堕天使の黙示録-アポカリプス-

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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未来を紡ぐため

堕天使の黙示録-アポカリプス- 127話

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この日の晩。

各自、レネヴィオ城やシナジア城下町で自由に過ごしていた。

明日に控えた最終決戦に向けて、考える事や話す事があったのだ。


レネヴィオ城、ベランダ。

アイギス「………」

ラヴィア「アイギスさん?」

声をかけてきたのはラヴィアだった。

アイギス「…レイドと居なくていいのか?」

ラヴィア「お兄ちゃんはエレシーさんと話してます。

私はアイギスさんに会いに来たんです…

アイギスさんは、どうしてここに?」

アイギス「…元セイヴェールの騎士が、レネヴィオ城にいるのは…

正直、いたたまれないというか…な」

ラヴィア「…シャレンさんもそうだったと聞いてますよ?」

アイギス「あいつはフェザレイに牙を向いてない。

俺は敵対上等だったし、トランスと契約したあともセラフを殺そうとした」

気にしてたんだ…

ラヴィア「…今は私達の事、助けてくれてるじゃないですか」

アイギス「だけど…」

ラヴィア「…私も捕まっていた期間が長くて…

ここの人達にはいろいろご迷惑をおかけしました。

こう言ったら変ですけど、迷惑かけた分は私達の行動で返していきませんか?」

アイギス「ラヴィア…」

ラヴィア「アイギスさんは本当は優しい人です。

フィルさんの幼馴染なんですから。信じられます」

アイギス「…憶病な感じかと思ってたら…俺より強いかもな」

ラヴィア「皆さんのおかげなんですよ。生きて帰りましょうね」

アイギス「…ああ」


シナジア城下町、噴水広場。

エレシー「レイド、ここの噴水広場好きよね」

レイド「ああ。街中でこんな

堂々としていられることが無かったからな。

こういう所にいると安心する」

ダークエルフ狩りの反動か…

エレシー「レイドは戦いが終わったらどうするの?

もうダークエルフへの偏見も無くなってるじゃない」

レイド「俺とラヴィアは取りあえずエイルの町へ行く。

俺達兄妹を心配してくれている恩人がいるからな」

エレシー「そう……私はミレンド村に戻るかな。

…あそこ、閉鎖的だし、こっち側と行き来しやすくしてもいいかも」

確かに交通手段がほぼ無い場所だ。

レイド「俺に手伝える事があったら言ってくれ。

必ず駆けつける。」

エレシー「あら、ありがと、レイド。

その時はフワリン達にも会ってあげて」

レイド「もちろんだ。

……ダークエルフの偏見も悪魔の偏見も無くなった本当の世界で、

ちゃんと生き直していきたいよな」

エレシー「……そうね、頑張りましょ。最後の戦い」


レネヴィオ城、客間。

クレイド「リティア。無理してないか?」

リティア「無理?」

この部屋にはクレイドとリティアが残っていた。

クレイド「ディアルトのこと…メフィリアがあんな事も言うし…」

リティア「…私、信じてるから。ディアルトは生きてるって」

クレイド「え?」

リティア「…遺体があがらないのなら、死んだなんて認めない…」

そういう考え方もある、か……

クレイド「……そうだな。…そのためにも生きて終わらせて来ないとな」

リティア「…クレイド。メフィリアとは私に戦わせて欲しい」

クレイド「リティア!? メフィリアの火属性と闇属性は…」

リティア「私には厳しい。でも私は幻属性も持ってる…勝機はあるよ」

クレイド「………わかった。けど、まずいと思ったら手を貸すからな。

俺はリティアをみすみす死なせることだけはできないんだ」

リティア「ありがとう。クレイドも死んだら駄目だよ?」


レネヴィオ城、屋上。

フィル「セラフ、ここにいたんだ」

セラフ「フィル。悪い、探させたか?」

フィル「ううん、大丈夫。……星見てたの?」

セラフ「ああ」

空を見上げながらセラフが答える。

セラフ「殺神復活か…実感が湧かないな。

今まで何度もその危機は乗り越えて来ていただけに……」

フィル「やれるだけの事はやったよ。

あの時、私達がどの選択をしても、アシュレイ王女は贄になっていた…

アシュレイ王女はセラフが願いを聞いてくれて、嬉しかったと思う」

セラフ「まだだ。ちゃんと叶えてやらないと。

最後の命令だ。…やり通さなければ」

いつになく、騎士らしい話し方をするセラフがやたらかっこよく見える。

フィル「セラフ。話しておくことがあるんだ…ゼルシェードさんのこと」

セラフ「どうかしたのか?」

フィル「彼…魔力が減ってた。私達の術式を作り始めた時から…」

!?

