上 下
15 / 31

今更、惚れたとか手遅れな気がする❻

しおりを挟む




始業前一時間だというのに、四人は示し合わせた様に早々と登校していた。

「え…何でみんなもう来てんの?」

おはようより先に光希が思わずそう呟くと、他の三人は芽衣子の席を囲んでそれぞれのポーズで頭を抱えていた。

「コレ」

出されたのはA4サイズの封筒。
百均で6枚くらい入ってそうな。
それを食い入る様に見つめ、固まる光希に幸子が溜息をつく。

「…光希んトコにも届いてたんか…。なぁだった?」
「は…?」
「ウチは父親宛て。芽衣子んチは母親宛て。まゆまゆは面白がったカレシのSNS上にアゲられてた」
「!─────バラバラじゃん⁉︎ウチは兄貴の学校だよ‼︎」

言わずと知れたイジメ現場で個室に放水するホースを取り合い、笑う四人のJKの姿を引き延ばした写真だった。

「親から殺されそうなくらい怒鳴られたよ…」
「ウチは延々と五時間説教された」
「アタシなんかSNSだよ⁉︎道理でツイッタ○のレスがばんばん来る訳だよ…」

ガタン、と光希が椅子に腰掛ける。

「ウチの兄貴、超進学校の海聖高に通ってんだけど、職員室で学年主任から渡されたんだって…。『一応改めさせて貰ったが、それは誰だ?』って聞かれて、血の気が引いていった、って言ってた」

沈黙が静かな教室内を占拠している。

「…コレ、さ。アングル的にトイレの小窓なんだよね。で、あのトイレ二階。外、壁。…ねぇ、有り得なくね?」
「…怖いコト言わないでよ…」
「ドローンとか?」
「煩くて気付くわ。あったら財力パねぇわ」

幾ら考えても、答えが出よう筈も無かった。

「─────らちあかないよ。ねぇ、可笑しいじゃん‼︎絶対何か関係してる筈だよ!西やん呼び出そう。それか待ち伏せ」
「そだね。普通ならユッコと西やんて全然似てないのに間違えるワケ無いんだよ。大体、何で四人とも見間違えたんだろ。何かやったのかな?」
「呼び出しても態々来ないよ。最近ノリノリだって言ったじゃん」
「じゃ、待ち伏せだね。帰り道、誰かルート分かる?」


ジリジリと授業の時間が過ぎていく。
ギラギラした視線を四方から受けても睦月は涼しい顔をしている。



バスを降りて、暫く進むと森深い神社の前を通りかかると後ろから声が掛かった。

「ちょ、西やん!待ちなよ」

呼ばれて振り向くと、予想通り四人組がそこに現れた。

「え?キミら?家、こっちじゃ無いよね?」

睦月は驚いて、眼を見張る。

「…聞きたいコトがあったから」
「え?なら、学校で聞けばいいじゃん」
「聞けないからここに居るんでしょ⁉︎」
「ええ?ナニ逆ギレしてんの?イミフなんスけど」

コーワーイーと、殊更《ぐー》を口元に持っていき、身を捩って見せる。

「ふざけないでよ!アンタ何かやったでしょ⁉︎」

光希と幸子のやり取りにイラついた芽衣子と麻由理が噛み付いていく。

「何か─────てナニよ?私が何かしたの?」
「だって、!この前までオドオドしてたのに、ナニ強気になってんのよ⁉︎全然キャラ違うじゃない!」
「そうよ、西に戻りなさいよ!アンタは私達に弄られてナンボじゃんか!」


気配が変わった。


声の調子は以前同様に違和感が目に見えてある。


口角が不自然に吊り上がっていた。
笑っていたのである。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

憧れの童顔巨乳家庭教師といちゃいちゃラブラブにセックスするのは最高に気持ちいい

suna
恋愛
僕の家庭教師は完璧なひとだ。 かわいいと美しいだったらかわいい寄り。 美女か美少女だったら美少女寄り。 明るく元気と知的で真面目だったら後者。 お嬢様という言葉が彼女以上に似合う人間を僕はこれまて見たことがないような女性。 そのうえ、服の上からでもわかる圧倒的な巨乳。 そんな憧れの家庭教師・・・遠野栞といちゃいちゃラブラブにセックスをするだけの話。 ヒロインは丁寧語・敬語、年上家庭教師、お嬢様、ドMなどの属性・要素があります。

寝取られて裏切った恋人への復讐

音の中
恋愛
【あらすじ】 彼との出会いは中学2年生のクラス替え。 席が隣同士だったのがきっかけでお話をするようになったんだよね。 彼とはドラマ鑑賞という共通の趣味があった。 いつも前日に見たドラマの感想を話していたのが懐かしいな。 それから徐々に仲良くなって付き合えた時は本当に嬉しかったよ。 この幸せはずっと続く。 その時はそう信じて疑わなかったな、あの日までは。 【注意】 ・人を不快にさせる小説だと思います。 ・けど小説を書いてると、意外と不快にならないかも?という感覚になり麻痺してしまいます。 ・素読みしてみたら作者のくせに思った以上にダメージくらいました。(公開して3日目の感想) ・私がこの小説を読んでたら多分作者に怒りを覚えます。 ・ラブコメパートが半分を占めます。 ・エロい表現もあります。 ・ざまぁはありますが、殺したり、人格を壊して精神病棟行きなどの過激なものではありません。 ・された側視点ではハッピーエンドになります。 ・復讐が駆け足だと感じちゃうかも…… ・この小説はこの間初めて読んでみたNTR漫画にムカついたので書きました。 ・プロットもほぼない状態で、怒りに任せて殴り書きした感じです。 ・だからおかしいところが散見するかも……。 ・とりあえず私はもうNTR漫画とか読むことはないでしょう……。 【更新について】 ・1日2回投稿します ・初回を除き、『7時』『17時』に公開します ※この小説は書き終えているのでエタることはありません。 ※逆に言うと、コメントで要望があっても答えられない可能性がとても高いです。

とりあえず、後ろから

ZigZag
恋愛
ほぼ、アレの描写しかないアダルト小説です。お察しください。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話

神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。 つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。 歪んだ愛と実らぬ恋の衝突 ノクターンノベルズにもある ☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

処理中です...