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第十三話 夢の跡
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木の枝を心臓に突き刺そうとした直前に交わされる。しかし、私は諦めずに何度も突き刺そうとした。
私はどうなっても構わなかった。ただ、この妖を止めなければならないと思う一心だった。蒼馬を亡くして、気が動転していたのかもしれない。ただ、今の私にはこれしか出来なかった。
「柚月、君の攻撃は当たらない。大人しく眠っていてくれないか」
そう言って狐の妖は再び私の気を失わせようとする。しかし、香山くんがそれを阻んだ。
「お前の相手は僕だ」
香山くんは静かに、怒っていた。彼の頬には涙が伝っている。私は香山くんを信じてその場から引き下がった。
「本当に邪魔ばかりしてくれるな、香山景」
狐の妖はそう言うと、人間の姿から大きな狐へと姿を変えた。そして、大きな手で香山くんに襲いかかる。
香山くんは妖眼を持っているが、生身の人間だ。私が何かしなくては。つづみはまだ動けないみたいだ。何か出来ることはないだろうか。
女狐の時、私は結局何も出来なかった。いつもみんなに守られてばかりで、みんなを傷つけて。今度は、蒼馬を失った。
今度こそ、私がみんなを守る番だ。私がやるんだ!
狐の妖から離れて、頭を研ぎ澄ます。何か私に出来ること……。
(……柚月)
すると突然、どこからか私を呼ぶ声が聞こえてくる。それはどこかで聞いたことのあるような、懐かしい女の人の声だった。
(鳥居から出なさい。狐は、境内でしか自由に動けない)
声の主が誰かは分からない。しかしそれは、自分から聞こえてくる声のようだった。
私にはなぜか、その声が間違ったことを言っているとは思えなかった。私は咄嗟に走り出すと、境内から出る。私のやるべきことは決まっていた。
香山くんの妖眼は狐の妖相手には効いていない。ならば、私が狐の妖を鳥居の外に誘き出して、そこで香山くんが妖眼を使えば……。きっと出来る。
走って二つの鳥居を抜け、石畳の階段を一番下まで降りると、再び境内の方を向く。
そして、ゆっくり息を吸うと、大きな声で叫ぶように言い放った。
「狐の妖!!」
その声に狐の妖と香山くんがこちらを振り返る。私は言葉を続けた。
「私はここにいる。攻撃するなら私にしなさい」
しかし、狐の妖はこちらには来ない。香山くんを見ると、彼は重傷を負っているようだった。先に彼を殺そうとしているのか。
ならば、私がやることは一つだけだ。
私は鳥居の近くに落ちていた木の枝を掴み取ると、その枝を力一杯へし折る。折った枝の先は鋭く尖っていた。
一瞬躊躇ったが、もうこれしか方法はない。その尖った枝の先端を自分の手首に思いっきり突き立てた。
「……!!」
耐えがたい、激しい痛みが私を襲う。どくどくと手首から血が流れていった。
そして、もう一度境内を見上げると、叫ぶ。
「狐の妖!! あなたが欲しいのは、私の血なのでしょう? でも、あなたがそうしているうちに、私の血は無くなる!」
私が話している間にも、手首からは血が勢いよく溢れ出している。今までの私なら、きっとこんなことは出来なかった。でも、今は何も怖くない。
私はみんなに助けてもらってきた。お兄ちゃんに、蒼馬、香山くん、そしてつづみ……。
もうこれ以上、誰も殺させない。私は狐の妖を睨み続けた。
「やめろ……それは全て僕の血だ!!」
やはり、狐の妖にとって私の血の重要度は高いようだった。狐の妖は鳥居を出て、私に向かって飛びかかってくる。
後は香山くんがやってくれるはずだ。私は香山くんを信じて、その場に留まった。
狐の妖が目の前まで近づいてくる。私は間もなく、殺されるのだろう。
「見なよ、大狐。今日は見事な半月だ」
香山くんの声が鮮明に聞こえる。彼は鳥居の前、その中央に立つ。鳥居のちょうど上に、美しい半月が見えていた。
「……香山景、月の主人。見くびっていた、お前のことを」
香山くんに背を向けて、狐の妖はそう呟く。
「お前はもう、僕と目を合わせなければここには戻れない。お前の負けだ」
「……けれど、ここには宮坂柚月がいる。この血を浴びれば、僕は鳥居の外でも戦える」
「それはどうかな?」