フィル「このままだと消えちゃうかもしれない…

でも多分、今何とかしようとしても、門前払いされちゃうと思う」

世界が優先…ゼルシェードらしいと言えばらしいが…

セラフ「……だったら、さっさと決着つけて、ゼルシェードの所へ行かないとな。

もしかしたら、何か手があるかもしれない」

フィル「うん…ここまで助けられて、何の恩も返せてないもの…」

恩か……ゼルシェードを肉体のある状態で

友人の、ゼニスと言う奴の所に帰す事はできないだろうか…

フィル「…セラフはこの戦いが終わったらどうするの?」

セラフ「ウィルシアさんに漠然と未来を紡ぐって言ったけど、

……まあ、僕達が生き残るのは大前提。

そのあとは、アシュレイ王女が言ったとおり、国の再建…でも考えるか」

フィル「セラフは王子様だもんね。亡国の…

私も実質、亡国の王女になったのかな…」

セイヴェールは…城下も城も潰されて、ほぼ壊滅状態だからな。

セラフ「どうせなら、名前も変えるか。新規の…新生国として。

この世界を。一つの国でまとめて……」

フィル「そうだね。もう、両国とも無いも同然だし…一つの方がまとまりもいいよね。

私も手伝うよ、元王女だからある程度はね」

・・・・・・・・・


アシュレイ『貴方は、幸せになってください』


セラフ「…………フィル」

フィル「なに?」

その直後、セラフはその場に跪いて、手を差し伸べた。



セラフ「……城の再建後も、僕の隣にいてくれないか?」



フィル「え…それって……」

幸せになってくれ…それも、アシュレイ王女の願いだ。

だったら、もう迷いたくない。悩みたくない。

敵国と言う隔たり、エデンの歪み、それが無くなった今なら…

セラフ「僕は記憶を無くす前から、今も変わらずフィルの事が好きだ。

どうかこの先も、未来にも、僕の隣にいてほしい」

フィル「………! わ、私も…貴方があの日、声をかけてくれて……

ずっと気にかけてくれて……護ってくれた…助けてくれた…!

私も貴方が好き、こちらこそ、ずっと一緒に居させて、セラフ…」

そう言って、フィルはその手を取った。



セラフ「……ははっ、伝えるのに随分遠回りした気がするな」

フィル「うん……」

セラフ「…明日、必ず勝とう。みんなで」

フィル「未来を生きていくためにも、ね」

未来か……そうだな…新たな国の名前は……

セラフ「…フィル。一つ思い出した事がある。

僕達王族の第一子には、必ず宿る力がある」

フィル「うん…私も、思い出してる」

殺神は神とは名ばかりの殺戮兵器だろうが、エデンの神々で何とか封じた存在。

それを封印ではなく完全に葬るつもりでいる。僕達人間が。

その上、エデンの神々で封じた時より強くなっているであろう殺神。

王族の第一子が持つ力、天使の役割の力、それを取り込んでいる状態なんだ。

だったら、トドメは生半可な力じゃ無理。

セラフ「邪を消し去り、解き放つ力。その力を合わせれば、

王族であり、天使の力を持ったアシュレイ王女を取り込んでいる

殺神にも届く…だろうか」

フィル「……届くよ。ううん、届かせる。私とセラフで」

セラフ「……頼りにしてる、フィル」

フィル「うん、私も……」

……明日は、またクラスチア城に向かう。

メフィリア、ゼフィル、ルーリエとも決着をつける事になるだろう。

この三人は通過点だ。

この戦い…必ず勝つ。
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