堕天使の黙示録-アポカリプス-

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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交す約束、果たす約束

堕天使の黙示録-アポカリプス- 46話

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レネヴィオ城に戻ってくるなり、兵士に囲まれた。

そうだ…あの時は、アージェが庇ってくれてたから…!

「その堕天使を殺せ! リーフェン王の命令だ!!」

リティア「なんで堕天使の名前が…!?

それはフィレーアってお姫様の事でしよ…?」

クレイド「……っ、ああ、そうだな」

セラフ「………」

セラフがフィルの前に盾になるように立つ。

極力みんなにフィルがだとバレないように自然に。

フィル「……セラフ」

セラフ「こいつら…ここまで凶暴だったか?

アージェが庇っている事も知っているだろ…」

レイド「ああ、少なくとも俺達が城に滞在中は殴りこんでくるような事なかった」

エレシー「………」

その時、エレシーが手をかざす。すると、糸が切れたように兵士が倒れていった。

フィル「!!!」

セラフ「今何やった?」

何かを唱えたわけじゃない。魔法ではない…?

エレシー「安心して、殺してないから。

多分、浸透の力が強くなってる…強化させたのかも。

その浸透の力を断っただけ」

力を断つ…? なんで浸透なんてよく分からない力を断てる…?

クレイド「今は後にしよう。アージェたちの所へ行くのが先だ」

リティア「うんっ」

フィル「シャレンたちを助けないと!」


いる場所は地下牢だろうから、下の階まで極力見つからないように移動。

見つかった場合はエレシーに気絶させてもらった。

そして…

セラフ「アージェ! ビレス!」

フィル「シャレン! いる!?」

同じ牢に三人ともいてくれた、が…

アージェ「セ、ラフ…あいつ、王が…おか、しい」

おかしいのはアージェ達もだろ…何があった?

シャレン「逃げ、て…くれ…抑えが、きかなくなる…」

エレシー「浸透の強化…この三人は、ギリギリのところで自我を保ってる状態ね。」

もともと王に反逆した直後だ。怪しむ気持ちを消すために、

この三人を取り込むために、強化したのか。

ビレス「逃げた方がいいよ…攻撃する前に…」

レイド「エレシー、頼めるか?」

レイドに言われ、すぐにエレシーは力を断つ。

けど、アージェ達は気を失わなかった。

それでも力は断てたようだ。

エレシー「この三人は、力が強いみたいね。気を失わないみたいだし」

まあ、そうでもなければ抵抗していられなかっただろう。

アージェ「あ…ああ…楽になった…手間をかけたね、セラフ達」

シャレン「あああああ…!! フィル様を傷つけずに済んでよかったぁぁぁ」

フィル「し、シャレン;;;」

とりあえず、今の状況を話すと、ビレスが焦った。

ビレス「王女が危ないかもしれない…

彼女は僕たち以上に国王を怪しんでいた。親だからだろうな」

アージェ「もし、この強化された力でも操れなかった場合、

国王が偽者なら、王女様を殺すかもしれない…!」

その偽者の戦闘力が分からない…本来の王なら戦う力はあったらしい。

だが、今回は脅しておきながら、身動きができない相手を殺す事もできない奴だと。

それでも絶対じゃない。操った兵士を使って殺す事ぐらい可能だ。

リティア「ぎ、玉座に行けばいいのかな…」

クレイド「確証がないが、可能性が一番高いのはそこだろうな。」

セラフ「行こう、アージェ達も来れるか!?」

アージェ「ああ、大丈夫だよ」


アージェ達を連れて、玉座まで移動する。

王女の部屋も玉座のすぐ隣だというから心配だった。

セラフ「っ! なっ……」

玉座に座っているのは偽者の王。目の前に立って、こちらに背を向けている女性は…?

