月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

文字の大きさ
上 下
97 / 100
過去と現在は手を取り合って

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 97話

しおりを挟む
ゼニス「……ゼファ…」

決着がついた。

もうこれ以上やってもゼファの身が持たない。

ゼニス「よし、水晶を壊そう」

ゼファ「…あ、諦めるわけには…いかないんだ…っ。民が待ってる…!」

よろけながらも、こちらに歩いてこようとする。

サルファー「もうやめてください!?」

パリス「無茶です…!」

ビオレ「あんたね…自分を犠牲にする事に何の意味があるのよ!」

ゼファ「…これは、我の責任…で…! …やめろ…クレセディアを奪うな…!」

途中で膝をっいた。

エルブ「陛下…もう、いいんですよ。」

ソレイユ「いい加減、未来を歩いて」

ゼニス「……認めなよ、ゼファ。…クレセディアは、滅んだんだ」

ゼファ「!!」

バッサリ言い切ったせいか、ゼファの動きが止まった。

ここまで言わないと、ゼファは無理をしてしまうだろう。

フロスティたちのためにも、死なせるわけにはいかない。

ゼファ「…………我は……」

ゼニスが水晶に近付こうとした時、異変が起きた。

???「デスウィンド!」

ゼファ「がっ!?」

ゼファが弾き飛ばされた。

というよりも…!? この技は…

エルブ「陛下!!」

慌ててエルブが駆け寄る。

ゼファ「う…」

良かった、まだ息はある。

???「仕留め損ねたわね…まあどうせ死ぬからいいわ」

その声とともに姿を見せたのは…

ソレイユ「な、何で…」

パリス「あの時確か…っ」

サルファー「……生きて、居たのですか」

ビオレ「だって…」

エルブ「………ふざけるな…」

ゼニス「何でお前がいる! ベレイザ!!」

あの時研究所で倒したはずのベレイザだ。

どうして……

ベレイザ「倒したと思った? 残念。

直前で転移しただけよ。ダメージ自体は大きかったから、回復に時間は掛かったけどね」

ゼファ「き、貴様は…!」

ゼニス「お前の事は一度倒している! 僕らに勝てると思うな!」

そういってもベレイザは余裕そう。なぜ…一度負けているのに。

ベレイザ「ここにいいものがあるものでね。」

後ろを振り返る。

ベレイザの後ろには大罪を溜めた水晶がある。

ソレイユ「まさか……」

ビオレ「ちょっと、何する気!?」

ベレイザ「他の人間や紙が使うと大罪に耐えきれないけど、

堕ちた私が使う分には問題ないのよ。大罪に耐性があるから」

躊躇いなくその水晶に触れる。

その瞬間、強い光に包まれた。全ての負が溢れかえった感じ。


ゼニス「…う…何が……!?」

元のベレイザの姿はどこへやら。そこにいたのは化け物そのもの。

でも……

ベレイザ「ここまでしても、勝ち目があると思う?」

声は…話し方はベレイザそのものだ。

胴体の中央にあるのは、先ほどの水晶だろうか。

エルブ「取り込んだんですか! あの水晶ごと大罪を!」

エルブがゼファの傍を離れてゼニスの方に来て再度武器を構える。

ソレイユ「それは、三大陸を滅ぼしてクレセディアを取り戻す力だよ!?」

サルファー「クレセディアは貴方が滅ぼしたでしょう。その力で何がしたいのですか」

ベレイザ「この力はクレセディアを復活させる以外にも使えるわ。

使用者の意志で願いを変えられる。

…私の願いは…世界と神界の破滅…!」

…!? そんな事になったら…何も復活せずに、ただ滅ぶだけ滅ぶ。

全てが壊れる。

ベレイザ「発動までもう時間が残り少ないのよね。その間私が時間を稼げばいいだけ」

ゼニス「させない、そんな事! もう一度倒してみせる!」


ベレイザ「ディスピア!!」

ソレイユ「っ!? う…力が…っ!」

今のは……フェズの…模倣!?

