヴ】はカラカラと高笑いすると両の腕を思いっきり振り上げた。
その胸部に本来なら有る筈の膨らみは、既に無い。
ついでに下の方にも工事した訳でも無いのにせいてんかんしゅじゅつ第三のアシが生えている。

「いやあ、慣れるまでバランス取れねえでやんの…。パンツの右に納めるか左に納めるかいまだに決まんねえ時あるし」

地球丸ごと浄化しても未だ余りある己の強大な【力】に気がついた時、睦月が思ったのは先ず『如何にしてあの男ディグノを欺くか?』という事のみだった。
幾ら何でもあの女好きに男はイケねぇだろ、と咄嗟に思い付き、勇者級ならではのスキル【新陳代謝過剰解放キープロンダリング】に遺伝子に干渉できる【外装突貫変身メモタルフォーゼ】を重ねて、己の身を一から造り変えた。
オマケで身体を左右対象・黄金率で仕上げ、どうにかソツのない美形に成り済ましている。

コレを一瞬で熟し、別人として己に付けられたディグノのマーカーを辿り『界』を渡った。

「…流石にあたしがここに戻るとは思いもしないでしょうよ、師匠ディグも」

あのバルサロッサさえ気付かなかった。姿
五年で慣れた城下町を、今は元・孤児の『C級冒険者』として堂々と闊歩する。
定宿もある。仕事もある。もう少し金が貯まったら、旅をしながら終の住処を探しに行こうか、と考えて…


「おー、ジャニー。依頼受けたんか?今から行くのか?いつ頃帰るんだ?手伝おうか?」
「…俺はそのどれから答えりゃあいいんだよ?あ?《火蜥蜴グレン》さんよ。因みに手伝いは要らん。タダより高いモンは無いからな…」
「いい加減、俺と逢背パーティ組もうぜぇ?そうすればそっちも高レベルの依頼も受けれるし、不測の事態には俺がキッチリ介助も片手間に熟してやるから駆け出しのお前さんにこんなイイ話も無いだろーよ。なあ、この俺が久々に誰かと組みたいなんて思うなんて衝撃的な出来事なんだぜぇ~」

いきなり現れたディグノの知り合いは戯れるように睦月に付き纏い、無理矢理に肩を組んでくる。睦月はアッパーカットの要領でグレンのアゴを軽く連続で下から小突いた。

「うるせぇ、A級のお遊びに付き合ってるヒマはねぇんだよ!俺みてぇな孤児はその日その日を食ってくのに必死なんだ。大体、何が楽しくて格下の小僧でしかない俺にそう構ってくるんだ?ほんとアンタ会う度会う度しつこいんだよ。俺は単独ソロしかやんねぇのッ!良い加減分かって‼︎そしてそろそろ上級に逆らう下っ端の気持ちを慮って!小生意気な態度が実は小心な俺の精一杯遠回しなお断り的な譲れない形式ポーズだって分かっててニヤニヤすんなあ─────っ!」
 「あはははは( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽカーワーイーイー‼︎いっそ諦めろォ俺は一度こうと決めたら牙狼ファング並に食らい付いて離さん!」
「ヤメロ、何を口説いてんだ炎熱の二つ名持ちが!むしろ勢いはそのまま女に向けて光の速さで嫁を貰え‼︎そもそも俺は遥かなる高みなんぞ目指してないんだよ!何度言ったら理解すんだ、この脳筋がッ‼︎はーなーせーぇっ!」

そんなハートフルなやり取りをハスキーな掠れ声がいきなり遮った。





「そうよう────────その子は『五年も前』から私のお手付きなんだから」






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

寝取られて裏切った恋人への復讐

音の中
恋愛
【あらすじ】 彼との出会いは中学2年生のクラス替え。 席が隣同士だったのがきっかけでお話をするようになったんだよね。 彼とはドラマ鑑賞という共通の趣味があった。 いつも前日に見たドラマの感想を話していたのが懐かしいな。 それから徐々に仲良くなって付き合えた時は本当に嬉しかったよ。 この幸せはずっと続く。 その時はそう信じて疑わなかったな、あの日までは。 【注意】 ・人を不快にさせる小説だと思います。 ・けど小説を書いてると、意外と不快にならないかも?という感覚になり麻痺してしまいます。 ・素読みしてみたら作者のくせに思った以上にダメージくらいました。(公開して3日目の感想) ・私がこの小説を読んでたら多分作者に怒りを覚えます。 ・ラブコメパートが半分を占めます。 ・エロい表現もあります。 ・ざまぁはありますが、殺したり、人格を壊して精神病棟行きなどの過激なものではありません。 ・された側視点ではハッピーエンドになります。 ・復讐が駆け足だと感じちゃうかも…… ・この小説はこの間初めて読んでみたNTR漫画にムカついたので書きました。 ・プロットもほぼない状態で、怒りに任せて殴り書きした感じです。 ・だからおかしいところが散見するかも……。 ・とりあえず私はもうNTR漫画とか読むことはないでしょう……。 【更新について】 ・1日2回投稿します ・初回を除き、『7時』『17時』に公開します ※この小説は書き終えているのでエタることはありません。 ※逆に言うと、コメントで要望があっても答えられない可能性がとても高いです。

憧れの童顔巨乳家庭教師といちゃいちゃラブラブにセックスするのは最高に気持ちいい

suna
恋愛
僕の家庭教師は完璧なひとだ。 かわいいと美しいだったらかわいい寄り。 美女か美少女だったら美少女寄り。 明るく元気と知的で真面目だったら後者。 お嬢様という言葉が彼女以上に似合う人間を僕はこれまて見たことがないような女性。 そのうえ、服の上からでもわかる圧倒的な巨乳。 そんな憧れの家庭教師・・・遠野栞といちゃいちゃラブラブにセックスをするだけの話。 ヒロインは丁寧語・敬語、年上家庭教師、お嬢様、ドMなどの属性・要素があります。

とりあえず、後ろから

ZigZag
恋愛
ほぼ、アレの描写しかないアダルト小説です。お察しください。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話

神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。 つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。 歪んだ愛と実らぬ恋の衝突 ノクターンノベルズにもある ☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

トリップ系ヒロインを推しの側から見た話

下菊みこと
恋愛
クーデレな推しくんが、ヤンデレに変わるお話。 ご都合主義の…ハッピーエンド?メリバ? 小説家になろう様でも投稿しています。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...