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ー第五章ー
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夏休みも終わり、新しい学校にあの悲しい事件を一切表には、出さない幸太郎…。その強さは、我が孫にして実に羨むほどだった。
それにしても、今年の夏は堪える。それは、立て続けに起こる私達を俯かせる神の仕打ちが余計に、そう感じさせるのだ…。
『…お母さん。大丈夫?やっぱり最近、元気ないみたいだけど…。』
やはり、さすがにユキちゃんも堪えていた。ところが、その状況に置いても、偉大な母としての片鱗をここでも見せつけた。
『大丈夫よ、桜子。それより、あなたも、ここの所、病院に出づっぱりで疲れてるでしょう。』
『そんなことないわよ。実の母親を見舞うのに疲れたも、何もないでしょう。』
『ううん。それに、やっぱり、また啓太さんと上手くいってないんでしょう。』
『…何で分かるの?』
『え?』
『私、顔に出てる?』
『桜子…。』
『お母さん、私達、もう駄目かもしれない。』
桜子さんは、そのまま、ユキちゃんに縋るように泣いていた。私は、病室へ入る寸前に、その光景に出くわしてしまった。その為か、その日は、ユキちゃんに会うことなく、病院を後にしてしまった。
翌日―。出直した私は、久しぶりに花束を手にして、病院へと向かった。
『あら、綺麗な向日葵。』
『そうだろう。何だか、これを見てると元気が湧いてくるんだ。当然、言葉は、ないんだけど、上を向かざるをえない気がしてくるんだ…。あ、私だけかな。』
『銀ちゃん…。ありがとう。』
ユキちゃんは、少し涙を浮かべながらも、また、あのいつもの笑顔を見せてくれた。すると、そこへ、一人の男性が現れた。
『…失礼します。』
『啓太さん…。』
その人は、そう、桜子さんの旦那さんだった。
『あ、初めまして…。』
『こちらは、私の古くからの友人で…。』
『黒田さん…ですよね。妻から、聞いております。』
『あら。そうだったの。』
『何でも、お義母さんの初恋の相手らしいじゃないですか。凄いですね。僕も、その話を聞いた時には、驚きました。』
見た目、そして、話し方から察しても、とても昨日の桜子さんの会話が信じられなかった。
『それより珍しいわね、今日は、一人なの?』
『ええ。実は、お義母さんに、ご相談がありまして…。』
『相談…?』
『ええ。あ、黒田さんも宜しければ一緒に聞いてくださいますか。』
『はぁ…。私で良ければ…。』
『もしかして、もう桜子から聞いてるかもしれませんが、実は、僕達、別れようかと思ってます。』
『え?』
『正確に言えば、僕は、別れたくなんかないんです。でも、その方が、桜子の為なんじゃないかと思うんです。』
『…一体、何があったのか、訳を聞かせてくれる?』
『はい。 実は、前にも一度、同じことで、喧嘩になってしまったんですが、僕が、引っ越したいと言い出したんです。』
『引っ越し?何でまた…。仕事だってこっちで上手くいってらっしゃるのに…。』
『はい、僕は、子供の頃から山育ちで…。でも、と言うか、だからかもしれませんが、海にとても憧れていました。そして、ずーっと、将来は、海が見える所に住みたいと思っていたんです。いい歳して、何を言い出すのかとお思いでしょうが、やっぱり、夢は、捨て切れなくて…。』
『…それに桜子は、何て?』
『「私は、この街が好きだし、何より、お母さんを一人に出来ない。」と…。僕が、子供なのかもしれません。勿論、ここは、桜子の生まれ育った地元ですし、お義母さんの事を考えたら当然のことです。ですから、子供達と離れてでも、僕一人で、行こうかと考えてます。それともう一つ、実は、それを期に、転職したいと思ってるんです。これも一緒で、やっぱり、自分が一番やりたい事をやろうって…。家族を持って安定した生活を求めて、今の会社に入ったんですが、確かに、お陰さまで、出世もさせて頂いて、会社に対する不満は、ないんですが…。やっぱり、僕がまだ、子供なんです。いつまでも、理想を追い求めて、この歳になっても、家族を持っても、諦め切れないんです。本当に、桜子には 、すまないと思ってます。桜子は、何も悪くないんです。全ては、僕の人間としての未熟さの問題なんです。』
『そう?私は、啓太さんの考えは、素晴らしいと思うわ。それに、決して、未熟なんかじゃないわ。その決断力は、敬するべきものだわ。』
