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神龍剣
堕天使の黙示録-アポカリプス- 58話
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カエルラ神龍殿でしばらく休んでいると、セラフが目を覚ました。
フィル「セラフ! 良かった…」
セラフ「…フィル、レイド……手の麻痺が治ってる…」
レイド「フィルが治してくれた。
サフィオの厚意で、ここで休ませてもらってたんだ」
セラフ「そうだったのか…心配かけたな。…あいつは?」
あいつ…アイギスの事だな。
サフィオ「アイギスならお前が気を失う直前に退散したきり
戻って来ていない。」
レイド「…あいつは何なんだ? フィルも知り合いなんだろうが、
セラフの方が思い出しているだろう?」
フィルの記憶は封印がかかっている分、不明瞭だ。
セラフ「…話さないぞ」
フィル「セラフ、もはや私は記憶のあるなしに関わらず、
必死になって捜されている可能性がある。
今さら、私の記憶が戻る事を気にしないで。抱え込まないで話して?」
セラフ「………」
少し悩んだ後、一度溜息をついて、ゆっくり話し始めた。
セラフ「分かった。…そうだな…何から話すか…
僕とアイギスは…フィル…フィレーア王女の
境遇、後の未来についていろいろ口論しててな…
相容れない意見ばかりで…
その内、いつの間にかセイヴェールから姿を消した。
理由は分からなかったが、さっきの戦いではっきりしてたな…」
・・・・・・
アイギス『力を得るためだ!
フィレーア王女を守る力と、セラフ、貴様を倒す力を得るための!』
レイド「…だが、悪魔に魂を売った時点で負けだ。
一度セイヴェールの言いなりになっていた俺だから分かる。
いつか、ディアルトに言われたんだ。
自分のために悪しき側についている俺を見ているのが辛いと言っていた、と…」
フィル「うん…私も…護るために…と言われても…
やっぱり、辛いだけだよ…」
フィルもラヴィアも優しい。自分のために誰かが闇に堕ちるなど嫌なのだろう。
フィル「ねえ、私とあの人は…ただの王女と騎士だったの?」
セラフ「幼馴染…だった気がするな」
フィル「幼馴染……」
幼馴染だと自分の恋情に気付くのが遅れるとは言うが…
自覚した頃にセラフが来るようになって、それだけでも憤り案件なのに、
しばらくしてフィレーア王女を犠牲にする…という話が上がった。
それで暴走してしまったか…
フィル「アイギスは、私が贄という話を持ち込まれる前に、
ルーリエ達から聞いていたみたいだった。
その時はまだシャレンはクラスチア城に居た…」
シャレンが投降してきたのはフィルが行方不明になった後。
アイギスがいなくなったのはまだシャレンがクラスチア城に居た頃。
フィルが行方不明になる前に、力を求めて城を出たのだ。
レイド「本当に守りたいなら、離れないでやるべきだろうに…
贄の話が出ていたのならなおさらだ…」
アイギス不在の間も、セラフはこっそり通っていたのだろう。
セラフ「僕とアイギスは、間違いなく、確かに口論していた。
フィルを、護るという事に関して…」
セラフ『何がフィレーア王女を護るだ。
お前は彼女を護り続けることを言い訳に、戦いに興じたいだけだろう。
僕なら絶対にごめんだな』
アイギス『っ…ふざけるなよ…なら貴様は、彼女に死ねというのか!?』
セラフ『お前のいう愛情っていうのは何なんだ? よく考えろ。
お前のそれは、自己を満足させるための只の我儘にしか聞こえない。』
アイギス『ならなんだ…
貴様は彼女をその手で殺し、殺神復活の阻止、世界の滅亡を止めるか!?
俺はできない! だが、ルーリエ達は殺神が蘇るまでフィレーア王女を狙うだろう。
だから殺神は蘇らせる。フィレーア王女の代わりを差し出す事で!』
セラフ『要は世界を滅ぼすか…その世でフィレーア王女が死すまで、
彼女を庇いながら、永遠に戦い続けると?
滑稽だな。僕なら、もっと違う形で彼女を愛してやれる』
アイギス『全て守れるなんて夢物語でも見てるのか?
