堕天使の黙示録-アポカリプス-

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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未来を紡ぐため

堕天使の黙示録-アポカリプス- 132話

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エレシー「っ…」

レイド「当たったか…っ」

確かにセラフの奥義がゼフィルの奥義と衝突した。

が、ゼフィルの奥義はエレシーとレイドの方にも被弾していた。

そして……

セラフ「…翼」

ゼフィルの背にも、風を纏った翼が現れていた。

だけど他三人と違うのは、その翼が白と黒な事。

ゼフィル「俺の場合、堕天使だからさ。

この力も、堕天使としての翼が出てきちゃうんだよね」

セラフ「…エレシー、レイド。ここからは僕がやる。

休んでいてくれ」

エレシー「そう、言ったものね」

レイド「…負けるなよ」

ゼフィル「あはははは! 俺を殺すつもり!?

いいのかな、俺を殺せばセフィオだって……」

セラフ「僕は! セフィオに頼まれた事をやるだけだ…!

フィルにしたこと、お前がやって来たすべての罪…償ってもらうぞ、ゼフィル!」


それと同時に、互いに踏み込んだ。

ゼフィル「死葉鎌!」

セラフ「黒零!」

キーンと強い音を立てて武器同士がぶつかる。

ゼフィル「別にフィルはその時の痛みを覚えちゃいないんだから、どうでもいいだろ!」

セラフ「今覚えていなくても、確かに受けた痛みはある。傷もある。

フィルがその時、どれだけ辛かったか分かってるのか!?」

一度距離を離す。

ゼフィル「広がれ…ダークシェイド!」

セラフ「っ…撃ちあがれ…ヴォルトシャワー!

それだけじゃない。ラヴィアの事もそうだ。

ディアルトが監視に変わるまで、酷く弱っていたと聞く。お前が担当だった間…!」

ゼフィル「だって、逃げられたり反逆されたら困るじゃん。

だから少し睨みきかせてただけ。レイドを引き合いに出して脅したりね」

それが…良くないって何で気付かない…

ふと、後ろを見ると、明らかにラヴィアが怯えた眼をしてた。

フィルと違って記憶が飛んでるわけじゃない。

気丈でいたが、ゼフィルに改めて話されたせいで色々蘇ってしまったのだろう。

セラフ「レイド! ラヴィアの事頼む!」

レイド「あ、ああ…!」

一秒でも早く終わらせないと……っ

セラフ「ナイト・オブ・ロード!」

ゼフィル「っ! 仲間一人の心が壊れる程度、なんて事なくない?

なんでそんなにムキになるんだ…よ!」

本気で言ってるのか…こいつ……!?

セラフ「……ゼフィル。お前の…お前達の過去はセフィオから聞いてる。

復讐したい…そう思う気持ちは分かるし、二人の両親は復讐されて当然だとも思う。

だけど……」

ゼフィル「人類全員。俺の復讐対象。

人間なんて信頼できないよ。最初から、俺とセフィオだけだったら良かったと思ってた!」

セラフ「それがだめだって言ってる!