『私も、そう思いますよ。全然、恥ずかしい事なんかじゃない。そういう思いは、誰にだってあるでしょう。でも、たいていの場合、現実を取ってしまう。描いた理想を実行する行動力が、ある人は、そうはいませんよ。ただ、確かに、家族と完全に別れてまでと考えると苦汁な所ですね…。因みに、お仕事は、何をされたいんですか?』
『はい…、そこなんですが、本当に今更なんですが、料理をやりたくて。』
『料理人ですか。それは、確かに、厳しい世界ですね。』
『やっぱり、自分の店が欲しいんです。これも、ずっと夢だったんです。小さくていいんです。海のそばで、皆の集まる店を持ちたいんです。そこまで、卓越した技術は求めてないんですが、やはり、ある程度の、技術や知識は、つけたいんです。』
『それに桜子は、絶対な反対なの?』
『そうで…。』
『当たり前でしょ!?』
『桜子!』
『あなた、今日、会社は?何で私には、内緒でここにいるの?!』
『ごめんな、桜子。お義母さんには、僕の口から伝えたかったんだ。会社は、今日は、半日で終わったんだ。決して、休んだ訳じゃない。』
『桜子、あなた、本当は、啓太さんに付いて行きたいんじゃないの?私のことは、気にしないでいいのよ。』
『そういう訳には、いかないわよ。…そりゃぁ、私だって、あなたを応援したいわよ。でも、私には、この状況でそんな事する勇気なんかないわ。』
『桜子…。』
『勿論、今日、明日、じゃあ行きますっていう話じゃないんです。もう少し時間が経ってからでいいんです。僕だって、お義母さんの体のことは、心配ですから。』
『桜子さん、私は、こう思うんですが…。やっぱり、啓太君に付いて行くべきだ。おそらく、彼は、桜子さんと出会って、家族を持って、自分を犠牲にしてでも、周りを幸せにすることしか頭になかったんじゃないかと思う。そして、彼は、ここまで、立派に大黒柱としての役目を努め上げた。それは、誰の文句もないほどに…。しかしながら、誰もが抱える、理想とのギャップとの葛藤にずーっと、苦しんでいた。私にも、やはり、似たような経験があるから、気持ちは、よく分かる。私の場合は、時代が許さなかった…。だけど、今は、違う。ずっと家族を支えてきた、啓太君を、今度は、桜子さんが、支えてあげる番じゃないのかな。』
『私も、そう思うわ。桜子、あなたは、啓太さんに、付いて行きなさい。それが、賢明だわ。私は、一人でも大丈夫だから。』
『…お母さん。ううん、そういう訳にはいかないわよ。私には、お母さんの一人娘として、お母さんを支える義務があるの。やっぱり、無理よ。』
『その通りです、お義母さん。今、家族を必要としてるのは、僕ではなくて、お義母さんです。』
『…なら、どうだろう。その権利を、私に、頂けないだろうか?』
『え…?』
『恥ずかしながら、私は、ユキちゃんと再会した、あの日から、こんなにまで、奇跡を喜んだことはなかった。私も、幾ら歳を重ねようが、心に残した思いは、変わらないままみたいでね。定年を迎え、すっかり年金暮らしの隠居生活だった私から、ユキちゃんとの再会が、全てを変えてくれたんです。毎日に、目的が見つかった今は、とめどない明るい光でいっぱいなんです。桜子さん、お願いがあります。ユキさんの面倒を私にみさせてもらえはしませんか。』
『銀ちゃん…。桜子、私からも、お願いします。私も、銀ちゃんと全く同じなの。銀ちゃんとの再会が、明日を迎える楽しみにしてくれたの。周りからしたら、どんなに些細な事に思うことも、同じ境遇の年寄りには、この上ない大事件なの。私は、この運命を信じたいの。』
『…お母さん。そこまで言われたら、私の出る幕じゃないわよ。二人の運命を否定する権利は、私には、ありません…。黒田さん、母を宜しくお願いします。それと、あなたも、これからも私達、家族を宜しくお願いします。どこまでも、あなたに、付いて行きます。』
『桜子…、ありがとう。啓太さん、改めて、桜子を宜しくお願いします。』
『はい。本当に、ありがとうございます。必ず、今以上に、幸せになります。』
『私からも、ありがとうございます。こんな老いぼれの戯れ事を、真摯に受け止めて頂いて…。』
『何を、言ってるんですか、止めて下さい。僕は、男として、最高にカッコイイと思います。やっぱり、目標があるって素晴らしい事ですね。僕も、黒田さんのような歳を取りたいですよ。』
『私も、お母さんみたいな女になりたいわ。だって、お母さん、もう七十になるのよ。それでもまだ、こんなにも、求めてくれる人がいるんですもの。女の鏡だわ。それにしても、ホントに、運命の赤い糸ってあるものなのね。』