香山くんのその言葉と同時に、何かがこちらへ飛びかかって来た。あれは、つづみの青蛇だ。私は二人を信じてゆっくりと目を閉じる。青蛇の攻撃に、狐の妖が咄嗟に鳥居の方へ振り返った気配がした。そして……。
「まさか、まだ蛇は生きていたのか……」
「勝手に殺されては困ります」
狐の妖は、香山くんと、目を……合わせた。
美しい半月の日、夜の帳が下りる時刻。私はゆっくりと目を開ける。
目の前にいた狐の妖は、綺麗な光の泡のように、散り散りになって消えていく。
「僕は……僕の夢は、決して潰えない」
最期に、ただその言葉を遺して、彼は消えていった。
遂に、終わったのだ。私の、私達の戦いが。私は力が抜けてその場にへたり込むと、香山くんとつづみが駆け寄ってきてくれた。
「宮坂先輩!」
「宮坂さん」
私の手首からは未だに血が溢れている。つづみは衣服のポケットからハンカチを取り出すと、手首に巻いて応急処置をしてくれた。
私よりも、蒼馬だ。蒼馬のところに行かないと。
「蒼馬……」
私はフラフラした足つきで、階段を登ろうとする。二人も私に何も言わずについて来てくれた。
階段を上り終わり、蒼馬の倒れている場所へと駆け寄る。蒼馬が横たわる場所の隣に膝をついて、蒼馬の手を両手で包み込むようにして握った。
「蒼馬……私達、狐の妖を倒したよ。もう敵はいないの。蒼馬、ねえ……返事をしてよ」
自然とたくさんの涙が溢れた。隣で黙って見守ってくれている二人も、静かに涙を流していた。
「私の……せいだ。私がいたから、蒼馬は……」
私のせいで、兄に続き、蒼馬も亡くなった。私はこれから、どうやって罪を償って生きていけばいいのだろう。もう、大好きな二人はどこにもいないのに。
「宮坂さんのせいじゃない」
香山くんが俯きながら、ぽつりとそう呟く。表情までは見えなかった。
「悪いのは僕だ。僕が守らなくてはならなかったのに」
そういう香山くんの頬に、一筋の涙が伝った。
そんなこと、ない。元はといえば何もかも私が原因だった。咎を負うべきは私なのに。
そう香山くんに伝えようとして、口を開いた。
「違う、私が……」
「誰のせいでもないです!」
私の言葉を遮ったのはつづみだった。
「誰のせいでも、ないんです。悪いのは狐の妖でしょう。……私達は、奴を倒した。村雲先輩の死は無駄じゃない、決して無駄ではないんです」
つづみの目からは絶え間なく涙が溢れていた。止まらない涙の中、私は蒼馬の手を先程よりも強く握った。彼の手は、まだ温かかった。
美しい今夜の半月は、私達を照らすように、先ほどよりも高い位置に昇っていた。
私達はその後、警察に通報した。警察はすぐに駆けつけてくれ、私達はそれぞれ病院へと運ばれた。蒼馬は息を引き取っていることがすぐに確認されたようだった。
それから数日後、私達は取り調べを受けた。後日聞いたところ、香山くんやつづみは、本当のことは言わなかったらしい。しかし、私は嘘をつくことがどうしても出来ずに、本当のことを話した。当然、信じてはもらえず、野生の熊に襲われ混乱していることになってしまった。
蒼馬や香山くん達の外傷も獣による傷だったから、最終的に、私達は神社で熊に襲われたことになった。あの地には、野生の熊が生息しているらしい。
病院に駆けつけてくれたお母さんとお父さんには、生きていてくれて良かったと、泣きながら手を握られた。でも、私はちっとも喜べなかった。私の頭の中には、蒼馬の笑顔が浮かんで消えなかった。
私はどうなっても構わなかった。ただ、この妖を止めなければならないと思う一心だった。蒼馬を亡くして、気が動転していたのかもしれない。ただ、今の私にはこれしか出来なかった。
「柚月、君の攻撃は当たらない。大人しく眠っていてくれないか」
そう言って狐の妖は再び私の気を失わせようとする。しかし、香山くんがそれを阻んだ。
「お前の相手は僕だ」
香山くんは静かに、怒っていた。彼の頬には涙が伝っている。私は香山くんを信じてその場から引き下がった。
「本当に邪魔ばかりしてくれるな、香山景」
狐の妖はそう言うと、人間の姿から大きな狐へと姿を変えた。そして、大きな手で香山くんに襲いかかる。
香山くんは妖眼を持っているが、生身の人間だ。私が何かしなくては。つづみはまだ動けないみたいだ。何か出来ることはないだろうか。
女狐の時、私は結局何も出来なかった。いつもみんなに守られてばかりで、みんなを傷つけて。今度は、蒼馬を失った。
今度こそ、私がみんなを守る番だ。私がやるんだ!