結局この世は袋小路だ! 彼女を護るために人類も、世界も滅ぼしてやるよ!』
セラフ『そうだな…フィレーア王女が犠牲になった世界なら、僕も滅ぼしてしまうだろう。
だが、僕は彼女を犠牲にするつもりはない。
だから、この世界を護り続けるさ。神魔騎士の野望を砕く形で!』
アイギス『勝てると思ってるのか!?』
セラフ『お前では無理だろうな。だから、最悪のパターンしか思いつかないんだ』
アイギス『!! くっ…フィレーア王女は…貴様には渡さない!!』
・・・・・・・・・
まさに暴走……
フィル(……今の話…つまり、セラフは私の事…愛して…?///)
フィルの頭の中が爆発した気がした。
サフィオ「なぜ…神魔騎士を止める方向で考えられないのか…哀れだ…」
セラフ「実力不足だ。実際、僕に勝てた事はなかった」
レイド「戦った事あったのか?」
セラフ「しょっちゅうだ。敵国の騎士同士だったからっていうのもあるが…」
アイギスの言葉を聞いている限り、フェザレイに対する敵意は少なからずありそうだ。
セラフ「僕達はフェザレイとセイヴェールが争った原因を知らない。
ゼルシェードの話が正しいなら、この争いもエデンがおかしくなったせいだろう。」
フィル「人の心も操作できる…それに抗えるのは心が強い者だけ。
……アイギスは……」
心が弱かったところに、嫉妬、焦燥、暴走、憤怒、色々混ざってしまったのだろう。
セラフ「あいつとは、僕が決着をつけなければならない。
アシュレイ王女もフィルも贄にはしない。世界も壊させない。
止めなければ、アイギスは大罪人…誰にも裁かれない、永遠の咎を背負う事になる」
セラフは…アシュレイ王女もフィルも世界も、アイギスの事も救おうとしているんだ。
レイド「アイギスは、独りで何もかもやろうとしてしまったんだな…
けど、俺達は六人もいる。神魔騎士にだって対抗できるはずだ」
実際、メフィリアに一矢報いている。
フィル「以前のセラフは…一人で背負っていたの?」
セラフ「アージェ達に相談はしてた。だから、独りではなかったさ」
フィル「そっか…」
戦わないといけない奴が、一人増えてしまったが…
放っておくわけにもいかない。
フィルの幼馴染。本来優しい奴のはずだ。だが……
トランス『ああ、あいつ、僕の力…悪魔の力を欲したんだよ。
だから与えた、それが浸透。
その代わり、死んだら魂は僕が喰らうっていう契約でね』
悪魔の契約した者の末路…死後、悪魔に魂を喰われる。
それ=…輪廻転生が不可能になる…という事だ…
フィルは…気付いているんだろうか…
レイド「そうだ、サフィオ。神龍剣っていうのを、今集めているんだ。
エデンに行くために必要でな…」
サフィオ「元管理神から神龍剣を護っている大神竜に伝達があった。
エデンが今おかしくなっていると…
お前達になら託してもいいだろう。持って行け」
伝達行ってたのか…スムーズで助かる。
ここのは、水の神龍剣だ。…強力な水属性の人なんて自分達にいたか?
フィル「私でもできると思うけど…光担当した方がいいよね?」
レイド「俺が該当するはずだ。氷は水属性の応用みたいなもの。そうだろう?」
レイドがサフィオに問いかけると、頷いてくれた。
サフィオ「そうだ。レイドなら扱えるだろう」
セラフ「そうか…なら、任せる」
サフィオ「ところで…エレシーは元気か…?」
エレシー…随分心配されてるんだな。
フィル「彼女が悪魔って事ですか? 私達は全員受け入れたから大丈夫です」
セラフ「あいつに刻まれた邪命も消えた」
サフィオ「そうか…よかった…」
そろそろ行かないと待たせるだろうと、カエルラ神龍殿をあとにする。
道中、フィルに記憶に関して聞いてみた。
セラフ「アイギスのこと、何か思い出したか?」
フィル「少しぐらい…かな…よほど、封印が強固みたいだね…」
レイド「そうか…というか、フィルの記憶を封じたのは誰なんだろうな…」
アイギスではなさそうだ。…可能性としては、シャレン、か?
フィルが行方不明になる前に出て行ったのなら、アイギスに聞いても知らないだろう。
………ん?