『何があっても、私が、全力でお守りします。』
『やだわ、もう…。皆して、恥ずかしいわ。』
赤らめた顔を必死に隠そうとするユキちゃんが、とても愛らしく、私は、改めて、男としてのそれを揺るぎないものとし、そこに、誓った。
桜子さん夫婦が、先に病室を後にすると、私は、すっかり晩くまでそこに居てしまった。純粋に、出来る限り、一緒にいたかったのだろう。あの頃に似た、淡い想いと共に、二人で時を刻んだ。
その日の帰り際、久しぶりに、偶然、大輔の姿を街で見かけた。もう、松葉杖はなく、まるで、何事もなかったかの様に、ただ、以前より確実に、強い足取りの少年の姿があった。乗り越えたのだろう…。人として、男として、一回りも、二回りも大きく見えた。
翌日、ユキちゃんに、その話をすると、実に、自分のことの様に、嬉しそうに聞いていた。亜紀ちゃんも、きっと、どこか遠くで笑ってるに違いないと、ふと空を見上げた…。
その日は、少し、そわそわしていた。なぜなら、九月九日、この日は、ユキちゃんの記念すべき七十回目の誕生日である。私は、プレゼントを隠し持ち、いつもより、勇んで病院へと、向かった。しかし、待っていたのは、考えもしていなかった出来事だった。
『おはよう。』
『あ、銀ちゃん、おはよう。ねぇ、銀ちゃん、いきなりだけど、今日、何の日だか知ってる?』
『さて…、何の日だったかな?何か特別な日だったかな。』
『そうよね…。覚えてる訳がないわよね。今日はね、銀ちゃん、私の誕生日なの。ついに私も七十だわ。』
『え?そうだったの?何で前もって言っといてくれなかったんだい。…なんちゃって!はい!これ!誕生日おめでとう!』
『え!?銀ちゃん…、覚えててくれたの?』
『当たり前だよ。約束したろ?忘れるもんか。』
『ありがとう。…これ、開けていいかしら?』
『ああ、勿論。何だか、こういうの久しぶりで、照れ臭いな…。』
『銀ちゃん…。これは…。』
ユキちゃんが、包みを開けると、そこには、一枚の写真…。
『覚えてるかい?俺達が、別れ際に最後に撮った写真だよ。私は、その一枚を、ずーっと大切に持っていたんだ。勿論、もう二度とこない想い出として…。でも、この写真は、もう俺だけが仕舞い込むものでは、なくなった。これは、もう俺達の共有の財産だよ。だから、これを君に贈る。』
『銀ちゃん…。ありがとう。本当に、本当に、ありがとう。』
『そんな…、礼なんて言われるものじゃないさ。俺は、逆にこれを君に渡す事が出来て、嬉しいんだ。俺こそ、感謝を言いたい。』
二人の時間は、優しい風があの頃を思い出させる様にそっと包み込み、時の経つ早さは、二人をあの頃に戻す会話を飾る様に、雲を流した…。
そして、二人の会話がむ中、聞き覚えのあるまさかの声が、病室に響いた。
『お爺ちゃん!』
『え!?…珂子!』
そこには、なぜか孫の珂子の姿が…。
『珂子!一体どうしたんだい?どうしてここに…。』
『私の、新しいお婆ちゃんに会いに来たの!』
『何だって?』
『お婆ちゃん、こんにちは!』
『あら、珂子ちゃん。こんにちは。こっちいらっしゃい!』
私は、訳が分からず、ただ、悪戯のない二人の笑顔に見取れていた。
『お父さん…。』
『塔子!…これは、一体どういうこだ?』
『お母さん…。』
『桜子まで…。本当になんなの一体?』
『何言ってるの?今日は、お母さんの誕生日でしょ。お祝いしに来たの!』
『まぁ。』
『はい、珂子ちゃん。これをお婆ちゃんに渡して。』
『はーい!』
珂子が渡されたのは、小さな包みだった。珂子は、無邪気に言われるがままに、ユキちゃんに手渡した。
『はい!お婆ちゃん!お誕生日おめでとう!』
『ありがとう。珂子ちゃん。』
『それにしても、何で塔子と桜子さんが一緒に来たんだい?面識はなかったはずだろう?』
『まーま、細かい事はいいじゃない。ユキさん、それを是非、開けて下さい。』
『わかったわ。じゃあ、有り難く開けさせていただくわ。』
ユキちゃんが、包みの中から取り出したのは、何の飾り気もない白い箱だった。その蓋を、ゆっくり開けると、一枚の紙切れが出てきた。
『あら、何の紙かしら…。』
ユキちゃんが、その紙を広げると、珍しく取り乱し、声をあげた。
『ちょ、ちょっと、これは、どういう事?!』
ユキちゃんが、その手に広げた紙切れは、なんと、婚姻届だった。しかも、そこには、私とユキちゃんの名前が、既に、明記されてあり、後は、二人が判を押すだけになっていた。私も、さすがに驚いて、思わず声を荒げた。
