堕天使の黙示録-アポカリプス-

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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未来を紡ぐため

堕天使の黙示録-アポカリプス- 134話

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フィルはルーリエの奥義に弾かれずに済んだ。ぎりぎりのところだったが。

フィル「っ……」

ルーリエは、今まで通り、翼が背についていた。

ルーリエ「本当に、強くなったのね…」

フィル「いつまでもやられっぱなしじゃないから…それに、

全員生きて、未来を紡ぐって決めたの」

ラヴィア「フィルさん…」

フィル「後は私がやるから、大丈夫」

そう言われ、ラヴィアも下がる。

ルーリエ「一人でやるつもりなの? 今の私には、剣属性以外通じないわ」

フィル「大丈夫…今の私の力なら…! ソードレイア!」

フェイルスから得た力。その技を放った瞬間、ルーリエが纏っている幻属性が切れた。

ルーリエ「え…!?」

フィル「これで通る、でしょ?」

ルーリエ「…そうまでして、止めるつもりなのね。なら…」

そう言うと背後のセラフ達の周りに短剣が展開した。

クレイド「なっ…」

アイギス「あの時と同じ…か?」

ルーリエ「そう。動けば貴方達をその剣が貫く。彼女の手助けなんて考えない事ね」

・・・・・・

セラフ「信じてる」

フィル「うん、信じて?」

ルーリエ「…ほんと、仲良いのね…羨ましくて、憎い…」

ルーリエが小声で何事か呟いた。その直後、ルーリエが攻撃を仕掛けた。


ルーリエ「ランベージスラスト!」

フィル「インバーテッドクロス!」

ルーリエのナイフはフィルの技が落とした。

ルーリエ「堕天使の力…っ」

フィル「皮肉な事に、貴方達が私の心を一度壊したおかげで

強化され、上手く操れるようになった力よ」

ルーリエ「…一度堕天使の力が暴走した…でしょ。

助けてくれたのは、やっぱり……」

フィル「仲間たちのおかげ。その中でも一番の切っ掛けはセラフよ」

それを聞いた時、ルーリエ自身頭を思い切り殴られた感覚があった。

ルーリエ「…メフィリアの言ってた通り…私、やっぱり本当に好きなのね…」

フィル「セラフのこと…?」

ディアルトからも聞いていたから、分かっている。

ルーリエ「誰かのために命を張れるような人が好き。これは本心よ。

嘘でも、交換条件でも、なくて」

フィル「……気持ちは分かるよ。私もセラフのそういう所が好きだから。

……でも、譲らない。破滅を願うあなたと共に行った先にセラフの笑える未来はない!

無限の光源…フォトンスコール!」

ルーリエ「そうよね…本当、貴方が羨ましい憎い…っ。

開け伝承道…フォークロア!」

フィル「私達は、メフィリアから貴方を止めてって言われたわ…

最後の最期まで、メフィリアは貴方の事を気にしてた」

ルーリエ「…っ…あの子は、私と境遇が似てたから…

殺神復活の手が欲しかったのもあるけれど、あの子の事は本当に心配だった…」

フィル「ルーリエは、自分の両親はどうしたの?」

ルーリエ「……殺したわよ。私の手で。でも…この薔薇だけは消えなかった!

薔薇が永遠に咲く方法を探しているうちに、気が狂って、

人に植え付ける事でそれを為そうとした! その実験台に、私は選ばれたのよ!」

自分の娘に……!? その眼の薔薇は…その時の…

ルーリエ「私もメフィリアもゼフィルも愛されなかった。

愛されてる人が憎くて、過酷な道でも幸せでいられる人が嫌いで…

操ってでも、奪ってでも、壊してでも、自分達の望みを叶えようと思って…!

マニフィレイト!」

これは、一時的に操る技…一人しか戦闘できない時に使われたら…

セラフ「フィル!」

フィル「……っ」

フィルは避けもせずに真っ向から受け止めた。だけど、操られた様子はない。

ルーリエ「どうして…っ」

フィル「堕天使の力と神様から授かった術式の力で、

そういう精神系の異常は起こさなくなったの」

ルーリエ「…ほんとに、恵まれてばっかりで…」

フィル「全部打ち込んできていいよ、私も今の力で応えるから!」

ルーリエ「フィレーア王女…! 殺幻・イストワール・ナイトメア!」

フィル「光術飛翔・ルミエール・フォルトゥーナ!」

幻想の悪夢と運命の光。強かったのは、フィルの方だった。


衝撃の後、フラフラになったのはルーリエの方だ。

フィルの奥義を喰らって、ルーリエ自身もう限界だった。

だけど、その直後……奥から強い力が発生した。

リティア「今のは!?」

クレイド「奥……?」

レイド「まさか…!」

ルーリエがふらふらの状態で、通路の奥を見た。

ルーリエ「ああっ…やっと…やっと正式に目覚めた…!

殺神……ラズルシャーチ…!」

…間に合わなかった。

下手に動く前に止めないと……!

ルーリエ「……アシュレイ王女は光栄でしょう。

自分の命で、を起動させられたのだから…!」

ラヴィア「ルーリエ…っ」

アイギス「貴様……!」

・・・・・・

ルーリエ「私の…私達の勝ちよ…。

私達はね…全員恵まれなかったの…だから、これにしか頼れない…

世界のリセットを…私達の恨みを…叶えてくれるのは……!」

セラフ「っ………」

フィル「! セラフ!」

エレシー「ちょっと!」

セラフが駆けだした。そして……

一閃。それはルーリエの命と目の黒薔薇を斬り裂いた。

ルーリエ「っ!」

セラフ「……動機はどうあれ、アシュレイ王女を利用した事は赦さない。

……殺神は僕達が止める。だから、もう眠れ…

呪われた運命もこれで終わりだ。せめて来世、…幸せになれ」

トドメとして斬りつけたルーリエがセラフの方へ倒れ込んだ。

ルーリエ「…あははっ…敵の来世の…幸運を願ってるんじゃないわ…

……でも、やっと…親の呪いから、逃げられる…」

死が、ルーリエの救いになる…か。酷な話だ。

セラフ「…笑わなくていい。お前は、泣きたいときに限って笑う節がある…違うか?」

そうセラフが言った途端、ルーリエの目から涙がこぼれた。

フィル「ルーリエ……」

ルーリエ「……私達が、来世を生きれる世界が残ってればいいわね…」

セラフ「…残すさ。…僕達は負けない」

ルーリエをその場に横にすると、セラフが再度仲間の方を振り返り問いかけた。

セラフ「聞いた通り、殺神は完全に復活してる。

復活直後よりも強くなっているだろう。それでも、みんなは来るか?」

・・・・・・・・

クレイド「当然だろ」

リティア「ここで逃げても、同じだよ」

レイド「ああ、未来は無くなる」

エレシー「私達は覚悟の上で来たのよ」

アイギス「行かないと言ってもお前は行くだろ」

ラヴィア「私達は、セラフさんについてくって決めたんです!」

フィル「……セラフ。行こう、みんなで。生きるための戦いに」

愚問だったか……

セラフ「分かった。絶対に、勝って帰ろう」

全員がそれに口々に返事を返す。

そして、殺神のいる方へ歩みを進めていった。
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