お前達を虐げた奴らじゃないんだ、今の、この時代は…!」

ゼフィル「良いんだよ、俺の怒りが収まるまで消えてくれれば…

けど、エデンもセフィオも止めて来て…」

当たり前だろうが……

セラフ「セフィオは、お前に…大きすぎる十字架を背負ってほしくなかったから、

だから止めたんだろ…! そんな事にも気付かないのか…!」

そう言いながら斬りかかる。

ゼフィル「…そう、セフィオはいい奴。俺と違って、優しすぎる。

…で? 殺神を盗んだのも、セイヴェール壊滅も、フィルとラヴィアへの仕打ちも、

俺がやった事でセフィオは関係ないけど? それでも俺ごと殺す?」

…………! …………

覚悟はしてた。けど、……


セフィオ『大丈夫、大丈夫だから……

君は、君達は僕が助けてあげる』


セフィオ『セラフさんがルーリエさんに魔力の渦へ落とされて、

僕が追いかけたんです』


セフィオ『殺してくれるって約束、忘れないでくださいね』


意識が逸れた。

フィル「セラフ!!」

ゼフィル「怯えろ…トラジディペイン!」

しまっ…

セラフ「ぐあっ…!? く…」

こちらにフィルが駆けてきそうな気配を感じて腕を横に伸ばして制止する。

フィル「セラフ……」

セラフ「来るな…っ」

理由、ゼフィルの動きに気付いたから。今自分の傍に居たら不味い…

ゼフィル「殺風・テンペスタ・グランディネ!」

ゼフィルの奥義。トラジディペインを喰らった直後のセラフがまともに喰らえば危険だった。

だが、セラフは立っていた。周りに剣の舞で剣を展開して盾代わりにしたのだ。

といっても、無傷じゃすまなかったが。

セラフ「はあ…っ…ヒールエスパーダ!」

ゼフィル「へえ、耐えるんだ。でも、そんな状態じゃ殺しやすいけど…!」

ゼフィルがこっちへ向かってきそうになった時、急に動きが止まった。

ゼフィル「!? 身体が…動かない…?」

セフィオ『……セラフさん…聞こえる?』

セラフ「セフィオ!?」

セフィオ『…気にしないで、僕の事は…今のうちに…僕が抑えられてるうちに早く!

僕は兄さんの力として生命力を使われ続けてきた…

仮に引き離しても数日と助からない…だから…最期ぐらい…

セラフさんの道を繋ぐために、この命使わせてください!』

セフィオ………

ゼフィル「この……っ今さら……!」

セラフ「終わらせる……! お前の罪も罰も!

雷術飛翔・トルエノ・ガラクシアス!」

この一瞬、逃せなかった。きつい体を無理矢理動かして奥義を放った。


ゼフィル「……グッ……」

セフィオ「………う…」

ゼフィルとセフィオが分離している。

フィル「セラフ!! 癒しよ…ヒールドロップ!」

リティア「浄化を…キュアーティア!」

二人のおかげでトラジディペインの状態異常も傷も癒えた。

セラフ「助かった……。…セフィオ」

セラフがセフィオに駆け寄った。

セフィオ「ありがとう…願い、聞いてくれて…」

セフィオも限界だろうに、体を起こしてゼフィルに近付いた。

ゼフィル「…この…最後まで、邪魔を……っ」

セフィオ「…兄さん。復讐相手は、もう居ないんだよ。

両親は兄さんが殺した…それで終わりでよかったんだ…何で関係ない人まで殺そうとしたの?」

ゼフィル「……転生したあと…また、虐げてくる奴らがいたら…

そんなの嫌だった…俺とお前の二人なら…どれだけ…」

ゼフィルがぽつりぽつり話し始めた。

セフィオ「…二人でエデンに居れば良かったんだよ。せっかく拾ってもらったのに…」

ゼフィル「…俺は、お前みたいに、憎まずにはいられなかった…」

セフィオ「関係ないよ、フィルさんも、ラヴィアさんも。

この時代の人達も、世界も、みんな…。…兄さんがしたのは、間違いなく罪だ。

止めきれなかった僕も罪がある……だから……

一緒に償おう。みんなら謝ろう、何度でも……」

ゼフィル「…はっ、誰が謝るか…それはお前がやれよ、セフィオ」

セフィオ「兄さん…!」

最後までこれか…

ゼフィル「…だから、お前が今裁け。セフィオが俺にトドメさせ」

レイド「お、お前な…! そんなの」

セフィオ「いいよ。僕の罰にもなる……」

セラフ「セフィオ……」

セフィオがこちらを見て微笑んだ。

セフィオ「未来を頼みます…皆さんなら勝てるはず…

ルーリエさんを止めてください。殺神を止めてください」

フィル「うん…」

ラヴィア「支えてくれてありがとうね…」

セラフ「……必ず、勝ってくる」

セフィオ「良かった……」

ゼフィル「…………」

次の瞬間、セフィオが術を唱えて発動した。

眩しすぎるほどの光が辺りを包んだその時……


ゼフィル『……悪かった』


光が晴れた時、二人の姿は消えていた。

リティア「今……」

アイギス「…あんなギリギリで…」

エレシー「子は親を選べないわ。その被害者…」

クレイド「あいつらの両親が植え付けた憎悪が、膨らみ続けた結果だったんだな」

許されるかと言えば、違うだろうけれど……

レイド「セラフ、大丈夫か?」

セラフ「ああ、僕は行ける。ラヴィアは?」

ラヴィア「私も平気です…」

フィル「……救われるかな、二人の魂…」

…殺神の存在が邪魔なんだよな? 封印じゃなく滅すれば、こんな事は起きないよな?

倒してしまえば、多少の罰則は課せられるだろうけど…

もしかしたら…セレスティアなら聞いてくれるかも……

セラフ「……救うには、僕達が殺神を壊せるかが要だ。きっと…

行こう。殺神までに残るのはルーリエだ…」

セフィオにせめてものお礼をしたい。二人の魂の救済を。

……余計、負けられなくなったな……
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