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今更、日常に戻れる気がしない❻
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❻
《早くもぬるま湯の様な其方の世界で浮いているんだろう?こうして無事に繋がった事だし、俺はお前の全てを見守る。そして、事あらば其方に顕現し、辺り一面薙ぎ払ってでも連れ去ってやる》
耳を齧られ、そして息遣いすら感じ取れる様に囁かれる吐息にも似た宣言に肌が粟立った。
「──────お断りだわ」
全神経を体内に巡らせて、内側から弾くように【拒否】すれば、気配が遠のく。
だが、一度縁を結んだその細い線はどうあっても切れぬと悟る。
《相も変わらず情の強い女だな、お前は…。だが、どうあっても諦めんよ俺は。お前は…俺の…》
懐かしい、言い回し。
それがねっとりと身体に纏わり付く。
問題なのは…それが嫌では無い事だ。
恋というものは、矜持を上回るか。
途轍もなく厄介なものだな。
それでも、
「まだまだ、簡単には堕ちないよ」
長大な想像上の剣を檻の様に次々と巡らせて、接触を強制的に打ち切った。
翌日、とぼとぼと学校に行くとリア充グループの中の一人がニコニコしながら近寄ってくる。
「にーしーやん、現国の宿題見せーてー」
「むーりー」
速攻で同じノリで返すと、眉を寄せて小首を傾げている。
「なぁにぃ、やってないの~?」
「イヤ、やっつけだけどやった」
「…じゃあ、見せてくれてもいいやん」
「その『じゃあ』の理屈が分からんし」
ナニナニ?とリア充一軍が彼女の後ろにワラワラと湧いてくる。
「どったの?」
「にしやんがイジワルすんだよ」
「芽衣子、ナニされたん?」
「ダチなのに宿題、見せてくんないんだよー」
「にしやん、ノリ悪いよー芽衣子はーバカなんだから、昨日寝ちゃったんだよー助けてやってよー」
おい、バカ言われてんぞ?
あ、バカがバカと言われて頷いてる。
「え?だから、『何で?』」
おどけて見せると、ちょっとナニ反抗してんの?このドレイみたいな雰囲気が漂う。笑ってるけど、目の奥がツンドラだ。
しかしながら、それは彼女達だけの話ではない。
「数学とかならさーまだ分かるけど、高一の現国だよー?辞書で意味調べるだけなんだし、今から全力でやればあんま写す時間と変わんなくね?それにさー周りにはそんなに庇ってくれる仲の良いトモダチがワンサカ居るんだから、私必要か?イヤイヤ~ナイよねー?」
ここまで『立て板に水』と捲し立てると、ドイツもこいつも目の玉が零れ落ちそうな表情をして此方を見詰めている。
「いやん、やめてー。身体の穴の数増えるー。刺さるー」
更に元キャラにナイ事をしてやると、軽く引いている様だ。よし、このままハウス!
「…いがーい…にしやんも下ネタ言うんだー似合わないケド~おもしろ~」
「あはは、げひーん」
「や、それより直ぐ写させてって!カナやんセンセ来ちゃうよう」
そう言って無理矢理机の横に掛けていたバッグに手を入れようとした【芽衣子】とやらの手をバッグ毎内側から弾いた。
「ありゃ、ごめーん。足当たっちゃったー。あちゃー金具が取れちゃったよー。五木君、君がキャッチしたそのバッグ私のー」
「イヤー!カオ痛い~!」
バッグが顔面に直撃した痛みが遅れてきた様だ。
でも、一瞬の出来事で全員が事態を把握出来てないみたい。
要は、ばん!バシッ!ぽーん!となって前列で後ろ向きに席で談笑してたクラスメイトが飛んできたバッグを受け止めてくれただけだ。
《早くもぬるま湯の様な其方の世界で浮いているんだろう?こうして無事に繋がった事だし、俺はお前の全てを見守る。そして、事あらば其方に顕現し、辺り一面薙ぎ払ってでも連れ去ってやる》
耳を齧られ、そして息遣いすら感じ取れる様に囁かれる吐息にも似た宣言に肌が粟立った。
「──────お断りだわ」
全神経を体内に巡らせて、内側から弾くように【拒否】すれば、気配が遠のく。
だが、一度縁を結んだその細い線はどうあっても切れぬと悟る。
《相も変わらず情の強い女だな、お前は…。だが、どうあっても諦めんよ俺は。お前は…俺の…》
懐かしい、言い回し。
それがねっとりと身体に纏わり付く。
問題なのは…それが嫌では無い事だ。
恋というものは、矜持を上回るか。
途轍もなく厄介なものだな。
それでも、
「まだまだ、簡単には堕ちないよ」
長大な想像上の剣を檻の様に次々と巡らせて、接触を強制的に打ち切った。
翌日、とぼとぼと学校に行くとリア充グループの中の一人がニコニコしながら近寄ってくる。
「にーしーやん、現国の宿題見せーてー」
「むーりー」
速攻で同じノリで返すと、眉を寄せて小首を傾げている。
「なぁにぃ、やってないの~?」
「イヤ、やっつけだけどやった」
「…じゃあ、見せてくれてもいいやん」
「その『じゃあ』の理屈が分からんし」
ナニナニ?とリア充一軍が彼女の後ろにワラワラと湧いてくる。
「どったの?」
「にしやんがイジワルすんだよ」
「芽衣子、ナニされたん?」
「ダチなのに宿題、見せてくんないんだよー」
「にしやん、ノリ悪いよー芽衣子はーバカなんだから、昨日寝ちゃったんだよー助けてやってよー」
おい、バカ言われてんぞ?
あ、バカがバカと言われて頷いてる。
「え?だから、『何で?』」
おどけて見せると、ちょっとナニ反抗してんの?このドレイみたいな雰囲気が漂う。笑ってるけど、目の奥がツンドラだ。
しかしながら、それは彼女達だけの話ではない。
「数学とかならさーまだ分かるけど、高一の現国だよー?辞書で意味調べるだけなんだし、今から全力でやればあんま写す時間と変わんなくね?それにさー周りにはそんなに庇ってくれる仲の良いトモダチがワンサカ居るんだから、私必要か?イヤイヤ~ナイよねー?」
ここまで『立て板に水』と捲し立てると、ドイツもこいつも目の玉が零れ落ちそうな表情をして此方を見詰めている。
「いやん、やめてー。身体の穴の数増えるー。刺さるー」
更に元キャラにナイ事をしてやると、軽く引いている様だ。よし、このままハウス!
「…いがーい…にしやんも下ネタ言うんだー似合わないケド~おもしろ~」
「あはは、げひーん」
「や、それより直ぐ写させてって!カナやんセンセ来ちゃうよう」
そう言って無理矢理机の横に掛けていたバッグに手を入れようとした【芽衣子】とやらの手をバッグ毎内側から弾いた。
「ありゃ、ごめーん。足当たっちゃったー。あちゃー金具が取れちゃったよー。五木君、君がキャッチしたそのバッグ私のー」
「イヤー!カオ痛い~!」
バッグが顔面に直撃した痛みが遅れてきた様だ。
でも、一瞬の出来事で全員が事態を把握出来てないみたい。
要は、ばん!バシッ!ぽーん!となって前列で後ろ向きに席で談笑してたクラスメイトが飛んできたバッグを受け止めてくれただけだ。
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