わたしは何色?

杉本けんいちろう

文字の大きさ
上 下
1 / 1

わたしは何色?

しおりを挟む
春ー。

ねぇ、桜さん。あなたは何色?

『わたしは、見ての通りピンク色よ。キレイでしょ?みんな、わたしを見てウキウキしてるの。それを見てわたしも嬉しくなるの。』

ホントね。キレイな色。何だか、とっても楽しくなる色。羨ましいわ…。

『羨ましい?何で?あなたも、キレイな色してるじゃない。何も羨むことなんてないわ。』

夏ー。

ねぇ、向日葵さん。あなたは何色?

『ぼくは、見ての通りの黄色だよ。あの熱い熱いお日さまに向かって元気に咲くんだ。みんな、ぼくを見ている時、絶対、笑顔になるんだ。ぼくもそれを見て嬉しくなるんだ。』

ホントね。まるでお日さまの光の色。みんなを元気にしてくれる色。羨ましいわ…。

『羨ましい?何で?きみだって、ぼくらを元気にしてくれる色をしてるじゃないか。何も羨むことなんてないよ。』

秋ー。

ねぇ、紅葉さん。あなたは何色?

『わたしは、見ての通りオレンジ色よ。どう?癒やされるでしょ?みんな、わたしを見て心を和ませてるの。時々ね、どこか寂しげにわたしを見ている方もいるけど、時間と共に忘れていくみたい。不思議ね。』

ホントね。不思議な力を秘めた色。心を洗ってくれる不思議な色。でも、とっても美しい不思議な色。羨ましいわ…。

『羨ましい?どうして?わたしからしたら、よっぽどあなたの方が不思議な力を持った色をしてるわ。何も羨むことなんてないわ。』

冬ー。

ねぇ、雪だるまさん。あなたは何色?

『ぼくは、見ての通り真っ白だよ。たくさんの子供たちが、それは楽しそうに作ってくれるんだ。雪は冷たいだろうに、そんなの関係ないよってばかりに白い息を出しながら、笑いながらね。寒いはずの冬なのに、ぼくは何か温かい気持ちになれるんだ。』

ホントね。温かい気持ちになれる色。真っ白なのに、触ったら冷たい真っ白なのに、こんなにもほっこりさせてくれる温かい色。羨ましいわ…。

『羨ましい?何で?ぼくからしたら、よっぽどきみの方が羨ましいよ。ぼくは、この寒い冬の間にしか、いれないからね。きみみたいに一年中、四季を感じることが出来るなんて、それこそ羨ましいよ。』

そんな、わたしが羨ましいだなんて…。だってわたしには、みんなみたいに色がないのよ。

『色?何を言ってるんだい?ちゃんとキレイな色が付いてるじゃないか?みんな、そう言ってなかったかい?』

え…?

『…どうして、わたしがこんなにキレイなピンク色の花を咲かせることが出来るのか、あなたには分からないの?あなたが、キレイな温かい空気を運んで来てくれるからじゃない。わたしは、それをウキウキしながら待ってるのよ。』

『…この夏の暑さは、お日さまだけのせいじゃないよ。きみがそれに匹敵する熱い熱い空気を運んで来てくれるからじゃないか。だから、ぼくも元気に黄色い花を咲かせられるんだよ。ぼくは、きみに元気を貰ってるんだよ。』

『…みんな、わたしを見て心を和ませてくのは、この美しいオレンジ色のおかげ。でも、このオレンジ色にしてくれるのは他の誰でもない、あなたが遠くから澄んだ空気を運んで来てくれるからよ。言ってみれば、わたしの色は、あなたにコントロールされてるの。実は少し嫉妬してるの。でも、それ以上に感謝してる。わたしも、あなたが運んで来てくれる澄んだ空気に癒されてるのよ。』

『…どうだい?みんな、きみのお陰なんだ。春には、みんなをウキウキさせるキレイなピンク色。夏には、みんなを熱くさせる元気な黄色。秋には、みんなを癒やしてくれる不思議な力を持ったオレンジ色。冬には、みんなをほっこりさせる温かい白色。きみは、一年を通して色んな色になれるんだよ。そんなの羨ましいの何物でもない。知ってたかい?桜さんも、向日葵さんも、紅葉さんも、ぼくも、みんな、きみに恋焦がれてるんだ。だから、きみが来てくれるのが待ち遠しいんだ。』

雪だるまさん…。

『ほら、もうすぐ真っ白な冬も終わる時間だ。お別れするのは寂しいけど、そろそろ新しいピンク色の空気を見つけに行く時間じゃないかい?風さん。』

うん!ありがとう、雪だるまさん。また来年、会いに来るからね。真っ白な風になって…。

                                  ー完ー
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛
 私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。  私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。  だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。  今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。  彼は心は自由でいたい言っていた。  その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。  友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。  だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

処理中です...