今更、日常に戻れる気がしない

葉室ゆうか

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今更、普通の女の子って草生える④

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一瞬、この世のモノとも思えない形相を浮かべたであろう私は、取り敢えず芽衣子たんの腕を彼女の方に放り投げ───────



「理を曲げよ、界渡り。『回収せよリターン、紡げよ筋繊維ムスケル』」



ディグノはこてん、と小首を傾げ、
「なぁんでお前を殺そうとしたピグ(豚的な家畜)をワザワザ【力】を使ってまでたすけるんだ?失血死させてやりゃあいいのに」
と、不思議そうな顔をして言い放った。

光を帯びたJKの腕と肩が互いに引き合い、切断面から伸びた筋繊維が縒り合い繋がり元の腕に

「師匠なら分かるでしょうがっ!私は。ましてやこんな後先考えない感情優先の動物になんか油断する筈も無いわ!」
「───────ひ、酷…」
「煩え、黙れ動物。動物で悪けりゃ左脳欠損生物なまものだ。分からんのか?オマエのお花畑なオツムではアレが同じ世界と同じ常識を共有する単なるイケメンに見えるのか?そのほっそい腕を剣の衝撃波一発で切断し、同時に吹っ飛ばしたのは誰なのか、本当に分からないのか?」

ばーかばーかばーか、と視線を彼に固定したまま、後ろ手に追い払おうと二・三度軽く振る。

「ほーら、見ろムツキ。今までお前を殺そうと、害しようとしていたバカ女がお前の後ろで腰を抜かしてションベン漏らしてるぜ?汚ったねえなあ。そいで恥知らずにもお前に助けを求めてるんだから始末に負えないよなー。ほらほら、サクッと汚物は片付けて俺と行こう。な?」

とんとん、と細身の剣をまるで孫の手に付いたゴルフボールの様に扱って肩を叩く。

そうか、腰を抜かして漏らしてるのか。

それを聞いた私は一瞬だけ気合を入れて、術を紡ぐ。



「強度金剛石ダイヤモンドクラスに展開。我が周囲と我が身を守れ【全方位防御イージス】」



不可視の盾に包まれた私がまずやったのは、



《パシャパシャパシャパシャ》



スマホのカメラを後ろに向けて、芽衣子たんのあられもない姿を激写する事だった。



「えええええええ──────っ⁉︎」
「……中々のオニ、だな」
「ほほほほほほほ──────っ‼︎」



恐怖を凌駕したJKの驚愕の叫びと感心したイケメンの吐息めいた呟きと、私の高らかな哄笑がこの世の青空に響き渡っていく。



「さてと、師匠?いい加減諦めてくれませんか?もう《切った張った》はウンザリなんですよ。普通の女の子は勉学と面映い恋愛に励むモノなんで」


次々に破られる全方位防御イージスを何重にも展開して、私は微笑んだ。
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