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第3章
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私は再び、彼に救われた。彼が来なければおそらく私は死んでいただろう。彼は私を婚約者にして、私の命を守ってくれもした。私は彼に告げた。
「あの時は、取り乱して酷いことを言ってごめんなさい。反省しているわ」
私が俯いてそう言うと、彼は微笑んで言った。
「別に気にするな。隠してた俺も悪い」
彼はそう告げると、少し照れ臭そうに言葉を続けた。
「あーそれと、さっきの言葉は忘れてくれ。あれはアンドレイ殿を納得させるために言ったことだ。気にするな」
そう言うシーグルドに、先程の言葉を思い出す。確か、私のことを唯一認めた配偶者だとか言っていた。私は彼に告げた。
「分かってるわ、そんなこと。私たちは偽りの配偶者だもの」
私がそう言い切ると、なぜかシーグルドは不服そうな顔をする。私はなぜそのような顔をするのか分からなくて、彼の顔を見つめた。彼は私に告げた。
「そう言い切られると、なんか嫌だな」
「?」
シーグルドは、ばつが悪そうに俯く。私はそんな彼に言った。
「私は結構好きだけれどね、あなたのこと」
「え?」
彼は驚いた顔で私を見つめる。私はそんな彼の反応の意味が分からなくて、再び彼を見つめる。彼は利き手で頭を抱えて言った。
「なんで今そんなこと言うんだよ」
「?」
先程から彼の反応が私にはいまいちよく分からなかった。私は彼に疑問を問いかけた。
「さっきからあなたの言っていることがよく分からないわ。どうして怒っているの? 私何か変なこと言った?」
私はそう尋ねると、彼は余計むしゃくしゃするようにして言った。
「いいから、俺のことは放っておいてくれ」
そう言って彼は私から背を向ける。私は気になって彼に問い詰めた。
「教えてくれたっていいじゃない。急にそんな態度取られたら誰だって驚くわ」
私がそう言うと、彼はため息をついてこちらに向き直る。そして利き手で頭を抱えながら言った。
「俺がお前に惚れてるからだよ」
「……え」
その言葉に思考が停止する。彼が何を言ったのかしばらく理解出来なかった。しかし、彼のその言葉はみるみる私の頬を熱くしていく。私は自分が赤面していると分かった。私は彼に言った。
「それ……本当なの?」
「こんな時に嘘なんかつくわけないだろ。大体お前は鈍すぎだっての。気づけよ」
そう言って彼は私に対して怒り出す。私はそんな彼の様子がなぜだか面白くて笑った。
私の様子を見て彼は呆れたようにため息をつく。私はそんな彼を一直線に見つめて言った。
「さっきも言ったけれど……私も結構好きよ、あなたのこと」
私がそう微笑んで言うと彼は目を見開く。私は思い出すように言葉を続けた。
「あなたといる時間は、不思議と私らしくいられた。お父様とお母様を亡くしてから、周囲のことは大きく変わった。それでも、あなたやアナは変わらずに接してくれて嬉しかった」
私はそう話すと、私を見つめる彼を見つめ返して、さらに言葉を重ねた。
「いつの間にか、あなたに心を奪われていた。……本当に言い表せない不思議な気持ちよ。あの日……全てが変わってから、こんな気持ちになれる日が来るなんて思ってもいなかった。だから、私は」
そう言いかけたところで、シーグルドに突然抱き締められる。彼は私を抱き締めながら言った。
「悪い、しばらくこうさせてくれ」
シーグルドがそう言って黙る。私は静かに頷いた。彼の吐息が、近くに感じる。彼の体温が私にも伝わってきた。私たちはしばらくそのまま抱き合った後、お互い体を離した。
私たちは手を繋いだまま、見つめ合う。私よりも先に彼が口を開いた。
「1人で背負うな。俺はお前にそんな悲しそうな顔をしてほしくはない。お前には笑顔が一番だ」
そう言って彼は私の目元に手を添える。いつの間にか私は涙目になっていたようだった。彼は少し間を置いてから、切なそうに言葉を続けた。
「本当なら、俺はお前を誰よりも近くで支えたい。……だが、それは無理な話だ」
私は彼の言い方に疑問を抱く。つまりは、たとえ想いが通じ合っていても、私を本当の婚約者には出来ないということだろう。彼は苦しそうな顔をしている。私は彼に言った。
「確かに、今まで私たちは偽の婚約者だった。けれど、今はこうして心を通じ合わせた。でも、あなたは何かを恐れている」
私がそう言うと、彼はもっと辛そうな表情をする。私は彼をまっすぐ見つめて言った。
