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第一話
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パチンパチン。
ゆるゆると眠りから目が覚める。
私がそっと目を開けるとオレンジ色のようで、赤い色のような火があった。
赤い炎が枝を燃やして辺りを照らす。
赤い炎は、私が今まで見た明かりの中で優しい色をしていた。
私が、痛む身体を軋ませて起き上がろうとする。何だか、起きないといけないような気がしたのだ。
私が、身体を起こそうとすると、炎の向こうから声が聞こえた。
「まだ起きてはダメだよ。身体が苦しんでしまう」
身体をおこさずに声の主の方を見る。
声の主は立ち上がり、優しそうな笑顔を浮かべて私の方へと歩んできた。
「こんにちは……いや、こんばんは。身体の具合はどうかな?」
声の主は短い黒い髪に綺麗な黒い瞳を持った男の人だった。
黒い髪と瞳は、所々、光を反射して星のようにきらきらと輝き、まるで夜空のようで綺麗だと思った。
そんなことを私が思っている間に、彼は私の額に白い手を当て、自分の額と温度を比べている。
「ん~、熱がちょっとあるかなぁ?ああ、ごめんね。僕の手、すごく冷たかっただろう?」
私は彼の言葉に心の中で同意する。
彼の手は死んでいる人みたいに冷たい。ずっと氷に触っていたかのような冷たさだった。
「ちょっとごめんね。ひんやりするよ」
彼が言い終わった後、すぐに額に冷たいものが置かれる。
あまりの冷たさに思わず目を瞑ってしまったぐらいだ。
しかし、彼は私の様子などを気にした様子もなく私にどんどん布をかける。
「これであったかく感じてくれるといいんだけど、あったかい?」
彼が私の顔を覗き込んで尋ねてきた。
私はこくりと一度だけ頷く。
私の反応を見て彼は肩の力を抜いて自然な笑みを浮かべた。
「良かった~。えっとね、君はこの最果ての島の海岸に倒れていたんだ。僕がちょうど通りかかって急いでここまで運んで治療したんだけど、記憶とかはある?」
彼の発言に私はここに来るまでのことを思い出す。
最後に聞いた音は誰かの笑う声と水の音。
ああ、そうだ。私は彼らに……
思い出していくと涙が溢れてくる。
悔しくて、苦しくて、辛くて、悲しくて、お母さんとお父さんに会いたくて、でも会えないとわかってるからまた苦しくて。
涙がぼろぼろと零れるのと同じように感情が溢れ出して整理できない。涙を止めようと思っても止められない。
いきなり泣き出した私を見て、彼はおろおろとしていたがそっと私の頭に手を置いてくれた。
「何があったのか僕には判らないけど、それでも泣ける時に泣いた方がいいよ。ずっと僕が側に居るから、安心して欲しい」
そっと、優しい手つきで壊れ物を扱うように頭を撫でてくれる彼の手がお母さんと似ていて、また苦しくなって、私は彼の手に縋って泣いた。
彼は私が涙を零している間、ずっと頭を撫で続けてくれた。
ずっと優しく撫でてくれて、次第に私は落ち着いて、眠りに誘われていった。
ゆるゆると眠りから目が覚める。
私がそっと目を開けるとオレンジ色のようで、赤い色のような火があった。
赤い炎が枝を燃やして辺りを照らす。
赤い炎は、私が今まで見た明かりの中で優しい色をしていた。
私が、痛む身体を軋ませて起き上がろうとする。何だか、起きないといけないような気がしたのだ。
私が、身体を起こそうとすると、炎の向こうから声が聞こえた。
「まだ起きてはダメだよ。身体が苦しんでしまう」
身体をおこさずに声の主の方を見る。
声の主は立ち上がり、優しそうな笑顔を浮かべて私の方へと歩んできた。
「こんにちは……いや、こんばんは。身体の具合はどうかな?」
声の主は短い黒い髪に綺麗な黒い瞳を持った男の人だった。
黒い髪と瞳は、所々、光を反射して星のようにきらきらと輝き、まるで夜空のようで綺麗だと思った。
そんなことを私が思っている間に、彼は私の額に白い手を当て、自分の額と温度を比べている。
「ん~、熱がちょっとあるかなぁ?ああ、ごめんね。僕の手、すごく冷たかっただろう?」
私は彼の言葉に心の中で同意する。
彼の手は死んでいる人みたいに冷たい。ずっと氷に触っていたかのような冷たさだった。
「ちょっとごめんね。ひんやりするよ」
彼が言い終わった後、すぐに額に冷たいものが置かれる。
あまりの冷たさに思わず目を瞑ってしまったぐらいだ。
しかし、彼は私の様子などを気にした様子もなく私にどんどん布をかける。
「これであったかく感じてくれるといいんだけど、あったかい?」
彼が私の顔を覗き込んで尋ねてきた。
私はこくりと一度だけ頷く。
私の反応を見て彼は肩の力を抜いて自然な笑みを浮かべた。
「良かった~。えっとね、君はこの最果ての島の海岸に倒れていたんだ。僕がちょうど通りかかって急いでここまで運んで治療したんだけど、記憶とかはある?」
彼の発言に私はここに来るまでのことを思い出す。
最後に聞いた音は誰かの笑う声と水の音。
ああ、そうだ。私は彼らに……
思い出していくと涙が溢れてくる。
悔しくて、苦しくて、辛くて、悲しくて、お母さんとお父さんに会いたくて、でも会えないとわかってるからまた苦しくて。
涙がぼろぼろと零れるのと同じように感情が溢れ出して整理できない。涙を止めようと思っても止められない。
いきなり泣き出した私を見て、彼はおろおろとしていたがそっと私の頭に手を置いてくれた。
「何があったのか僕には判らないけど、それでも泣ける時に泣いた方がいいよ。ずっと僕が側に居るから、安心して欲しい」
そっと、優しい手つきで壊れ物を扱うように頭を撫でてくれる彼の手がお母さんと似ていて、また苦しくなって、私は彼の手に縋って泣いた。
彼は私が涙を零している間、ずっと頭を撫で続けてくれた。
ずっと優しく撫でてくれて、次第に私は落ち着いて、眠りに誘われていった。
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