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今更、日常に戻れる気がしない❽

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「あれ、お前だろ?」

おお、はづ兄がお怒りだ!

目の前にはテレビ。家族団欒なんて共稼ぎ夫婦の父母にはまるきし無いから、家族三人、宅配ピザの夕食だ。

「…え?お兄ちゃん、冗談キツイよ。ムツ姉が【謎の美少女】て嘘でもあり得なくない?」

そう、目の前には国外…外国の災害現場が映し出され、アナウンサーが興奮した顔で捲し立てている。
内容は妹の卯月が言う【謎の美少女】の話題だ。

彼女は最初に昼間現れてから、ハリケーンの猛威によって屋内もしくは土中に閉じ込められた人々を次々と【超常の力】で助け出し、生存者救出劇が収まった今ではデカイ瓦礫や遺体を掘り出し、移動させている。

主に空中や作業者の傍にランダムに現れる為、記者がインタビューを試みるも一度も成功していない。

彼女は大きい眼鏡にフードを目深に被り、東洋人の少女である事以外の情報を決して与えない。
会話もテレパシーの様な脳裏に直接響くもので、

『あいむ、ジャパニーズ。それでも良くて助かりたいならこの手を取れ』
『会いたい家族はいるか?念じろ、そこへ跳んでやる』
『あの瓦礫を置ける、邪魔にならないスペースはある?』

と、日本人に恩を着せられても良い、生きたい、と願う者を選んで助けて回ったという。
お陰で後で支援の為、駆けつけた自衛隊は神の様に崇められている。
バトンタッチと言わんばかりに彼女が消えたからだ。

「そだねー。私が【謎の美少女】ってのはムリがむりむり。大体、フード被ってて顔なんか分かんないじゃん。何処が美少女だよ。それにあれはメガネじゃなくて○づきルーペだし」
「………」
「……(はっ!)」
「おーまーえーはー」
「…ウッソー。そんなメガネ買えるお金ある訳無いじゃん」
「はあ…その前にムツ姉があんな力持ってるワケ無いじゃん。バッカみたい!私、宿題あるからもう部屋行くねー。ゴミ捨てといてよ」

卯月が居なくなると重めの空気が漂ってくる。

「ムツ、お前遺族から金受け取ったろ?」
「…え?」
「『え?』じゃねぇよ。何であんな事やってるんだ」

むう、どうあってもはづ兄は私の仕業と決めつけたいようだ。

…まあ、私の仕業なんだけど。

「まあ、所謂高額なバイトかな」

少し換金しては○きルーペも買いました。

「心配しなくても地元で換金なんてアシのつくやり方はしてないよ。まあ、テレポート的な能力じゃなくてアレ、どっちかというとワープに近いし。
召喚獣とかこの世界じゃ呼べないし~呼んだ処で帰せる気がしないし~仕方ないから足下に力場を発生させて顔が判定出来ないくらいの高高度で固定してるんだよ」
「お前、穏便に暮らすつもりは無いのか…?」
「あー、いちおー各諜報部隊には捕まらない様、ハッカー並みに中継地を経由して帰ってるし、撮影されてても気配と雰囲気は変えてるしなー。被害国の偉い人には瓦礫撤去先とかは念話飛ばしてクギを刺した上でちゃんと相談受けてるよ。お陰でニコニコ現金払いだから助かってる」
「その現金から辿られる恐れもあるだろ!」
「たーかーらー、 ランダム中継地で換金したりして、二段重ねでやってるよう。もーこれ以上どうしろって言うのよ~」
「被害者みたく言うな!全くどうして前とそんなに変わり
全く別人みたいになりやがったんだんだ!」


 兄の嘆きがリビングを制した
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