『え?!本当に、これは、どういう事だい?』
『どういう事も、何も、そういう事よ。二人の婚姻届。それが、私達からのプレゼントです。』
『黒田さん。私達に言った、あの言葉は、嘘じゃないですよね?だったら、私達、子供が出来る事は、それだけです。二人が幸せになりますようにって、それに託しただけよ。』
『はい、珂子。今度は、これ渡して。』
『はーい!』
次に、渡されたのは、リボンの付いた印鑑だった。私達は、共にそれを受け取り、朱肉を笑顔で差し出す珂子に、もはや、この状況を否定する意味はなかった。私達は、顔を見合わせ、年甲斐にもなく赤らめた頬の熱さを拭う様に、そして、隠す様に口元を手で覆いながら、判をつこうとした。
『あれ~?お爺ちゃん、プロポーズは?』
『は?』
まさか、僅か五歳児の口から、そんな言葉が出てくるとは、思いもしなかった。
『珂子ちゃん、ナイス!』
『お父さん!やっぱり、プロポーズは大事よね。ささ、ユキさんも待ってるわよ!』
『ほ、本当にかい…?』
『当たり前でしょ!冗談でこんな事出来ないわよ。私達が、証人として見届けるわ。』
『お爺ちゃん、空気読んで、空気。』
『あははは、珂子ちゃんたら…。』
『…わかった、わかったよ。』
私は、意を決した。顔を、一段と赤らめたユキちゃんを見つめながら私は、そっと口を開いた…。
『ユキちゃん…。私は、夏子を忘れる訳にはいかない。…でも、それは、同じ様に、ユキちゃんだって、亡くなった旦那さんを忘れる訳にはいかない。いや、忘れては、いけないんだ。私達は、歳を取り、いわゆる全盛期の記憶からは、遠い、遠い片隅に追いやられてる。そして、いずれ忘れ去られていくのだろう…。人の摂理は、悲しいもので、忘れることで、憂いを求めるんだ。私達が、恐れることは、死ぬ事なんかじゃない。忘れられる事なんだ。私は、何も忘れたくない。夏子も、想い出も、ユキちゃんも。そして、誰にも忘れられたくない。私達に残された時間は、あと少しかもしれないけど、君と一緒に居たい。君といると、まだ何かが待っている気がするんだ。ユキちゃん、長い間、待たせたね 。今度は、暗くて寒い防空豪なんかじゃない。たくさんの家族の待つ、明るくて温かい屋根の下だよ。結婚しよう。』
『はい…。私こそ、残りの時間、銀ちゃんに捧げます。ふつつか者ですが、宜しくお願いします。』
私達は、そのまま、ゆっくり判をついた。淡い記憶の片鱗と共に…。
『おめでとう!ホントに、おめでとう!』
『お爺ちゃんも、お婆ちゃんも、お顔が真っ赤っ赤だよ。かわいい!』
『あはははは!ホントにもう、珂子ちゃんたら…。』
『あ!ね、写真撮りましょう!』
『ああ、いいねぇ!』
『…でも、私、こんな格好よ。』
『大丈夫!ユキさんは、そのままでも充分、綺麗ですから。はい、お父さん!もっと寄ってぇ!ユキさんにもっと、くっついて!お父さん、笑って、笑って!恥ずかしがんないの!はい!笑って!そう!はい!そのまま!いくよー!せ~の、はい!チーズ!』
鳴り響くシャッター音と共に、収められた一枚の新たなページは、明るさだけを燈す、まだ終わらない未来に、ワクワクという、希望をくれた。皆には、感謝し尽くせない。心から、心から、ありがとうと言いたい。
その日の夜、一人私は、夏子のもとへ。全てを報告し、見上げた先にある、満天の星空が夏子の許しの証と諭した。夏子も、きっと、喜んでくれてる…。
―しかし、迎えた翌日…。またも、またしても、神の悪戯か、晴れて夫婦となった私達に早々に激震が走る。
少し、気が緩んでいた矢先のことだった…。ユキちゃんの容態が急変したのだ。
『何でまた、こんなタイミングで!ユキちゃん、ユキちゃん!大丈夫だ!大丈夫だ!』
昼前のことだった―。
私が、花瓶の水を換えようと洗面所へ行っていた、ほんのわずかな時間だった。病室に戻ると、明らかに呼吸が荒くなったユキちゃんが、そこにいたのだ。私は、慌ててナースコールのボタンを押し、ユキちゃんの名を呼び続けた。
『ユキちゃん!ユキちゃん!』
慌てて駆け寄る医師達に、退けられた私は、それでも、その名を呼び続ける事しか出来なかった。
慌ただしく、手術室に向かう真っ白なベッド…。それは、昨日の真っ赤な頬が嘘の様に、苦しそうなユキちゃん。私は、その横を追い掛け、とにかく必死に、声を掛けた。
『ユキちゃん!ズルいぞ!また俺から離れるのか!もう二度と、こんな思いは嫌だって言ってたのは、どこの誰なんだ!約束したろ?ユキちゃん!早すぎる!まだ君の番じゃないぞ!ユキちゃん…!』
