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Create your fantasy online へようこそ

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『“Create your fantasy world”へようこそ!』
「はあ、えーっと、使用前の注意……まあ、怪しいところはないかな。『同意する』っと」

 もみじがゲーム開始前の同意のボタンを押すと目の前が一気に開かれる。

 眩しすぎて思わず目を瞑ってしまい、再び目を開けた時は何もない、四角い空間の中にいた。

『こんにちは!』
「こんにちは」

 何処からか声が降ってくる。目の前にはパネルがあり、そこは真っ白だった。

『まずはお名前の登録をお願いします』

 女性のような声が響き、パネルに文字が現れる。

「名前、ねえ。もみじは葉だから……リーフフィア。私の名前はリーフフィアだよ」

 もみじがパネルをタップしようとしたらパネルには“リーフフィア”と言う文字が出ていた。

「へぇ、音声も読み込んで文字に起こしてくれるんだ」

 細々としたところに感心していると確認のための音声が流れる。

『“リーフフィア”で間違いないですか?』
「うん。間違いないよ」

 もみじが頷くとパネルの隣に浮かんでいたステータスの名前欄に“リーフフィア”と文字が浮かび上がった。

「一度決まった名前は変えられるの?」
『変えられません』

 一応聞いてみただけで、もみじはゲーム内の名前を途中で変えることはしないため、変えれようが変えれなかろうがそう興味はなかった。

「身体は変えれるの?」
『性別と髪、目の色、を変えることが出来ます。変更しますか?』

 目の前に鏡が現れ、もみじの姿を写す。

 鏡の中のもみじは現実と同じ背丈で同じ髪と目の色をしていた。

「性別も問題ないし、髪と目の色は黒が気に入っているから別に良いよ」
『一度決定すると、アイテムを利用してでしか変更できません。宜しいですか?』
「うん。その時はアイテムを買うから良いよ」

 もみじが了承すると鏡は消えてしまった。

『次に、役職を選んで下さい』
「役職? ああ、戦闘職か、生産職ってことかな。因みに、戦闘職は何があるの?」
『此方をご覧下さい』

 もみじを囲むように戦闘職の種類が並ぶ。

 指でその職業の場所を長押しすると職業の詳しい説明を見ることができた。また、指を左右にスライドさせることで画面を動かすことも出来る。

 戦闘職の武器のラインナップとしては、剣、斧、槍、弓、杖となっていた。

「大盾は無理。守れる自信ない。剣はお兄ちゃんと被るから嫌。その他、近接攻撃系は身体が動かないため無理……遠距離攻撃かな。私に向いてるの」

 遠距離攻撃のところまで指を横に動かしてスライドさせる。

「弓はちょっと無理。私、射的苦手だし、どっからどう考えても当たらない気がする」

 そうなると残る戦闘職はたった一つだけだ。

「となると杖だね。となると職業は……最初は魔法使いだけなんだね。うん、魔法使いしかないね。一番できそうだし」

 もみじは生産職に興味を持っていなかった。

 何かを作るのは好きだが、生産職を選んでしまうときっと生産ばかりして戦闘を一切しなくなると考えたからだった。

「よし、決めた!」

 もみじは“魔法使い”の画面をタップする。

『“魔法使い”で宜しいですか?』
「それ以外ないしね。オッケーだよ」
『ステータス反映を開始します』

 先程の名前と同じようにステータス画面の職業欄に“魔法使い”の文字が現れる。

 実を言うと、杖を選んでなれる魔法使いは武器から選べる職の中で一番のハズレ枠だった。

 MPだけでなく、だんだんと増えていく魔法・魔術・妖術・呪術と言った全てを管理し、残りのMP量などを考えて撃つ必要性がある職業だった。

 また、育つ中で、戦闘職で唯一、職業が変わる選択肢が多過ぎる職業であったので選択肢を間違えたらそこで即ゲーム終了、今までのプレイ時間の全てが無駄になってしまう職業でもあったのだ。

 魔法も魔法使いでないと使えないというわけでもなく、魔法使いの方がMPが少な目に撃てるだけであり、別に魔法使いでなくとも簡単な魔法は使えたのだ。

 そのため、ゲーム初心者が選ぶような職ではなかったのである。

 弓や銃などの遠距離攻撃の職はきちんと補正が付いていたので射的が苦手でも問題なかった。
 このゲームは経験がステータスに反映されるといっても射的ぐらいの経験で劇的に上手くなると言うことはなかったのだ。

『次にステータスポイントを振って下さい』
「ステータスポイント?」
『初期にもらえるポイントは200です』

 もみじの前にまたパネルが出てくる。

 パネルには文字が書いてあった。

リーフフィア 
 Lv       0
 称号 なし
 HP      50 
 MP     2520
 強さ 30
防御力 10
素早さ 50
賢さ  50
幸運  30

「これが最初のステータスか。これって現実の本体が反映されているんだね。で、ポイントを振るのかぁ」

 もみじは少し考えてからポイントを振り分けた。

 HP       50  (+0)
 MP       2620(+100)
 強さ  50  (+20)
防御力  10   (+0)
素早さ  50  (+0)
賢さ   100(+50)
幸運   60 (+30)

「これでいいかな。魔法使いだからMPが多い方がいいと思うし」
『ステータスポイントが振り分けられます。間違いはありませんか?』
「ないよ」

 もみじが頷くとステータス画面の数値が変わった。

『ステータスポイントが反映されました。ステータスポイントはレベルが上がるごとに獲得されます』

 何もなくなったもみじの前の白い空間に一つの茶色い木のような何かでできた宝箱が現れる。

『魔法使いの初期装備となります。お受け取り下さい』

 もみじが宝箱を開くと、中には黒っぽい、安そうで頭まで隠すことができるローブと木の杖が入っていた。

「えーっと、【初期装備の杖】と【初めのローブ】」

【初期装備の杖】
 名前そのままの意味の杖。
 初期の魔法使いのプレイヤーが持つ杖。
 耐久値がなくなることはない。
[効果]
 MPを10増やす。
 賢さを10増やす。

【初めのローブ】
 初期の魔法使いのプレイヤーが使うローブ。
 耐久値がなくなることはない。
[効果]
 防御力を10増やす。
 攻撃力を20増やす。

 もみじはローブを身につけ、杖を片手で持って地面に杖の先端をつける。

「そこまでいい物じゃなさそう」

 ローブを叩くと埃が少し舞う。杖もあまり強度がなさそうだった。

『次に、称号をお受け取り下さい』
「称号……【魔を使う者の卵】?」

【魔を使う者の卵】
 Create your fantasy world で魔法使いを選んだ者が最初に与えられる称号

『初めに渡される所持金は10000シェルとなります。それでは、“Create your fantasy world“をお楽しみ下さい!』

 もみじの足元に丸い特徴的な模様が描かれた円が広がり、光り始める。

 一際眩しくなった時、もみじの姿は消えていた。

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