パリス「! 光の道標エヴィレーレ・ルーディス!」

よし、これで一度は戦闘不能になっても耐えられる…けど。

ベレイザ「ラストライフ!」

サルファー「くっ…!?」

エルブ「今の…!」

ぱりすの能力のおかげですぐに立ち直れたが、今のは…

一撃で戦闘不能…まさかサラテリの模倣技…。

ビオレ「暗毒牙!!」

サルファー「巻き込め…ボルテックスブロウ!」

隙を突いて攻撃を仕掛けるが、まるで効いていない…ような。

ベレイザ「あっはは! 人間ごときが大罪を得た私に勝てるとでも!?

ディジーズソウル!」

全体にバラバラの状態異常…しかも病系ばかり…!

グラファイトの模倣だ…。

サルファー「っ…救済の妖精テルサス・ソルディダム!」

大罪の力を得た技だ。サルファーの能力じゃないと解除ができない。

ベレイザ「デッドリーヒート!」

ゼニス「…ベレイザの能力が上がった…! っ…連絶剣!」

エルブ「氷刃・一刀!」

ソレイユ「連煌斬舞!!」

三人がかりで仕掛けるが、碌にダメージが通らず、代わりに…

ベレイザ「ラメンテイション!」

馬鹿みたいな一撃を喰らって吹き飛ばされる。

パリス「!! 光の雨よ…エードヒーリア!」

今の一撃の重さ……さっきの能力を上げたのはプリムローズの模倣か?

ゼファ「……シャレた真似をしてくれるじゃないか…

彼らの能力を真似するなんて、さ…!」

ビオレ「ちょっと! ゼファは大怪我してるんだから! 変に挑発しないで!」

こちらもさっきからの攻撃でかなりガタが来ているが…。

ゼニス「く…らちが明かない! こうなったら…」

剣を構え直して体勢を整える。そして…

ゼニス「っ…リュンクティス…っ!?」

万等属性奥義を使おうとした時、急に電撃が走ったように激痛が。

ソレイユ「ゼニス!? どうしたの!?」

ゼニス「…わ、分からない…急に。リュンクティス…ぐあっ!?」

パリス「癒せ…エードヒール!」

慌てて回復させる。けど、これはどういう…


ベレイザ「万等属性を封じたのよ。使おうとすれば激痛が走る。

常人じゃ耐えられないほどのね」

……全員か?

ベレイザ「万等属性に頼っていたものね。それが無いと厳しいわよね?

実際、こいつを止めた力はその万等属性が決め手」

……確かに、万等属性は有能だし、相手の弱点を気にせずにできる。

ゼニス「く、この…っ」

ベレイザ「そういえば、万等属性って人の意志に反応するんだったわよね?

ふふ、あっははははははは! 意志、くじかれちゃったわね?」

ソレイユ「あんたって奴は…!」

サルファー「この程度で、私達が諦めると思っているんですか!?」

パリス「万等属性が無くたって…!」

エルブ「一度僕らは、お前に勝っている!」

でも、それでもベレイザは余裕そうで。

ベレイザ「今私は大罪の力を取り込んでいる。

あの時より強い。あの時ぎりぎりだった貴方達に勝ち目は無い!

ディストラクション!」

!! ベレイザの技が再度飛んできて、全員弾き飛ばされる。

ゼニス「グッ…」

(強い……)

ゼファ(!! ゼニス……!)

ベレイザ「そうそう、今外、どうなっているか分かる?」

ゼニス「…?」

ベレイザ「再度ここに降り立った時に、一つ贈り物をしておいたの。

……私の僕。今頃地上の戦闘は大変な事でしょうね」

ソレイユ「え…!?」

ベレイザの僕がどんなものなのかは知らないが、そこらの魔物よりは強いだろう。

それが今、ゼファの仲間の魔物との戦闘で疲れたみんなの所へ!?

ベレイザ「ああ、街にも行ってるかもね。将軍様と騎士様は大変だこと」

……城の人間をクレセディアまで連れて来なくて正解だったかも。

けど…それでも持つかどうか。

ベレイザ「仮に私に勝っても、その頃には全滅、なんてね?