私は、看護師さん達に制止され、ポツンと廊下に一人残された…。そして、手術中の赤いランプが点滅するのを、黙って見上げていた…。
それにしても、今年の夏は堪える。それは、立て続けに起こる私達を俯かせる神の仕打ちが余計に、そう感じさせるのだ…。
『…お母さん。大丈夫?やっぱり最近、元気ないみたいだけど…。』
やはり、さすがにユキちゃんも堪えていた。ところが、その状況に置いても、偉大な母としての片鱗をここでも見せつけた。
『大丈夫よ、桜子。それより、あなたも、ここの所、病院に出づっぱりで疲れてるでしょう。』
『そんなことないわよ。実の母親を見舞うのに疲れたも、何もないでしょう。』
『ううん。それに、やっぱり、また啓太さんと上手くいってないんでしょう。』
『…何で分かるの?』
『え?』
『私、顔に出てる?』
『桜子…。』
『お母さん、私達、もう駄目かもしれない。』
桜子さんは、そのまま、ユキちゃんに縋るように泣いていた。私は、病室へ入る寸前に、その光景に出くわしてしまった。その為か、その日は、ユキちゃんに会うことなく、病院を後にしてしまった。
翌日―。出直した私は、久しぶりに花束を手にして、病院へと向かった。
『あら、綺麗な向日葵。』
『そうだろう。何だか、これを見てると元気が湧いてくるんだ。当然、言葉は、ないんだけど、上を向かざるをえない気がしてくるんだ…。あ、私だけかな。』
『銀ちゃん…。ありがとう。』
ユキちゃんは、少し涙を浮かべながらも、また、あのいつもの笑顔を見せてくれた。すると、そこへ、一人の男性が現れた。
『…失礼します。』
『啓太さん…。』
その人は、そう、桜子さんの旦那さんだった。
『あ、初めまして…。』
『こちらは、私の古くからの友人で…。』
『黒田さん…ですよね。妻から、聞いております。』
『あら。そうだったの。』
『何でも、お義母さんの初恋の相手らしいじゃないですか。凄いですね。僕も、その話を聞いた時には、驚きました。』
見た目、そして、話し方から察しても、とても昨日の桜子さんの会話が信じられなかった。
『それより珍しいわね、今日は、一人なの?』
『ええ。実は、お義母さんに、ご相談がありまして…。』
『相談…?』
『ええ。あ、黒田さんも宜しければ一緒に聞いてくださいますか。』
『はぁ…。私で良ければ…。』
『もしかして、もう桜子から聞いてるかもしれませんが、実は、僕達、別れようかと思ってます。』
『え?』
『正確に言えば、僕は、別れたくなんかないんです。でも、その方が、桜子の為なんじゃないかと思うんです。』
『…一体、何があったのか、訳を聞かせてくれる?』
『はい。 実は、前にも一度、同じことで、喧嘩になってしまったんですが、僕が、引っ越したいと言い出したんです。』
『引っ越し?何でまた…。仕事だってこっちで上手くいってらっしゃるのに…。』
『はい、僕は、子供の頃から山育ちで…。でも、と言うか、だからかもしれませんが、海にとても憧れていました。そして、ずーっと、将来は、海が見える所に住みたいと思っていたんです。いい歳して、何を言い出すのかとお思いでしょうが、やっぱり、夢は、捨て切れなくて…。』
『…それに桜子は、何て?』
『「私は、この街が好きだし、何より、お母さんを一人に出来ない。」と…。僕が、子供なのかもしれません。勿論、ここは、桜子の生まれ育った地元ですし、お義母さんの事を考えたら当然のことです。ですから、子供達と離れてでも、僕一人で、行こうかと考えてます。それともう一つ、実は、それを期に、転職したいと思ってるんです。これも一緒で、やっぱり、自分が一番やりたい事をやろうって…。家族を持って安定した生活を求めて、今の会社に入ったんですが、確かに、お陰さまで、出世もさせて頂いて、会社に対する不満は、ないんですが…。やっぱり、僕がまだ、子供なんです。いつまでも、理想を追い求めて、この歳になっても、家族を持っても、諦め切れないんです。本当に、桜子には 、すまないと思ってます。桜子は、何も悪くないんです。全ては、僕の人間としての未熟さの問題なんです。』
『そう?私は、啓太さんの考えは、素晴らしいと思うわ。それに、決して、未熟なんかじゃないわ。その決断力は、敬するべきものだわ。』
『私も、そう思いますよ。全然、恥ずかしい事なんかじゃない。そういう思いは、誰にだってあるでしょう。でも、たいていの場合、現実を取ってしまう。描いた理想を実行する行動力が、ある人は、そうはいませんよ。ただ、確かに、家族と完全に別れてまでと考えると苦汁な所ですね…。因みに、お仕事は、何をされたいんですか?』
