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第1章
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しばらく早歩きをして再び寮内に戻った。パトリシアが見えなくなりアナの手を離すと、彼女はなぜか声を上げて笑い始めた。
「あなたって最高ね。パトリシアのあんな顔初めて見たわ」
「あのままというのは我慢ならなかったの。言いたいことは言う性分でね」
「あなたといると退屈しなさそう。……ちゃんとした挨拶はまだだったわね? あの時は喧嘩別れになってしまったから。改めてよろしく、リリア」
そう言って再びアナが手を差し出す。私はその手をしっかり握った。
「よろしく、アナ」
こうして私の王立魔道学校での生活は幕を開けた。
その後、滞りなく入学式が行われ、授業が始まった。授業は魔法の一般教養から応用まで色々あるが、正直なところ私にはどれも退屈だった。
お父様とお母様から行くように言われたから入学したが、私自身は魔法に興味がないのだからこうなるのは予想していたけれど、思った以上に面倒だった。
でも、そんな私でも一つだけ好きな授業がある。それは魔法薬学の授業だ。人の心身の病気や怪我などを治せる薬を作る授業。私は単純な怪我を治す治癒魔法しか知らないため、そういった薬を作るのはとても興味があった。
「リリアでも魔法薬を作るのは苦労するのね」
「初めから出来るわけないわ」
私とアナは同じクラスだった。クラスは1年ごとに変わるが、クラス分けの基準は当然魔法で、私たちが同じクラスになるのは半ば決まっていた。
そのため、もちろん嫌いな人とも一緒になることは分かっていた。
「あら、2人仲良く失敗? さすがは田舎者ね。こんなの、出来て当然よ」
パトリシアは私たちに一々突っかかってくるようになった。それも私が寮の歓迎会の日に彼女に喧嘩を売ったためである。彼女は入学後、すぐにクラスの権力者になり、クラスメイトたちを次々と取り巻きにした。
私たちは当然そこから外れるわけだが、他の生徒たちに話しかけても、よそよそしく反応される。皆パトリシアを恐れているのだ。
このクラスは魔法の有力者しかいない。ほとんどが貴族の人たちで、パトリシアに同調する人も多かった。
そう考えているうちに、授業終了のチャイムが鳴る。お昼休憩の時間だ。私は席を立つと、自分の器材を片付ける。そして教室を出ようとした時、パトリシアに声をかけられた。
「リリアーヌさん、私たちは今からみんなで昼食を取るの。よろしければ全員分の器材を片付けて頂ける?」
「そんなのご自分でどうぞ。私はやらない」
「ふふ、それならアナに頼むわ。あの子はきっと断れないでしょうね」
そう言ってパトリシアはアナを指差す。確かにアナは断らないかもしれない。私はこの場は大人しく引き受けることにした。
「……分かったわ」
「じゃあ、よろしくね」
パトリシアとその取り巻きたちは笑いながら薬学室を出て行った。面倒だが、任されたにはやるしかない。私は器材の片付けを始めた。
私の状況を察してアナも手伝いをしてくれた。
「本当面倒ね、あの人たち。何を考えているのかしら」
「パトリシアはいつも見栄を張っているからね。パーティや交流会でもいつもああなの」
アナは手を動かしながらそう言う。そういえば、アナは以前からパトリシアを知っている。せっかくの機会なので、パトリシアがどんな人物なのか聞いてみることにした。
「パトリシアって、普段どんな生活をしているの? 王都に集まる貴族たちって皆ああいった態度なの?」
「パトリシアは、ちょっと特殊ね。……ウィトレー家は王家に一番近い身分だから、一族の教え自体が歪んでいるのかも」
「そうなのね」
だとしたら、パトリシアも歪んだ教えの被害者なのかもしれない。それでも、面倒な性格をしていることに変わりはないが。
「とりあえず、私はこの器材を倉庫まで運ぶわ。アナは先にご飯食べてて」
「分かった。いつものところにいるわね」
私はアナにそう言って薬学室を出ると、ここから遠い場所にある倉庫の方へと向かった。
倉庫は学校敷地内の端にある。お昼休みでも誰も来ない場所だ。私も今回初めて訪れたが、木々が生い茂っていてとても心地の良い場所だった。
倉庫に入り、器材を置く。それからまた来た道を引き返そうと倉庫の正面を見た時だった。倉庫の正面に、微かに続く道があるのが見えた。私は興味本位でその道を辿っていく。辺りは木々が生い茂っていて、誰もいない。しばらくして行き止まりに辿り着いた。