もしくは水晶に破壊に間に合わないとかかしら? あっははははは!!」

ゼニス「っ!!」


その頃…他の場所では。

アイリス「シオン! そっちはどうにかなりそう!?」

シオン「一応倒せる…けど、数が多い!」

ブローディア「ああ、もう! こっちは疲れてるのに!」

シュロ「キリが無いぞ。」

レオノティス「魔王を倒す実力があってこの手間は…」

アスター「……他の奴らは平気か!?」

フクシア「……でも、これ、何…さっきまで戦ってた魔物じゃないし」

シスル「………人間より強大な存在の…」

リナリア「……僕…?」


ローレル「こいつらどこから湧いてきた!?」

ネメシア「無駄口は後! 今は殲滅を!」

バジル「街まで入ってくるか…冗談じゃないぞ」

ガイラルディア「……彼らは、無事なんだろうな?」


ラージャ「ちっ! この期に及んでなんだよ、ゼファか!?」

カテドラル「……違う…ゼファはここまでしないだろう。

不測の事態が起きたようだな。」

ラージャ「……ゼニス!! お前らも…無事でいろよ!?」


ローズ「ミストさん」

ミスト「ローズ。この村は平気よ。

私も神聖魔法ぐらいなら使えるし、シュロさんが頑丈な門を作ってくれているから」

ローズ「…シュロ」


「ジューン、大丈夫?」

ジューン「この街も、防御結界が張られましたね…

……仮に何かあっても兵士がいますから…でも……」

(……サルファー、パリス……どうか無事で…)


「ソリスの町の防衛に、リラ様自ら出向くとは…」

リラ「私達の里は誰も入れませんが、他はそうもいきません。

せめて、近場の町だけでも守ってあげるべきです」

(…ビオレ…必ず帰って来て)


ロココ「ほんっと、どうなってるの!?」

バレヌ「っ、ゼニス…大丈夫なんだろうな!?」

エーリカ「ディモンロスト!!」

アクバール「グラヴィティオゼロ!! 潰れろ潰れろ!」

サラテリ「よ、容赦ない…」

プリムローズ「普段のアクバールから想像できない」

グラファイト「こういう奴ほど、戦闘になると怖いんだよ…」

フェズ「見かけによらねぇなぁおい!!」

フロスティ「感心してないで、楽しんでないで我らもギルドの防衛やるぞ!?

……こいつらは…覚えがある。……ベレイザの僕じゃ」


エレジェフィア「ゲンレイ!!」

ゲンレイ「エレジェフィアか…」

エレジェフィア「現状は聞いてる!? というか分かってる!?」

ゲンレイ「ああ…ベレイザが動いた」

エレジェフィア「ベレイザ…性懲りもなく…というか、なんで消えてないの!?」

ゲンレイ「あの研究所で…倒したのか、本当に」

エレジェフィア「え?」

………

ゲンレイ「とどめを刺される前に転移した…とか」

エレジェフィア「!!?」

………

エレジェフィア「ゲンレイ」

ゲンレイ「言われなくても…」


あれから、何度も攻撃をくらって、とてもロクに戦える状態じゃなかった。

でも、その中でもゼニスだけは諦めず、未だに立ち上がった。

ゼニス「ぐ…はあ…はあっ……」

ベレイザ「頑張るわね…もうボロボロなのに」

ゼニス「…僕は、ゼファの意志を潰してここに立っているんだ。中途半端に終わって堪るか…!

絶対に…諦めるものか…!」

ベレイザ「現実見なさいよ」

またベレイザの魔法が飛んで来る。

ゼニス「ぐあっ!? …くっ、僕はまだ…戦える…!」

ソレイユ「…ゼニス…!」

一撃で倒れてしまうほどなのに戦える、なんて自分でも馬鹿げているように聞こえる。

でも、それでもあきらめたくなかった。

ベレイザ「ここで諦めれば苦痛も何もない、無の世界に逝ける。

楽より苦の方が多いでしょう。解放してあげるから」

ゼニス「そのわずかの楽を…幸せを…僕は欲しいんだ。そのためならどんな苦でも耐えられるさ!

お前みたいに、ただ傍観して、気にくわない時だけ介入してくるような臆病者が一番嫌いだ!

人の想いも気持ちも覚悟も分からないような、全部下らないと思う奴!」

もう立っているのが精いっぱいでも、精一杯叫び続けた。

ゼニス「だから…お前は倒す……絶対にだ!!」

ベレイザ「愚か、無謀…これで終わりにしましょう。デッドエンド!」

「「「「「ゼニス!!!」」」」」

ベレイザの魔法が迫る。みんなが大声を出しても、もう間に合わない。

そう思った時…

何かが、その衝撃を受け止めてくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

異世界楽々通販サバイバル

shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。 近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。 そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。 そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。 しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。 「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...