『はい…、そこなんですが、本当に今更なんですが、料理をやりたくて。』
『料理人ですか。それは、確かに、厳しい世界ですね。』
『やっぱり、自分の店が欲しいんです。これも、ずっと夢だったんです。小さくていいんです。海のそばで、皆の集まる店を持ちたいんです。そこまで、卓越した技術は求めてないんですが、やはり、ある程度の、技術や知識は、つけたいんです。』
『それに桜子は、絶対な反対なの?』
『そうで…。』
『当たり前でしょ!?』
『桜子!』
『あなた、今日、会社は?何で私には、内緒でここにいるの?!』
『ごめんな、桜子。お義母さんには、僕の口から伝えたかったんだ。会社は、今日は、半日で終わったんだ。決して、休んだ訳じゃない。』
『桜子、あなた、本当は、啓太さんに付いて行きたいんじゃないの?私のことは、気にしないでいいのよ。』
『そういう訳には、いかないわよ。…そりゃぁ、私だって、あなたを応援したいわよ。でも、私には、この状況でそんな事する勇気なんかないわ。』
『桜子…。』
『勿論、今日、明日、じゃあ行きますっていう話じゃないんです。もう少し時間が経ってからでいいんです。僕だって、お義母さんの体のことは、心配ですから。』
『桜子さん、私は、こう思うんですが…。やっぱり、啓太君に付いて行くべきだ。おそらく、彼は、桜子さんと出会って、家族を持って、自分を犠牲にしてでも、周りを幸せにすることしか頭になかったんじゃないかと思う。そして、彼は、ここまで、立派に大黒柱としての役目を努め上げた。それは、誰の文句もないほどに…。しかしながら、誰もが抱える、理想とのギャップとの葛藤にずーっと、苦しんでいた。私にも、やはり、似たような経験があるから、気持ちは、よく分かる。私の場合は、時代が許さなかった…。だけど、今は、違う。ずっと家族を支えてきた、啓太君を、今度は、桜子さんが、支えてあげる番じゃないのかな。』
『私も、そう思うわ。桜子、あなたは、啓太さんに、付いて行きなさい。それが、賢明だわ。私は、一人でも大丈夫だから。』
『…お母さん。ううん、そういう訳にはいかないわよ。私には、お母さんの一人娘として、お母さんを支える義務があるの。やっぱり、無理よ。』
『その通りです、お義母さん。今、家族を必要としてるのは、僕ではなくて、お義母さんです。』
『…なら、どうだろう。その権利を、私に、頂けないだろうか?』
『え…?』
『恥ずかしながら、私は、ユキちゃんと再会した、あの日から、こんなにまで、奇跡を喜んだことはなかった。私も、幾ら歳を重ねようが、心に残した思いは、変わらないままみたいでね。定年を迎え、すっかり年金暮らしの隠居生活だった私から、ユキちゃんとの再会が、全てを変えてくれたんです。毎日に、目的が見つかった今は、とめどない明るい光でいっぱいなんです。桜子さん、お願いがあります。ユキさんの面倒を私にみさせてもらえはしませんか。』
『銀ちゃん…。桜子、私からも、お願いします。私も、銀ちゃんと全く同じなの。銀ちゃんとの再会が、明日を迎える楽しみにしてくれたの。周りからしたら、どんなに些細な事に思うことも、同じ境遇の年寄りには、この上ない大事件なの。私は、この運命を信じたいの。』
『…お母さん。そこまで言われたら、私の出る幕じゃないわよ。二人の運命を否定する権利は、私には、ありません…。黒田さん、母を宜しくお願いします。それと、あなたも、これからも私達、家族を宜しくお願いします。どこまでも、あなたに、付いて行きます。』
『桜子…、ありがとう。啓太さん、改めて、桜子を宜しくお願いします。』
『はい。本当に、ありがとうございます。必ず、今以上に、幸せになります。』
『私からも、ありがとうございます。こんな老いぼれの戯れ事を、真摯に受け止めて頂いて…。』
『何を、言ってるんですか、止めて下さい。僕は、男として、最高にカッコイイと思います。やっぱり、目標があるって素晴らしい事ですね。僕も、黒田さんのような歳を取りたいですよ。』
『私も、お母さんみたいな女になりたいわ。だって、お母さん、もう七十になるのよ。それでもまだ、こんなにも、求めてくれる人がいるんですもの。女の鏡だわ。それにしても、ホントに、運命の赤い糸ってあるものなのね。』
『何があっても、私が、全力でお守りします。』
『やだわ、もう…。皆して、恥ずかしいわ。』
赤らめた顔を必死に隠そうとするユキちゃんが、とても愛らしく、私は、改めて、男としてのそれを揺るぎないものとし、そこに、誓った。