狐の妖から離れて、頭を研ぎ澄ます。何か私に出来ること……。
(……柚月)
すると突然、どこからか私を呼ぶ声が聞こえてくる。それはどこかで聞いたことのあるような、懐かしい女の人の声だった。
(鳥居から出なさい。狐は、境内でしか自由に動けない)
声の主が誰かは分からない。しかしそれは、自分から聞こえてくる声のようだった。
私にはなぜか、その声が間違ったことを言っているとは思えなかった。私は咄嗟に走り出すと、境内から出る。私のやるべきことは決まっていた。
香山くんの妖眼は狐の妖相手には効いていない。ならば、私が狐の妖を鳥居の外に誘き出して、そこで香山くんが妖眼を使えば……。きっと出来る。
走って二つの鳥居を抜け、石畳の階段を一番下まで降りると、再び境内の方を向く。
そして、ゆっくり息を吸うと、大きな声で叫ぶように言い放った。
「狐の妖!!」
その声に狐の妖と香山くんがこちらを振り返る。私は言葉を続けた。
「私はここにいる。攻撃するなら私にしなさい」
しかし、狐の妖はこちらには来ない。香山くんを見ると、彼は重傷を負っているようだった。先に彼を殺そうとしているのか。
ならば、私がやることは一つだけだ。
私は鳥居の近くに落ちていた木の枝を掴み取ると、その枝を力一杯へし折る。折った枝の先は鋭く尖っていた。
一瞬躊躇ったが、もうこれしか方法はない。その尖った枝の先端を自分の手首に思いっきり突き立てた。
「……!!」
耐えがたい、激しい痛みが私を襲う。どくどくと手首から血が流れていった。
そして、もう一度境内を見上げると、叫ぶ。
「狐の妖!! あなたが欲しいのは、私の血なのでしょう? でも、あなたがそうしているうちに、私の血は無くなる!」
私が話している間にも、手首からは血が勢いよく溢れ出している。今までの私なら、きっとこんなことは出来なかった。でも、今は何も怖くない。
私はみんなに助けてもらってきた。お兄ちゃんに、蒼馬、香山くん、そしてつづみ……。
もうこれ以上、誰も殺させない。私は狐の妖を睨み続けた。
「やめろ……それは全て僕の血だ!!」
やはり、狐の妖にとって私の血の重要度は高いようだった。狐の妖は鳥居を出て、私に向かって飛びかかってくる。
後は香山くんがやってくれるはずだ。私は香山くんを信じて、その場に留まった。
狐の妖が目の前まで近づいてくる。私は間もなく、殺されるのだろう。
「見なよ、大狐。今日は見事な半月だ」
香山くんの声が鮮明に聞こえる。彼は鳥居の前、その中央に立つ。鳥居のちょうど上に、美しい半月が見えていた。
「……香山景、月の主人。見くびっていた、お前のことを」
香山くんに背を向けて、狐の妖はそう呟く。
「お前はもう、僕と目を合わせなければここには戻れない。お前の負けだ」
「……けれど、ここには宮坂柚月がいる。この血を浴びれば、僕は鳥居の外でも戦える」
「それはどうかな?」
香山くんのその言葉と同時に、何かがこちらへ飛びかかって来た。あれは、つづみの青蛇だ。私は二人を信じてゆっくりと目を閉じる。青蛇の攻撃に、狐の妖が咄嗟に鳥居の方へ振り返った気配がした。そして……。
「まさか、まだ蛇は生きていたのか……」
「勝手に殺されては困ります」
狐の妖は、香山くんと、目を……合わせた。