ふと、セラフの頭をよぎった。トランスの言葉。
セラフ『リーフェン王は…どうした…?』
トランス『殺したけど? だってあいつがなりたがってたのにさあ、本物いらないでしょ。
それに、この国の王は優しかったからね。
「堕天使」を生かしてほしくない身としてはさぁ…』
アイギスは…フィルを死なせたくないんだよな…?
トランスは…フィルを死なせたいんだよな…?
アイギスはトランスと契約した。フィルを護りたい、僕を殺したいという願いで。
トランスの意思と相反する。
もし、アイギスがトランスの思惑を知らないのならば……
トランスは…アイギスを利用するだけ利用して、願い成就を応援しておいて…
機を見て、アイギスを殺すつもりなんじゃ……
フィル「セラフ! 良かった…」
セラフ「…フィル、レイド……手の麻痺が治ってる…」
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あいつ…アイギスの事だな。
サフィオ「アイギスならお前が気を失う直前に退散したきり
戻って来ていない。」
レイド「…あいつは何なんだ? フィルも知り合いなんだろうが、
セラフの方が思い出しているだろう?」
フィルの記憶は封印がかかっている分、不明瞭だ。
セラフ「…話さないぞ」
フィル「セラフ、もはや私は記憶のあるなしに関わらず、
必死になって捜されている可能性がある。
今さら、私の記憶が戻る事を気にしないで。抱え込まないで話して?」
セラフ「………」
少し悩んだ後、一度溜息をついて、ゆっくり話し始めた。
セラフ「分かった。…そうだな…何から話すか…
僕とアイギスは…フィル…フィレーア王女の
境遇、後の未来についていろいろ口論しててな…
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その内、いつの間にかセイヴェールから姿を消した。
理由は分からなかったが、さっきの戦いではっきりしてたな…」
・・・・・・
アイギス『力を得るためだ!
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フィル「うん…私も…護るために…と言われても…
やっぱり、辛いだけだよ…」
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セラフ「幼馴染…だった気がするな」
フィル「幼馴染……」
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自覚した頃にセラフが来るようになって、それだけでも憤り案件なのに、
しばらくしてフィレーア王女を犠牲にする…という話が上がった。
それで暴走してしまったか…
フィル「アイギスは、私が贄という話を持ち込まれる前に、
ルーリエ達から聞いていたみたいだった。
その時はまだシャレンはクラスチア城に居た…」
シャレンが投降してきたのはフィルが行方不明になった後。
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レイド「本当に守りたいなら、離れないでやるべきだろうに…
贄の話が出ていたのならなおさらだ…」
アイギス不在の間も、セラフはこっそり通っていたのだろう。
セラフ「僕とアイギスは、間違いなく、確かに口論していた。
フィルを、護るという事に関して…」
セラフ『何がフィレーア王女を護るだ。
お前は彼女を護り続けることを言い訳に、戦いに興じたいだけだろう。
僕なら絶対にごめんだな』
アイギス『っ…ふざけるなよ…なら貴様は、彼女に死ねというのか!?』
セラフ『お前のいう愛情っていうのは何なんだ? よく考えろ。
お前のそれは、自己を満足させるための只の我儘にしか聞こえない。』
アイギス『ならなんだ…
貴様は彼女をその手で殺し、殺神復活の阻止、世界の滅亡を止めるか!?
俺はできない! だが、ルーリエ達は殺神が蘇るまでフィレーア王女を狙うだろう。
だから殺神は蘇らせる。フィレーア王女の代わりを差し出す事で!』
セラフ『要は世界を滅ぼすか…その世でフィレーア王女が死すまで、
彼女を庇いながら、永遠に戦い続けると?
滑稽だな。僕なら、もっと違う形で彼女を愛してやれる』
アイギス『全て守れるなんて夢物語でも見てるのか?