そこは、辺り一面緑しかなく、非常に美しい場所だった。ここならば、誰も来ないし、ゆっくり出来るかもしれない。私はそう思い至り、その場に座り込む。しばらくして先ほど言えなかった不満をつい口に吐き出した。
「……器材くらい自分で片付ければいいのよ」
サワサワと木々が揺れる音がする。誰も聞いていないのだから、今度から不満を言いたい時はここに来ようかと考え始める。
「大体、魔法や身分なんか何にもならないわ。そんなもので人の価値は変わらないというのに」
不満が次々と口から出てくる。次第に声が大きくなっていった。再びゆっくりと立ち上がる。
「あんな人たち大っ嫌い! もう絶対に頼まれてやらないんだから」
「うるさい。静かにしろ」
突然、1人だったはずの空間に知らない人の声が響き渡る。しかし、辺りを見回しても誰もいない。私は咄嗟に上を見上げる。すると、そこには木の上に座り込む1人の美しい顔をした黒髪の少年がいた。
少年は明らかに不機嫌そうな顔をして、手にしていた読みかけの本を閉じる。こんなところに人がいるなんて誰も思わない。先程の独り言を聞かれていた事実に恥ずかしくなった。
「どうしてそんなところに? 木の上に人がいるなんて誰も思わないわ」
「どこにいようと俺の勝手だろ。分かったら早くあっちに行ってくれ。ここには二度と入ってくるな」
その言い方に苛立ちを覚える。私はすぐに言い返した。
「初対面なのに失礼ね。私だってどこにいようと私の勝手でしょう? この場所は気に入ったから、あなたの許可がなくともまた来るわ」
そう言って踵を返そうとすると、後ろから声がかかった。
「待て。お前名前は?」
「リリアーヌ・アーノルドよ。あなたは?」
私がそう言うと彼は一瞬目を見開いたように見えたが、少しの沈黙の後彼は表情を変えずに言った。
「……さあな。ただ、3学年だからお前の先輩になるな」
「あらそう、名も名乗らないほど無礼な人が先輩だったとは思わなかったわ」
そう言って再び倉庫の方へ向かって歩き出す。そういえば、彼は私が名前を言ってもヤーフィス家のことを言及してこなかった。ということは彼は貴族ではないのだろうか。けれども、彼は私が1学年であると知っているようだった。
しかし、今の私には関係ない。私は歩きながらそれらの雑念を薙ぎ払った。アナをしばらく待たせてしまっている。私はアナが待つところへ急いだ。
「なるほど、面白いことになりそうだな」
彼がそう呟いたことは私の耳には入らなかった。
「あなたって最高ね。パトリシアのあんな顔初めて見たわ」
「あのままというのは我慢ならなかったの。言いたいことは言う性分でね」
「あなたといると退屈しなさそう。……ちゃんとした挨拶はまだだったわね? あの時は喧嘩別れになってしまったから。改めてよろしく、リリア」
そう言って再びアナが手を差し出す。私はその手をしっかり握った。
「よろしく、アナ」
こうして私の王立魔道学校での生活は幕を開けた。
その後、滞りなく入学式が行われ、授業が始まった。授業は魔法の一般教養から応用まで色々あるが、正直なところ私にはどれも退屈だった。
お父様とお母様から行くように言われたから入学したが、私自身は魔法に興味がないのだからこうなるのは予想していたけれど、思った以上に面倒だった。
でも、そんな私でも一つだけ好きな授業がある。それは魔法薬学の授業だ。人の心身の病気や怪我などを治せる薬を作る授業。私は単純な怪我を治す治癒魔法しか知らないため、そういった薬を作るのはとても興味があった。
「リリアでも魔法薬を作るのは苦労するのね」
「初めから出来るわけないわ」
私とアナは同じクラスだった。クラスは1年ごとに変わるが、クラス分けの基準は当然魔法で、私たちが同じクラスになるのは半ば決まっていた。
そのため、もちろん嫌いな人とも一緒になることは分かっていた。
「あら、2人仲良く失敗? さすがは田舎者ね。こんなの、出来て当然よ」
パトリシアは私たちに一々突っかかってくるようになった。それも私が寮の歓迎会の日に彼女に喧嘩を売ったためである。彼女は入学後、すぐにクラスの権力者になり、クラスメイトたちを次々と取り巻きにした。
私たちは当然そこから外れるわけだが、他の生徒たちに話しかけても、よそよそしく反応される。皆パトリシアを恐れているのだ。
このクラスは魔法の有力者しかいない。ほとんどが貴族の人たちで、パトリシアに同調する人も多かった。
そう考えているうちに、授業終了のチャイムが鳴る。お昼休憩の時間だ。私は席を立つと、自分の器材を片付ける。そして教室を出ようとした時、パトリシアに声をかけられた。