桜子さん夫婦が、先に病室を後にすると、私は、すっかり晩くまでそこに居てしまった。純粋に、出来る限り、一緒にいたかったのだろう。あの頃に似た、淡い想いと共に、二人で時を刻んだ。
その日の帰り際、久しぶりに、偶然、大輔の姿を街で見かけた。もう、松葉杖はなく、まるで、何事もなかったかの様に、ただ、以前より確実に、強い足取りの少年の姿があった。乗り越えたのだろう…。人として、男として、一回りも、二回りも大きく見えた。
翌日、ユキちゃんに、その話をすると、実に、自分のことの様に、嬉しそうに聞いていた。亜紀ちゃんも、きっと、どこか遠くで笑ってるに違いないと、ふと空を見上げた…。
その日は、少し、そわそわしていた。なぜなら、九月九日、この日は、ユキちゃんの記念すべき七十回目の誕生日である。私は、プレゼントを隠し持ち、いつもより、勇んで病院へと、向かった。しかし、待っていたのは、考えもしていなかった出来事だった。
『おはよう。』
『あ、銀ちゃん、おはよう。ねぇ、銀ちゃん、いきなりだけど、今日、何の日だか知ってる?』
『さて…、何の日だったかな?何か特別な日だったかな。』
『そうよね…。覚えてる訳がないわよね。今日はね、銀ちゃん、私の誕生日なの。ついに私も七十だわ。』
『え?そうだったの?何で前もって言っといてくれなかったんだい。…なんちゃって!はい!これ!誕生日おめでとう!』
『え!?銀ちゃん…、覚えててくれたの?』
『当たり前だよ。約束したろ?忘れるもんか。』
『ありがとう。…これ、開けていいかしら?』
『ああ、勿論。何だか、こういうの久しぶりで、照れ臭いな…。』
『銀ちゃん…。これは…。』
ユキちゃんが、包みを開けると、そこには、一枚の写真…。
『覚えてるかい?俺達が、別れ際に最後に撮った写真だよ。私は、その一枚を、ずーっと大切に持っていたんだ。勿論、もう二度とこない想い出として…。でも、この写真は、もう俺だけが仕舞い込むものでは、なくなった。これは、もう俺達の共有の財産だよ。だから、これを君に贈る。』
『銀ちゃん…。ありがとう。本当に、本当に、ありがとう。』
『そんな…、礼なんて言われるものじゃないさ。俺は、逆にこれを君に渡す事が出来て、嬉しいんだ。俺こそ、感謝を言いたい。』
二人の時間は、優しい風があの頃を思い出させる様にそっと包み込み、時の経つ早さは、二人をあの頃に戻す会話を飾る様に、雲を流した…。
そして、二人の会話がむ中、聞き覚えのあるまさかの声が、病室に響いた。
『お爺ちゃん!』
『え!?…珂子!』
そこには、なぜか孫の珂子の姿が…。
『珂子!一体どうしたんだい?どうしてここに…。』
『私の、新しいお婆ちゃんに会いに来たの!』
『何だって?』
『お婆ちゃん、こんにちは!』
『あら、珂子ちゃん。こんにちは。こっちいらっしゃい!』
私は、訳が分からず、ただ、悪戯のない二人の笑顔に見取れていた。
『お父さん…。』
『塔子!…これは、一体どういうこだ?』
『お母さん…。』
『桜子まで…。本当になんなの一体?』
『何言ってるの?今日は、お母さんの誕生日でしょ。お祝いしに来たの!』
『まぁ。』
『はい、珂子ちゃん。これをお婆ちゃんに渡して。』
『はーい!』
珂子が渡されたのは、小さな包みだった。珂子は、無邪気に言われるがままに、ユキちゃんに手渡した。
『はい!お婆ちゃん!お誕生日おめでとう!』
『ありがとう。珂子ちゃん。』
『それにしても、何で塔子と桜子さんが一緒に来たんだい?面識はなかったはずだろう?』
『まーま、細かい事はいいじゃない。ユキさん、それを是非、開けて下さい。』
『わかったわ。じゃあ、有り難く開けさせていただくわ。』
ユキちゃんが、包みの中から取り出したのは、何の飾り気もない白い箱だった。その蓋を、ゆっくり開けると、一枚の紙切れが出てきた。
『あら、何の紙かしら…。』
ユキちゃんが、その紙を広げると、珍しく取り乱し、声をあげた。
『ちょ、ちょっと、これは、どういう事?!』
ユキちゃんが、その手に広げた紙切れは、なんと、婚姻届だった。しかも、そこには、私とユキちゃんの名前が、既に、明記されてあり、後は、二人が判を押すだけになっていた。私も、さすがに驚いて、思わず声を荒げた。
『え?!本当に、これは、どういう事だい?』
『どういう事も、何も、そういう事よ。二人の婚姻届。それが、私達からのプレゼントです。』
『黒田さん。私達に言った、あの言葉は、嘘じゃないですよね?だったら、私達、子供が出来る事は、それだけです。二人が幸せになりますようにって、それに託しただけよ。』
