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リーナ:不運が巻き込まれ(下)
しおりを挟む「おいディーダ。お前リーナに我慢させるのか? お前の番(つがい)なんじゃねーの?」
「…………」
「情けねぇ。まさかお前がその程度だったとはな……」
「…………」
「ちょっとルクさん! なんでディーダにひどいこと言うの?」
なぜか突然よくわからない挑発をし始めたルクさん。
ディーダは俯いてじっとしている。
そんなディーダを鼻で笑って、今度はあたしに哀れみの視線を向けてきた。
「リーナ、お前も考え直した方がいいかもしれないぞ。そいつは番の願いひとつ叶えられないような奴だからな」
「いや、願いって……。別にハンバーグは今日じゃなくても……」
「でも食べたかったんだろ?」
「確かに食べたかったけど、我慢くらいできるし」
「可哀想に。食いたいものを我慢させられるだなんて……」
「ねぇちょっと! まるであたしが食いしん坊みたいに言わないでよ!」
可哀想に……何て言いながら悲しげに首を降るルクさんに、イラっとする。
なんなんだ、本当に。
確かにハンバーグが食べたかったよ?
あたしの胃はハンバーグを迎い入れる気満々だった。
それは認める。
だけどさ、いいって言ってるじゃん。
なんでかわからないけど、ディーダが中央の街に行きたくないって言っているんだもん。
ハンバーグくらい我慢できるよ。
それなのにネチネチとディーダを責めて。
キッとルクさんを睨みつけるも、ルクさんはどこ吹く風だ。
もうっ!
ルクさんはいったい何がしたいのさ!
「………………は、…………め…………」
「え?」
頬を膨らませてルクさんを睨んでいると、腕の中から小さな声が。
何て言ったのか聞こえなくて、可愛いディーダの小さな頭を見つめていると、ディーダがゆっくりと顔を上げた。
そしてルクさんを見つめる。
「ちゅうおうのまちは、だめ」
「…………」
「ぼくだってちゃんとじょうほうをあつめてる。だから、ルクェラがなにしにいこうとしてるのかも、わかってる」
「なら重要性もわかってるだろ」
「わかってる。だけど、だからこそリーナをつれていけない」
え?
あたし?
何の話かわからないけど、真剣な話みたいだから静かにしていたら、突然あたしの名前が出てきてビックリした。
よくわからないけど、ディーダが中央の街に行きたくない理由は、あたしを連れていきたくないから?
それなら別に、お家でお留守番してるのに……。
そう思って口にしようとしたら。
「じゃあお前は、リーナに一生こそこそ隠れて生活させるのか?」
「へ……?」
「…………」
ルクさんの言葉に、間抜けな声が出た。
だって、一生って……。
ただ単に、あたしは中央の街に行っちゃダメって話だと思ってたのに。
一生こそこそ隠れて生活するとか、話の規模が違う気がする。
ルクさんとディーダはいったい何の話をしているの?
ハンバーグの話じゃなかったの?
「これから事が動くのは確実だ。そうなれば今まで秘匿されていた情報も、あっという間に世界中に知れ渡る。その度にお前はリーナを隠すのか? そうなりゃ最終的には死の山で引きこもりだな」
「…………」
「なあディーダ。お前なに弱気になってるんだよ。それでもグァドル様の息子か?」
「…………うるさい」
「グァドル様が聞いたらなんと言われるか。きっとショックのあまり臥せってしまわれるに違いない」
「……あのじじいが、ねこむわけないじゃん。ぜったい、かこきゅうになるまでわらうにきまってる」
【未完】
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