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できる限り善処する
しおりを挟む神様の言葉が、声が、冗談を言っているようには聞こえなくて、静かに耳を澄ませる。
『君はまず、八十八座の元に行け。彼らなら、私の友人たちである彼らなら、きっと君を守る力になってくれる』
「それは星座のことで合ってる?」
リーフフィアの確認を神様は肯定した。
『ああ。君は今、危険な状態にいる』
「危険な状態?」
ここはゲームの中であり、危険などはあり得なさそうなのだが、どういうことなのだろう?
『君は私達と敵対している神に目をつけられている。私のせいだから申し訳ないと思っている。だから、彼らの力が必要なんだ』
リーフフィア的には、殺されても生き返るので文句はないので、別に困るようなことではない。
そして、危険ならばもっと早く言ってほしかった。
今まで、のほほんと寝ていた自分が馬鹿みたいではないか。
『君では、まだ力不足だ。だから彼らの力が必要なんだ』
「……分かった。それで、その八十八座は何処に?」
リーフフィアの疑問に神様はすんなりと答える。
『夜空だ。夜は、神ではなく八十八座が主権を握る。夜の間に彼らを探せ』
リーフフィアは神様の声に頷き、頭に留める。
「昼は危険だということ?」
『危険ではないけど、あまり出歩くな、と言った方がいいかな』
先程の発言から推理すると、昼間の主権は敵対者である神が握っていると考えて良さそうだ。
『君は今まで夜の世界で生きてきた。昼を夜に変えて生きてきた。それが君の身を護っていたんだ』
夜に救われるとは何とも言えない事態である。
普通は、太陽に救われるのが当たり前なのだろうに。
『君の身を護るためにも、昼に出歩いては行けない』
「了解。次は?」
神様の様子からして、1つだけで終わるはずがないと予想を立てる。
『この世界の主神は私たちだが、その他の世界の神もこの世界に存在する』
「ギリシャ神話とか、日本書紀系の神様ってこと?」
『ああ。私達の味方となったその神々も、何人か倒されている。今の君と同じ状態の者が……5人。彼らを探し、共に戦うことを勧めよう』
「それは絶対?」
リーフフィアは、ある事情のせいで仲間をあまり作りたくなかった。
『できれば、と言ったところだろうな。だが、仲間になった方が生き延びやすくはなる』
「……できる限り善処する」
その5人と一緒に過ごせるかどうかは分からない。
リーフフィアにも共にプレイするたびに起こる、嫌なことがあるから。
『最後だ。“七曜”に気を付けろ』
神様の声がだんだん遠くに、ぼやけて聞こえるようになる。
「神様?」
リーフフィアも違和感に気が付き、顔を顰める。
『“七曜”は対我々用の、神の僕だ。我々が人に力を渡すようになってから、彼らも人にその力を渡している』
「ちょっと、待って」
頭痛がする。
くらくらと眩暈に近い、台風や竜巻のような何かが頭の中をぐちゃぐちゃにする。
『奴らと戦うのは面倒だ。なるべく避けろ』
「神様!」
『私は君の近くにいる。心配するな』
だんだん遠くなって、囁くような声。
神様の言葉では、昼間は危険、だった。
確か【昼夜反転】は展開したまま。でも、危険でないとは限らない。
気を失いそうになる。
何とか気を飛ばさないように掴んでいるつもりだったが、リーフフィアの記憶はそこでぷつりと切れた。
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