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可愛い感じ

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「これはまた……驚きだな」
「フロア全部抜くのはちょっと厳しいかも」

 部屋の中を見て、リーフフィアはカイトと立てていたフロア全部ぶち抜こうぜ計画は頓挫したと言っていいと思った。

 扉を開けた先にあったのは、何とも言えない部屋。

 物置のようにあらゆる物が乱雑に錯乱している部屋だった。

「何となくだけど、部屋の中、全部違うっぽいね」

 嫌な予感がする、と呟くカイトの考えは多分当たっているだろう。

 それどころか、もっとめんどくさそうな感じである。

「使える部屋探しが1番苦労するかも」

 今見たのは2部屋だが、この塔の内部には今見た2部屋も含めて、50以上の部屋の数がある。

 それを1部屋ずつ開けて確認するのは骨が折れそうだった。

「そう言えば地下もあるんだよね、この塔」

 カイトがもっと心折れそうな事実を思い出したかのように話す。

 その言葉でリーフフィアはあることに気づいてしまった。

「地下があるってことは、地下も掃除しないといけないってこと……?」
「そんなことは、ある気がする」

 2人揃って大きなため息をついてしまう。誰か嘘だと言って欲しいが、きっと誰も嘘だと言わないだろう。

「くっそ!レイブン、あの野郎、嵌めやがったな」

 カイトもキレ始めて口調が荒くなってしまっている。

 まあ、声を荒げたいのはリーフフィアも一緒だ。

「嘘だと言ってほしい。カイト、口調」
「あ、ごめん」

 カイトが気が付いたのか、謝ってくるが、あまり興味はない。

「別に、誰だって荒くなる時はあるし、問題ないよ」

 リーフフィアだって口調が荒くなることがあるし、何なら感情が昂ったせいで、身内を殺そうと刃物持ったこともあるのだから。

 ヤバさで言ったらリーフフィアの方が何百倍もヤバい。

「地下、ねぇ」

 地下に何があるのか分からないが、地下にいそうなものと言ったらアレである。

「可愛い感じのがいいですね」
「可愛い感じ?アレに可愛いなんていう概念あるの?」

 カイトにはいまいち通じなかったようだ。

「地下にいそうなのって、だいたいアレじゃないですか」
「黒くてテカテカしてて頭文字Gのやつ?」

 カイトが言いたい存在のことはよく分かったが、リーフフィアが想像していたのはそれではない。

 それのことも考えたが、すぐさま頭の中から抹消及び抹殺したのだ。

「それじゃなくて、ちゅ~ってなくやつですよ」

 地下にいるのはネズミと相場が決まっている。

 例え、誰もがそんなことを思っていなかったとしても、リーフフィアの頭の中ではネズミは地下に住む生き物なのだ。
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