今更、日常に戻れる気がしない

葉室ゆうか

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今更、惚れたとか手遅れな気がする❾

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「あ、ちょちょっと待て、待てって地味女ちゃん!」
「逃げんなよー」「行かないで~⁉︎」

あっという間にどう見てもヘンタイの集団に取り囲まれて、恐怖よりも嫌さを前面に出す睦月であった。
彼等が触れられさえしない事は分かっていても、どこからどう見ても怪しいマスクマン達に囲まれたい女が何処の世界に居るだろうか?

「何なの?そんなフルフェイスタイプのにわかプロレスファンコレ披露だか身元を隠そうと浅知恵を働かせた馬鹿の集団なんだか知らないけど、調子に乗った挙げ句ウケを狙ったのか金欠でおそらく母ちゃんの物であろうパンツを被ったのかの二択の末に推定変態仮面になった友達をハブりもせずに注意に留めるだけで結果つるんでる、どこからどう見ても怪しさ爆裂の輩なんかにこれっぽっちも関わりたくないんですケド」

「……」「……」「……」「……」
「平たく言うと『どっか行けや』」

立て板に水、とばかりにまくし立てた睦月はドン引きの様相をかくさなかった。

「あー。毒舌ゥ~、痺れちゃうー」「クチ悪いな~、それ恐怖隠し?」「まあ、突っ込まれ終わる頃にはアンアンしか言えなくなってんよ」「そのカオでおっ立てられるか心配だったけど、今ので滾ったわー」

ニヤニヤとタチの悪い笑みを浮かべて少女に手を掛けようとして、



果たせない事にやっと、気付く。



「──────素手で逃げもせずに女が四人の男達を相手にしている時点でちったあおかしいと思えよ」

得体の知れないモノを相手にしている男達の顔が驚愕に歪むのを冷やかに一瞥すると、蝿が飛ぶ様な、機械の始動する音に似たそれに気付く。

「遅い。『侵せ閃け精神長槍 マインドスピア!』惑えッ‼︎」

無力な筈のJKが無慈悲な暴力に牙を剥く。四方八方から真白いほむらの槍が飛来し、空中に重なり展開する巨大な円形の魔法陣を貫き通すと男達に血飛沫一つ上げさせずに串刺しにした。

「ぐ、はッ‼︎」「がっ!」
「馬鹿め、楽には踊らせんからな。男なら多少なりと強くしても構わんだろうし」

虚ろな表情を浮かべる彼らを不可視の結界で包み込んで、人の悪い笑みを浮かべた睦月こそが人目を避ける為に十指を前に出し、複雑にそれを動かして誘導する。
緑深い樹々の隙間から声なき声が、悲鳴が上がった。

だが、それは…人の目に触れず、になるのだ。
いつも彼らがそうしていた様に。
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