アージェ「王女様!!」

?????「アージェさん…シャレンさんにビレスさんも、無事ですか?」



セラフ「……アシュレイ、王女…」

セラフが王女様の名前を呼んだ。

クレイド「名前、思い出したのか!?」

姿を見たおかげだろうか。

シャレン「良かった…アシュレイ王女は正常のようだ!」

リーフェン?「貴様ら! どうしてここに…!」

ビレス「セラフ達から全部聞いたよ。お前、偽者だろう」

リティア「王女様は離れてください…!!」

それに対して返って来たのは、「大丈夫よ」の一言。

アシュレイ「こんな奴に、あなた方の手を汚す必要はありません。

……消えなさい、アンジェレイフ!!」

天使の羽が放たれて、王の偽者が消えうせた。

クレイド「なっ…なにが…!」

アシュレイ「…アージェ達にも、黙っていましたね…私は…」


そこまで言うと、玉座から声が聞こえた。

????「はは…あははは!!! よく浸透から脱したね。

人間には解けないはずなんだけど…あとアシュレイ王女のも誤算だったよ」



その声の後、玉座に現れたのはまだ13かそこらの男性。

ただ、人間じゃない事は分かった。だって、浮いてるから。

エレシー「…あ……っ」

レイド「誰だ、よ…!?」

まるで、王の偽者の体から出て来たような…

????「ふっ!」

球体を手から出すと、何かを吸い取った。

????「…やっぱりあんまり強くないから、まずいな。

ま、いっか」

フィル「今、何をしたの!? 貴方は誰!?」

トランス「トランス。僕の名前。そこにいる、エレシーの弟で、悪魔だよ」

セラフ「なっ……は…?」

エレシーの弟…悪魔って……じゃあ…

エレシーの方を見ると、苦しそうな表情をしていた。

これが隠したかった事…か。

トランス「ねえ、姉さん。なんで人間に加担してるの?

忘れたわけじゃないよね。

世界は僕らで掌握する。セイヴェールに掌握されたら困るんだ。

だから、使を殺せって、僕命じたよね?」

エレシー「逆らった…逆らった、みたい…だった…」

トランス「へえ、無意識なんだ。そうまでして…

やっぱり姉さんは役に立たないや」

リティア「ねえ! さっき、何をしたの…!?」

少し悩んでから答えた。

トランス「ああ、あいつ、僕の力…悪魔の力を欲したんだよ。

だから与えた、それが浸透。

その代わり、死んだら魂は僕が喰らうっていう契約でね

ま、それでも精神力も実力も見たない雑魚だったわけだけど。

願いが「玉座に座って威張りたい」だったんだから当然だよね。

ついでに使も殺してもらいたかったけど、中途半端に終わったね」

………国王は…

セラフ「リーフェン王は…どうした…?」

トランス「殺したけど? だってあいつがなりたがってたのにさあ、本物いらないでしょ。

それに、この国の王は優しかったからね。

使を生かしてほしくない身としてはさぁ…」

それを聞いてセラフが駆けだした。

フィル「あっ! セラフ!!!」

セラフ「はあああ!!!」

斬りかかったが、片手で止められている。傷さえついてない。

トランス「はっ!」

セラフ「がっ…!?」

弾かれて膝をつく。

エレシー「セラフ!」

フィル「大丈夫!?」

なんで…武器も持ってないのに…

トランス「君達じゃ僕にはまだ勝てないよ。アシュレイ王女も殺したいけど…

まあ、このぐらいにしといてあげる。じゃあね」

エレシー「トランス!!」

トランス「従わないなら、次は姉さんも殺すよ。君達もね。」

クレイド「待て!!」

シャレン「まだ聞きたい事が!」

引き留めようとしたが、返事はこうだった。

トランス「姉さんとアシュレイ王女から聞くと良いよ。

なんで浸透が効かなかったか、悪魔が何たるか、全部答えられるから」

そう言って転移でどこかへ行ってしまった。


・・・・・・・・・

セラフ「エレシー……」

エレシー「ごめん…ごめんなさい……」

レイド「謝らなくていい。何だか知らないが、あいつの仲間じゃないんだろう?」

逆らったって言ってたからな…

アシュレイ「……部屋を移動しましょう。

アージェ。客間へ」

アージェ「は、はい!」

アシュレイ「私からもお話したい事があります。

私の力についてと、……あ…これは、話さない方がいいかしら」

フィルの方を向いて話しかけた。

フィル「いいえ、アシュレイ王女…もう隠す事も不可能でしょう」

リティア「フィル……」

シャレン「フィル様…」

部屋に移動する途中、

俯いていたエレシーを支えて歩いてくれたのはクレイドだった。

さっきまでの弟と名乗る存在、今の謝罪。

自分が問い詰めて追い込んでしまった負い目があったのかもしれない。
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