美しい半月の日、夜の帳が下りる時刻。私はゆっくりと目を開ける。
目の前にいた狐の妖は、綺麗な光の泡のように、散り散りになって消えていく。
「僕は……僕の夢は、決して潰えない」
最期に、ただその言葉を遺して、彼は消えていった。
遂に、終わったのだ。私の、私達の戦いが。私は力が抜けてその場にへたり込むと、香山くんとつづみが駆け寄ってきてくれた。
「宮坂先輩!」
「宮坂さん」
私の手首からは未だに血が溢れている。つづみは衣服のポケットからハンカチを取り出すと、手首に巻いて応急処置をしてくれた。
私よりも、蒼馬だ。蒼馬のところに行かないと。
「蒼馬……」
私はフラフラした足つきで、階段を登ろうとする。二人も私に何も言わずについて来てくれた。
階段を上り終わり、蒼馬の倒れている場所へと駆け寄る。蒼馬が横たわる場所の隣に膝をついて、蒼馬の手を両手で包み込むようにして握った。
「蒼馬……私達、狐の妖を倒したよ。もう敵はいないの。蒼馬、ねえ……返事をしてよ」
自然とたくさんの涙が溢れた。隣で黙って見守ってくれている二人も、静かに涙を流していた。
「私の……せいだ。私がいたから、蒼馬は……」
私のせいで、兄に続き、蒼馬も亡くなった。私はこれから、どうやって罪を償って生きていけばいいのだろう。もう、大好きな二人はどこにもいないのに。
「宮坂さんのせいじゃない」
香山くんが俯きながら、ぽつりとそう呟く。表情までは見えなかった。
「悪いのは僕だ。僕が守らなくてはならなかったのに」
そういう香山くんの頬に、一筋の涙が伝った。
そんなこと、ない。元はといえば何もかも私が原因だった。咎を負うべきは私なのに。
そう香山くんに伝えようとして、口を開いた。
「違う、私が……」
「誰のせいでもないです!」
私の言葉を遮ったのはつづみだった。
「誰のせいでも、ないんです。悪いのは狐の妖でしょう。……私達は、奴を倒した。村雲先輩の死は無駄じゃない、決して無駄ではないんです」
つづみの目からは絶え間なく涙が溢れていた。止まらない涙の中、私は蒼馬の手を先程よりも強く握った。彼の手は、まだ温かかった。
美しい今夜の半月は、私達を照らすように、先ほどよりも高い位置に昇っていた。
私達はその後、警察に通報した。警察はすぐに駆けつけてくれ、私達はそれぞれ病院へと運ばれた。蒼馬は息を引き取っていることがすぐに確認されたようだった。
それから数日後、私達は取り調べを受けた。後日聞いたところ、香山くんやつづみは、本当のことは言わなかったらしい。しかし、私は嘘をつくことがどうしても出来ずに、本当のことを話した。当然、信じてはもらえず、野生の熊に襲われ混乱していることになってしまった。
蒼馬や香山くん達の外傷も獣による傷だったから、最終的に、私達は神社で熊に襲われたことになった。あの地には、野生の熊が生息しているらしい。
病院に駆けつけてくれたお母さんとお父さんには、生きていてくれて良かったと、泣きながら手を握られた。でも、私はちっとも喜べなかった。私の頭の中には、蒼馬の笑顔が浮かんで消えなかった。
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