『はい、珂子。今度は、これ渡して。』
『はーい!』
次に、渡されたのは、リボンの付いた印鑑だった。私達は、共にそれを受け取り、朱肉を笑顔で差し出す珂子に、もはや、この状況を否定する意味はなかった。私達は、顔を見合わせ、年甲斐にもなく赤らめた頬の熱さを拭う様に、そして、隠す様に口元を手で覆いながら、判をつこうとした。
『あれ~?お爺ちゃん、プロポーズは?』
『は?』
まさか、僅か五歳児の口から、そんな言葉が出てくるとは、思いもしなかった。
『珂子ちゃん、ナイス!』
『お父さん!やっぱり、プロポーズは大事よね。ささ、ユキさんも待ってるわよ!』
『ほ、本当にかい…?』
『当たり前でしょ!冗談でこんな事出来ないわよ。私達が、証人として見届けるわ。』
『お爺ちゃん、空気読んで、空気。』
『あははは、珂子ちゃんたら…。』
『…わかった、わかったよ。』
私は、意を決した。顔を、一段と赤らめたユキちゃんを見つめながら私は、そっと口を開いた…。
『ユキちゃん…。私は、夏子を忘れる訳にはいかない。…でも、それは、同じ様に、ユキちゃんだって、亡くなった旦那さんを忘れる訳にはいかない。いや、忘れては、いけないんだ。私達は、歳を取り、いわゆる全盛期の記憶からは、遠い、遠い片隅に追いやられてる。そして、いずれ忘れ去られていくのだろう…。人の摂理は、悲しいもので、忘れることで、憂いを求めるんだ。私達が、恐れることは、死ぬ事なんかじゃない。忘れられる事なんだ。私は、何も忘れたくない。夏子も、想い出も、ユキちゃんも。そして、誰にも忘れられたくない。私達に残された時間は、あと少しかもしれないけど、君と一緒に居たい。君といると、まだ何かが待っている気がするんだ。ユキちゃん、長い間、待たせたね 。今度は、暗くて寒い防空豪なんかじゃない。たくさんの家族の待つ、明るくて温かい屋根の下だよ。結婚しよう。』
『はい…。私こそ、残りの時間、銀ちゃんに捧げます。ふつつか者ですが、宜しくお願いします。』
私達は、そのまま、ゆっくり判をついた。淡い記憶の片鱗と共に…。
『おめでとう!ホントに、おめでとう!』
『お爺ちゃんも、お婆ちゃんも、お顔が真っ赤っ赤だよ。かわいい!』
『あはははは!ホントにもう、珂子ちゃんたら…。』
『あ!ね、写真撮りましょう!』
『ああ、いいねぇ!』
『…でも、私、こんな格好よ。』
『大丈夫!ユキさんは、そのままでも充分、綺麗ですから。はい、お父さん!もっと寄ってぇ!ユキさんにもっと、くっついて!お父さん、笑って、笑って!恥ずかしがんないの!はい!笑って!そう!はい!そのまま!いくよー!せ~の、はい!チーズ!』
鳴り響くシャッター音と共に、収められた一枚の新たなページは、明るさだけを燈す、まだ終わらない未来に、ワクワクという、希望をくれた。皆には、感謝し尽くせない。心から、心から、ありがとうと言いたい。
その日の夜、一人私は、夏子のもとへ。全てを報告し、見上げた先にある、満天の星空が夏子の許しの証と諭した。夏子も、きっと、喜んでくれてる…。
―しかし、迎えた翌日…。またも、またしても、神の悪戯か、晴れて夫婦となった私達に早々に激震が走る。
少し、気が緩んでいた矢先のことだった…。ユキちゃんの容態が急変したのだ。
『何でまた、こんなタイミングで!ユキちゃん、ユキちゃん!大丈夫だ!大丈夫だ!』
昼前のことだった―。
私が、花瓶の水を換えようと洗面所へ行っていた、ほんのわずかな時間だった。病室に戻ると、明らかに呼吸が荒くなったユキちゃんが、そこにいたのだ。私は、慌ててナースコールのボタンを押し、ユキちゃんの名を呼び続けた。
『ユキちゃん!ユキちゃん!』
慌てて駆け寄る医師達に、退けられた私は、それでも、その名を呼び続ける事しか出来なかった。
慌ただしく、手術室に向かう真っ白なベッド…。それは、昨日の真っ赤な頬が嘘の様に、苦しそうなユキちゃん。私は、その横を追い掛け、とにかく必死に、声を掛けた。
『ユキちゃん!ズルいぞ!また俺から離れるのか!もう二度と、こんな思いは嫌だって言ってたのは、どこの誰なんだ!約束したろ?ユキちゃん!早すぎる!まだ君の番じゃないぞ!ユキちゃん…!』
私は、看護師さん達に制止され、ポツンと廊下に一人残された…。そして、手術中の赤いランプが点滅するのを、黙って見上げていた…。
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