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脚
しおりを挟む「ありがとうございました」
リーフフィアは、空中庭園を片付け、地面に降り立った後、自身の命を助け、共に戦ってくれた2人に男性にお礼を言った。
「いや、いいんだけど、いいんだけど」
双剣使いの男性は何か言い淀んでいる様子で腑に落ちないことがあるように首を傾げていた。
「助けたお礼に僕らの話を聞いていってくれない?」
弓使いの男性がそこの見えない笑みで話しかけてくる。
「強制ですか?」
リーフフィアが警戒しながら答えると、
「いや、強制ではないかな。ただ、君にも関係がある話だよ。“七曜”、いや、“九曜”に関する話だ」
弓使いの男性はリーフフィアに片手を差し出した。
「乗るかい?」
「……乗りましょう」
弓使いの男性の手を取る。
きっと彼らは神様が言っていた仲間の人なのだろう。
「そうこなくちゃね。行くよ、レイブン」
「おお、ちょっと何があったのかよく分からんが、分かった」
双剣使いの男性が弓使いの男性に手を差し出すが、弓使いの男性はその手を払った。
「脚」
「いや、俺、乗り物じゃないんだけど?」
「違う。謎美少女ちゃんを連れて行かないといけないから」
弓使いの男性は、阿保なのか、という目を向けている。
「あ、そういうこと」
ぽんと手を叩いた双剣使いの男性は、
「【冥府の門】」
へらっとスキルを発動させ、目の前に怖そうな門を出現させる。
双剣使いと弓使いの男性は警戒することなくその扉に近づくが、リーフフィアにとっては心配でしかない。
「どしたの、謎美少女ちゃん」
双剣使いの男性が、リーフフィアが近づいていないことに気が付いて手招きしてくるが、それに付いて行くような子だったらとっくの昔に誘拐にあっている。
「大丈夫なのかな、と思いまして」
まず、見た目からしてヤバい。
扉の彼方此方から見られている気がするし、扉の真ん中に怖い悪魔の顔があったら近づきたくはなくなる。
「大丈夫、大丈夫」
「どこが⁉︎」
双剣使いの男性は笑いながら手招きするが、全く信用できない。
この扉のどこに大丈夫の要素があるのか詳しく聞いてみたい。
「僕と一緒に行く?」
「大丈夫なんですか?」
弓使いの男性が手を差し伸べてくる。
その手を取っていいのか分からなくて、手を空に彷徨わせる。
その様子を見た、弓使いの男性は何かに気が付いたかのような顔をしてリーフフィアの手を取った。
「行こう?」
「はい」
1人なら怖いが、弓使いの男性が一緒ならまだ安心できる気がする。
「俺のこと、忘れてない?」
「早く開け」
双剣使いの男性が悲しそうな顔をするが、弓使いの男性は優しくない。
「【開門】」
古びた扉が開くような音を立てながら、門が開く。
門の向こう側は、何も見えない。
というか黒一色しかない。
リーフフィアは、怖くなって思わずきゅっと強く手を握ってしまう。
リーフフィアにとって、黒一色は恐怖の色でしかない。
「大丈夫」
ぽん、と頭に軽く手が触れられる。
顔をあげると、弓使いの男性が優しそうに笑っていた。
「僕が一緒だから」
弓使いの男性にとっては、何気ない言葉だったのかもしれないが、リーフフィアにとってその言葉は、何よりも勇気を与えてくれる言葉になった。
「はい」
そうして、門の中の黒の空間へと2人一緒に歩み出した。
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