結局この世は袋小路だ! 彼女を護るために人類も、世界も滅ぼしてやるよ!』
セラフ『そうだな…フィレーア王女が犠牲になった世界なら、僕も滅ぼしてしまうだろう。
だが、僕は彼女を犠牲にするつもりはない。
だから、この世界を護り続けるさ。神魔騎士の野望を砕く形で!』
アイギス『勝てると思ってるのか!?』
セラフ『お前では無理だろうな。だから、最悪のパターンしか思いつかないんだ』
アイギス『!! くっ…フィレーア王女は…貴様には渡さない!!』
・・・・・・・・・
まさに暴走……
フィル(……今の話…つまり、セラフは私の事…愛して…?///)
フィルの頭の中が爆発した気がした。
サフィオ「なぜ…神魔騎士を止める方向で考えられないのか…哀れだ…」
セラフ「実力不足だ。実際、僕に勝てた事はなかった」
レイド「戦った事あったのか?」
セラフ「しょっちゅうだ。敵国の騎士同士だったからっていうのもあるが…」
アイギスの言葉を聞いている限り、フェザレイに対する敵意は少なからずありそうだ。
セラフ「僕達はフェザレイとセイヴェールが争った原因を知らない。
ゼルシェードの話が正しいなら、この争いもエデンがおかしくなったせいだろう。」
フィル「人の心も操作できる…それに抗えるのは心が強い者だけ。
……アイギスは……」
心が弱かったところに、嫉妬、焦燥、暴走、憤怒、色々混ざってしまったのだろう。
セラフ「あいつとは、僕が決着をつけなければならない。
アシュレイ王女もフィルも贄にはしない。世界も壊させない。
止めなければ、アイギスは大罪人…誰にも裁かれない、永遠の咎を背負う事になる」
セラフは…アシュレイ王女もフィルも世界も、アイギスの事も救おうとしているんだ。
レイド「アイギスは、独りで何もかもやろうとしてしまったんだな…
けど、俺達は六人もいる。神魔騎士にだって対抗できるはずだ」
実際、メフィリアに一矢報いている。
フィル「以前のセラフは…一人で背負っていたの?」
セラフ「アージェ達に相談はしてた。だから、独りではなかったさ」
フィル「そっか…」
戦わないといけない奴が、一人増えてしまったが…
放っておくわけにもいかない。
フィルの幼馴染。本来優しい奴のはずだ。だが……
トランス『ああ、あいつ、僕の力…悪魔の力を欲したんだよ。
だから与えた、それが浸透。
その代わり、死んだら魂は僕が喰らうっていう契約でね』
悪魔の契約した者の末路…死後、悪魔に魂を喰われる。
それ=…輪廻転生が不可能になる…という事だ…
フィルは…気付いているんだろうか…
レイド「そうだ、サフィオ。神龍剣っていうのを、今集めているんだ。
エデンに行くために必要でな…」
サフィオ「元管理神から神龍剣を護っている大神竜に伝達があった。
エデンが今おかしくなっていると…
お前達になら託してもいいだろう。持って行け」
伝達行ってたのか…スムーズで助かる。
ここのは、水の神龍剣だ。…強力な水属性の人なんて自分達にいたか?
フィル「私でもできると思うけど…光担当した方がいいよね?」
レイド「俺が該当するはずだ。氷は水属性の応用みたいなもの。そうだろう?」
レイドがサフィオに問いかけると、頷いてくれた。
サフィオ「そうだ。レイドなら扱えるだろう」
セラフ「そうか…なら、任せる」
サフィオ「ところで…エレシーは元気か…?」
エレシー…随分心配されてるんだな。
フィル「彼女が悪魔って事ですか? 私達は全員受け入れたから大丈夫です」
セラフ「あいつに刻まれた邪命も消えた」
サフィオ「そうか…よかった…」
そろそろ行かないと待たせるだろうと、カエルラ神龍殿をあとにする。
道中、フィルに記憶に関して聞いてみた。
セラフ「アイギスのこと、何か思い出したか?」
フィル「少しぐらい…かな…よほど、封印が強固みたいだね…」
レイド「そうか…というか、フィルの記憶を封じたのは誰なんだろうな…」
アイギスではなさそうだ。…可能性としては、シャレン、か?
フィルが行方不明になる前に出て行ったのなら、アイギスに聞いても知らないだろう。
………ん?
ふと、セラフの頭をよぎった。トランスの言葉。
セラフ『リーフェン王は…どうした…?』
トランス『殺したけど? だってあいつがなりたがってたのにさあ、本物いらないでしょ。
それに、この国の王は優しかったからね。
「堕天使」を生かしてほしくない身としてはさぁ…』
アイギスは…フィルを死なせたくないんだよな…?
トランスは…フィルを死なせたいんだよな…?
アイギスはトランスと契約した。フィルを護りたい、僕を殺したいという願いで。
トランスの意思と相反する。
もし、アイギスがトランスの思惑を知らないのならば……
トランスは…アイギスを利用するだけ利用して、願い成就を応援しておいて…
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