「あなた、さっき言ったわよね? 1人で背負うなって。私も同じことを言わせてもらう。
……1人で、背負わないで。一緒に背負わせてよ」
私の頬を目に溜まっていた涙が伝う。彼は目を見開いて私を見つめた。それから彼は俯いて、ふと笑みを溢した。
「全く、勘弁してほしいなリリアーヌ殿は」
そう言って彼は私の肩を強く抱き寄せる。私は突然のことに驚き、彼のことを見上げた。
「そんなことを言われては、離したくなくなってしまう」
腕の中で、優しい瞳の彼と目が合う。私も彼を強く抱き締めた。
「私も、離さないわ。あなたを決して1人にはさせない」
私がそう言うと、彼が静かに笑った気がした。彼は私から体を離すと、私の顔を両手で挟んで言った。
「お前は、背負えるか? 俺と同じものを」
彼の目は優しく私に問いかける。彼が一体、どのようなものを背負っているか、今の私は知らない。しかし、彼とならば私はどんな困難にも立ち向かえると、不思議と確信していた。
私は彼から目を離さずに告げた。
「背負うわ。私の決意は揺るがない」
私がそう告げると、彼はなぜだか安心したように目を伏せた。私はそんな彼を見つめる。そして彼は再び私に目を向けると呟いた。
「ならば、リリアーヌ殿。俺はここに告げる」
そう言って彼は私の前で片膝をついて私の手を握る。そして彼は言葉を続けた。
「俺と、一生を共にしてほしい」
私は彼のその真剣な言葉に微笑む。そしてこう返した。
「……喜んで」
彼も優しく私に微笑みかけた。私たちはこうして、偽の婚約者ではなく、正真正銘の婚約者になったのだった。
それから私たちは交流会の会場に戻った。私を殺そうとしたパトリシアの兄、アンドレイの姿はもうなかった。
私は会場でアナとシャルロットを見つけ、2人のところに駆け寄る。そろそろ交流会が終わろうとしていた。
私がシャルロットやヨセフ、おば様たちと帰ろうとすると、シーグルドに声をかけられた。
「帰り気をつけろよ」
「ええ、ありがとう」
そう言って彼は他の貴族の人々がいるところに歩いて行った。私たちのそんなやり取りを見て、アナが言った。
「何だか、あなたといる時の陛下は和やかに見えるわ。不思議ね、ずっと怖い方だと思っていたのに」
私は彼女のそんな言葉に言った。
「きっと、そう見える彼が本当の彼なの」
私がそう言うと、アナは優しく笑みを浮かべた。
その後、私はヤーフィス家へと帰宅した。彼と心を通わせたことが、帰宅した後も、私の心を温かく満たしてくれた。
「あの時は、取り乱して酷いことを言ってごめんなさい。反省しているわ」
私が俯いてそう言うと、彼は微笑んで言った。
「別に気にするな。隠してた俺も悪い」
彼はそう告げると、少し照れ臭そうに言葉を続けた。
「あーそれと、さっきの言葉は忘れてくれ。あれはアンドレイ殿を納得させるために言ったことだ。気にするな」
そう言うシーグルドに、先程の言葉を思い出す。確か、私のことを唯一認めた配偶者だとか言っていた。私は彼に告げた。
「分かってるわ、そんなこと。私たちは偽りの配偶者だもの」
私がそう言い切ると、なぜかシーグルドは不服そうな顔をする。私はなぜそのような顔をするのか分からなくて、彼の顔を見つめた。彼は私に告げた。
「そう言い切られると、なんか嫌だな」
「?」
シーグルドは、ばつが悪そうに俯く。私はそんな彼に言った。
「私は結構好きだけれどね、あなたのこと」
「え?」
彼は驚いた顔で私を見つめる。私はそんな彼の反応の意味が分からなくて、再び彼を見つめる。彼は利き手で頭を抱えて言った。
「なんで今そんなこと言うんだよ」
「?」
先程から彼の反応が私にはいまいちよく分からなかった。私は彼に疑問を問いかけた。
「さっきからあなたの言っていることがよく分からないわ。どうして怒っているの? 私何か変なこと言った?」
私はそう尋ねると、彼は余計むしゃくしゃするようにして言った。
「いいから、俺のことは放っておいてくれ」
そう言って彼は私から背を向ける。私は気になって彼に問い詰めた。
「教えてくれたっていいじゃない。急にそんな態度取られたら誰だって驚くわ」
私がそう言うと、彼はため息をついてこちらに向き直る。そして利き手で頭を抱えながら言った。
「俺がお前に惚れてるからだよ」
「……え」
その言葉に思考が停止する。彼が何を言ったのかしばらく理解出来なかった。しかし、彼のその言葉はみるみる私の頬を熱くしていく。私は自分が赤面していると分かった。私は彼に言った。
「それ……本当なの?」
「こんな時に嘘なんかつくわけないだろ。大体お前は鈍すぎだっての。気づけよ」
そう言って彼は私に対して怒り出す。私はそんな彼の様子がなぜだか面白くて笑った。
