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目標

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「え?抱えてたのって」
「泣き疲れて寝た」
「マジか~」

 カイトとレイブンの2人で会話をする。

 コレーやねこま、ネズは会話に入らずに静かに2人の声を聞いている。

「でさ、泣いた原因はまあいい。俺も悪かったと思ってるし」
「口調荒くなってんぞ」
「お前もな」

 レイブンに突っ込まれ、カイトも突っ込み返す。

 こんな口調で話していると、家族に、特に父母に知られたら驚かれるだろう。

 兄や侍従達は知っていることだから、別にいいと思うが。

「じゃあ、何が駄目なんだよ」
「泣き方」

 レイブンは、首を傾げている。

「レイブンってどうやって泣く?」
「そもそも、泣かない」
「泣けって言ってんだよ」

 へいへい、とレイブンは考え始める。

「人がいる時?」
「慰めてくれる人がいる時。周りに人はいない」

 淡々と当時の状況を伝える。

「……分かんね」
「相手にもよりますけど、私は、声を上げて泣きますわね」

 コレーが頬に手を当てながら答える。

「ねこまも、多分、声、あげる」
「お嬢は泣く時は声あげるっすよね」
「煩い」

 ベシッとネズの頭を叩く。

「リーフィ、声あげなかったんだよね。1人で、静かに泣くことに慣れてそうだった」
「……」

 誰も声をこぼさない。
 目を伏せて、黙っているまま。

「ずっと敬語でね、それを指摘しただけで、何度も謝って、涙をこぼしたんだよね」

 カイトが口を引き締める。

「信じてほしい、って言った時また、泣き出したんだよ」

 悲しそうな笑顔で、どうしていいのか分からなそうな顔をする。

「これは勘だけど、リーフィは怖いんじゃないのかな?他人を信じることも、大切にされることも」

 カイトの発言に、コレーが同意した。

「ええ、傷つくことが当たり前のように動くんです。それは誰よりも危うくて心配してるんですけど」

 心配そうな顔をして、コレーが胸の前でぎゅっと手を握る。

「よし、分かった」

 レイブンが立ち上がる。

「リーちゃんに頼られるようになろう!俺たちがどれだけ強いか見せようじゃないか!」
「となると、次のイベントでなるべく上位にいかないとね」

 レイブンの提案にカイトは頷き、方針を決める。

「コレーは不参加で、ここでリーちゃんを甘やかしまくってくれ」
「ええ」
「参加する人は上位20位以内に入ること」
「了解っす」
「任せろ、だぜ」

 レイブンとカイトがそれぞれ指示を出し、全員が頷いた。

「それじゃあ、行くぜ!目指せ、目標達成!」
「「オー!」」
 
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