「リリアーヌさん、私たちは今からみんなで昼食を取るの。よろしければ全員分の器材を片付けて頂ける?」
「そんなのご自分でどうぞ。私はやらない」
「ふふ、それならアナに頼むわ。あの子はきっと断れないでしょうね」
そう言ってパトリシアはアナを指差す。確かにアナは断らないかもしれない。私はこの場は大人しく引き受けることにした。
「……分かったわ」
「じゃあ、よろしくね」
パトリシアとその取り巻きたちは笑いながら薬学室を出て行った。面倒だが、任されたにはやるしかない。私は器材の片付けを始めた。
私の状況を察してアナも手伝いをしてくれた。
「本当面倒ね、あの人たち。何を考えているのかしら」
「パトリシアはいつも見栄を張っているからね。パーティや交流会でもいつもああなの」
アナは手を動かしながらそう言う。そういえば、アナは以前からパトリシアを知っている。せっかくの機会なので、パトリシアがどんな人物なのか聞いてみることにした。
「パトリシアって、普段どんな生活をしているの? 王都に集まる貴族たちって皆ああいった態度なの?」
「パトリシアは、ちょっと特殊ね。……ウィトレー家は王家に一番近い身分だから、一族の教え自体が歪んでいるのかも」
「そうなのね」
だとしたら、パトリシアも歪んだ教えの被害者なのかもしれない。それでも、面倒な性格をしていることに変わりはないが。
「とりあえず、私はこの器材を倉庫まで運ぶわ。アナは先にご飯食べてて」
「分かった。いつものところにいるわね」
私はアナにそう言って薬学室を出ると、ここから遠い場所にある倉庫の方へと向かった。
倉庫は学校敷地内の端にある。お昼休みでも誰も来ない場所だ。私も今回初めて訪れたが、木々が生い茂っていてとても心地の良い場所だった。
倉庫に入り、器材を置く。それからまた来た道を引き返そうと倉庫の正面を見た時だった。倉庫の正面に、微かに続く道があるのが見えた。私は興味本位でその道を辿っていく。辺りは木々が生い茂っていて、誰もいない。しばらくして行き止まりに辿り着いた。
そこは、辺り一面緑しかなく、非常に美しい場所だった。ここならば、誰も来ないし、ゆっくり出来るかもしれない。私はそう思い至り、その場に座り込む。しばらくして先ほど言えなかった不満をつい口に吐き出した。
「……器材くらい自分で片付ければいいのよ」
サワサワと木々が揺れる音がする。誰も聞いていないのだから、今度から不満を言いたい時はここに来ようかと考え始める。
「大体、魔法や身分なんか何にもならないわ。そんなもので人の価値は変わらないというのに」
不満が次々と口から出てくる。次第に声が大きくなっていった。再びゆっくりと立ち上がる。
「あんな人たち大っ嫌い! もう絶対に頼まれてやらないんだから」
「うるさい。静かにしろ」
突然、1人だったはずの空間に知らない人の声が響き渡る。しかし、辺りを見回しても誰もいない。私は咄嗟に上を見上げる。すると、そこには木の上に座り込む1人の美しい顔をした黒髪の少年がいた。
少年は明らかに不機嫌そうな顔をして、手にしていた読みかけの本を閉じる。こんなところに人がいるなんて誰も思わない。先程の独り言を聞かれていた事実に恥ずかしくなった。
「どうしてそんなところに? 木の上に人がいるなんて誰も思わないわ」
「どこにいようと俺の勝手だろ。分かったら早くあっちに行ってくれ。ここには二度と入ってくるな」
その言い方に苛立ちを覚える。私はすぐに言い返した。
「初対面なのに失礼ね。私だってどこにいようと私の勝手でしょう? この場所は気に入ったから、あなたの許可がなくともまた来るわ」
そう言って踵を返そうとすると、後ろから声がかかった。
「待て。お前名前は?」
「リリアーヌ・アーノルドよ。あなたは?」
私がそう言うと彼は一瞬目を見開いたように見えたが、少しの沈黙の後彼は表情を変えずに言った。
「……さあな。ただ、3学年だからお前の先輩になるな」
「あらそう、名も名乗らないほど無礼な人が先輩だったとは思わなかったわ」
そう言って再び倉庫の方へ向かって歩き出す。そういえば、彼は私が名前を言ってもヤーフィス家のことを言及してこなかった。ということは彼は貴族ではないのだろうか。けれども、彼は私が1学年であると知っているようだった。
しかし、今の私には関係ない。私は歩きながらそれらの雑念を薙ぎ払った。アナをしばらく待たせてしまっている。私はアナが待つところへ急いだ。
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