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今更、普通の女の子って草生える⑥
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⑥
罠は私の未練を糧に自動で展開し続ける。未練も後悔も恋情も木っ端微塵に吹っ飛ばす様に。
「異界の勇者が異界の神に請い奉るその身の【力】を尽くして【この星を浄化を】」
大きく力を練り上げ、反動で私は内から発光し続け融け始める。
「やめろ、ヤメろ、ヤメロ───────やめろォオオオオオオオ─────ッ‼︎」
ああ、師匠。あの時と同じだね。貴方が必死にそうしてくれる度にこの醜い自尊心がほくそ笑む。満足の吐息をそっと漏らすんだ。だから、私は、絶対に捕まらない。
「俺を、おいて、逝くな!睦月ぃいいいいいっ‼︎」
微笑む私の中の、強大な力が容赦なく引き摺り出されて、星に埋められるだけの不要な人工の汚物が、自然物と分離して強大な柱となり太陽に飲み込まれ、一瞬でフレアに呑み込まれる。
そして、私の輪郭が、完全に《融けた》。
ふと、両親はそれぞれの夜に空を見上げた。
特に母親は睦月が産まれた日の事が思い出されてならなかった。
優秀で見目の良い上と下に挟まれていつも卑屈だった娘が笑わなくなったのはいつからだったろう。いつか、時間が取れたら、『お前も大事な私達の娘なんだ』と伝えよう。それが今では『あの子ももう子供じゃないんだから、親子なんだし私達の気持ちぐらい分かるだろう。もっと大人になれば、きっと。そう、時間はまだまだあるんだから』と言い訳して、時間が無限だなど誰にも保証など出来はしないといいうのに。
「ムツ姉?」
何も無い空間を卯月は振り仰ぐ。
当然帰って来る筈の無いそこから、振って湧く光の粒子が、『あの姉』なのだと何故か分かった。
『おお、うづ。今生の別れを言いに来たぞヨ』
卯月の形の良い眉が寄った。
「…相変わらずふざけた姉よね。やっと性格くらいマシになったかと思ったら、ナニ死ぬ時も勝手なの?世界に自分しかいないとでも思ってんの?…お兄ちゃんとかの同情引こうとか考えてそう。死ぬならひっそり死ねよ、この陰キャが」
黒い空気を纏いながら、吐き捨てるその姿に何故か力が、ない。
『ははは、辛辣ぅ。最後くらい仲良く出来ないかと思ったけどね、ムリか。ふふ、ならせめて忘れられない疑問でも投げ掛けて逝こうか』
光が、明滅して、消えていく。
『お前に関わりの無いこの姉が何でそんなに、憎いんだい?』
答えを待たずに消えてゆく、光の粒が。
消えぬ心の、深い処をすっぱりと鮮やかに斬り付けていった。
罠は私の未練を糧に自動で展開し続ける。未練も後悔も恋情も木っ端微塵に吹っ飛ばす様に。
「異界の勇者が異界の神に請い奉るその身の【力】を尽くして【この星を浄化を】」
大きく力を練り上げ、反動で私は内から発光し続け融け始める。
「やめろ、ヤメろ、ヤメロ───────やめろォオオオオオオオ─────ッ‼︎」
ああ、師匠。あの時と同じだね。貴方が必死にそうしてくれる度にこの醜い自尊心がほくそ笑む。満足の吐息をそっと漏らすんだ。だから、私は、絶対に捕まらない。
「俺を、おいて、逝くな!睦月ぃいいいいいっ‼︎」
微笑む私の中の、強大な力が容赦なく引き摺り出されて、星に埋められるだけの不要な人工の汚物が、自然物と分離して強大な柱となり太陽に飲み込まれ、一瞬でフレアに呑み込まれる。
そして、私の輪郭が、完全に《融けた》。
ふと、両親はそれぞれの夜に空を見上げた。
特に母親は睦月が産まれた日の事が思い出されてならなかった。
優秀で見目の良い上と下に挟まれていつも卑屈だった娘が笑わなくなったのはいつからだったろう。いつか、時間が取れたら、『お前も大事な私達の娘なんだ』と伝えよう。それが今では『あの子ももう子供じゃないんだから、親子なんだし私達の気持ちぐらい分かるだろう。もっと大人になれば、きっと。そう、時間はまだまだあるんだから』と言い訳して、時間が無限だなど誰にも保証など出来はしないといいうのに。
「ムツ姉?」
何も無い空間を卯月は振り仰ぐ。
当然帰って来る筈の無いそこから、振って湧く光の粒子が、『あの姉』なのだと何故か分かった。
『おお、うづ。今生の別れを言いに来たぞヨ』
卯月の形の良い眉が寄った。
「…相変わらずふざけた姉よね。やっと性格くらいマシになったかと思ったら、ナニ死ぬ時も勝手なの?世界に自分しかいないとでも思ってんの?…お兄ちゃんとかの同情引こうとか考えてそう。死ぬならひっそり死ねよ、この陰キャが」
黒い空気を纏いながら、吐き捨てるその姿に何故か力が、ない。
『ははは、辛辣ぅ。最後くらい仲良く出来ないかと思ったけどね、ムリか。ふふ、ならせめて忘れられない疑問でも投げ掛けて逝こうか』
光が、明滅して、消えていく。
『お前に関わりの無いこの姉が何でそんなに、憎いんだい?』
答えを待たずに消えてゆく、光の粒が。
消えぬ心の、深い処をすっぱりと鮮やかに斬り付けていった。
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