私の様子を見て彼は呆れたようにため息をつく。私はそんな彼を一直線に見つめて言った。
「さっきも言ったけれど……私も結構好きよ、あなたのこと」
私がそう微笑んで言うと彼は目を見開く。私は思い出すように言葉を続けた。
「あなたといる時間は、不思議と私らしくいられた。お父様とお母様を亡くしてから、周囲のことは大きく変わった。それでも、あなたやアナは変わらずに接してくれて嬉しかった」
私はそう話すと、私を見つめる彼を見つめ返して、さらに言葉を重ねた。
「いつの間にか、あなたに心を奪われていた。……本当に言い表せない不思議な気持ちよ。あの日……全てが変わってから、こんな気持ちになれる日が来るなんて思ってもいなかった。だから、私は」
そう言いかけたところで、シーグルドに突然抱き締められる。彼は私を抱き締めながら言った。
「悪い、しばらくこうさせてくれ」
シーグルドがそう言って黙る。私は静かに頷いた。彼の吐息が、近くに感じる。彼の体温が私にも伝わってきた。私たちはしばらくそのまま抱き合った後、お互い体を離した。
私たちは手を繋いだまま、見つめ合う。私よりも先に彼が口を開いた。
「1人で背負うな。俺はお前にそんな悲しそうな顔をしてほしくはない。お前には笑顔が一番だ」
そう言って彼は私の目元に手を添える。いつの間にか私は涙目になっていたようだった。彼は少し間を置いてから、切なそうに言葉を続けた。
「本当なら、俺はお前を誰よりも近くで支えたい。……だが、それは無理な話だ」
私は彼の言い方に疑問を抱く。つまりは、たとえ想いが通じ合っていても、私を本当の婚約者には出来ないということだろう。彼は苦しそうな顔をしている。私は彼に言った。
「確かに、今まで私たちは偽の婚約者だった。けれど、今はこうして心を通じ合わせた。でも、あなたは何かを恐れている」
私がそう言うと、彼はもっと辛そうな表情をする。私は彼をまっすぐ見つめて言った。
「あなた、さっき言ったわよね? 1人で背負うなって。私も同じことを言わせてもらう。
……1人で、背負わないで。一緒に背負わせてよ」
私の頬を目に溜まっていた涙が伝う。彼は目を見開いて私を見つめた。それから彼は俯いて、ふと笑みを溢した。
「全く、勘弁してほしいなリリアーヌ殿は」
そう言って彼は私の肩を強く抱き寄せる。私は突然のことに驚き、彼のことを見上げた。
「そんなことを言われては、離したくなくなってしまう」
腕の中で、優しい瞳の彼と目が合う。私も彼を強く抱き締めた。
「私も、離さないわ。あなたを決して1人にはさせない」
私がそう言うと、彼が静かに笑った気がした。彼は私から体を離すと、私の顔を両手で挟んで言った。
「お前は、背負えるか? 俺と同じものを」
彼の目は優しく私に問いかける。彼が一体、どのようなものを背負っているか、今の私は知らない。しかし、彼とならば私はどんな困難にも立ち向かえると、不思議と確信していた。
私は彼から目を離さずに告げた。
「背負うわ。私の決意は揺るがない」
私がそう告げると、彼はなぜだか安心したように目を伏せた。私はそんな彼を見つめる。そして彼は再び私に目を向けると呟いた。
「ならば、リリアーヌ殿。俺はここに告げる」
そう言って彼は私の前で片膝をついて私の手を握る。そして彼は言葉を続けた。
「俺と、一生を共にしてほしい」
私は彼のその真剣な言葉に微笑む。そしてこう返した。
「……喜んで」
彼も優しく私に微笑みかけた。私たちはこうして、偽の婚約者ではなく、正真正銘の婚約者になったのだった。
それから私たちは交流会の会場に戻った。私を殺そうとしたパトリシアの兄、アンドレイの姿はもうなかった。
私は会場でアナとシャルロットを見つけ、2人のところに駆け寄る。そろそろ交流会が終わろうとしていた。
私がシャルロットやヨセフ、おば様たちと帰ろうとすると、シーグルドに声をかけられた。
「帰り気をつけろよ」
「ええ、ありがとう」
そう言って彼は他の貴族の人々がいるところに歩いて行った。私たちのそんなやり取りを見て、アナが言った。
「何だか、あなたといる時の陛下は和やかに見えるわ。不思議ね、ずっと怖い方だと思っていたのに」
私は彼女のそんな言葉に言った。
「きっと、そう見える彼が本当の彼なの」
私がそう言うと、アナは優しく笑みを浮かべた。
その後、私はヤーフィス家へと帰宅した。彼と心を通わせたことが、帰宅した後も、私の心を温かく満たしてくれた。
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