月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ

瑠璃✧*̣̩⋆̩☽⋆゜

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過去と現在は手を取り合って

月が響鳴-カナデ-るカプリッチオ 93話

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エルブがエピナールとの一騎打ちに出た。

二人とも武器は同じ。兄弟で、もともと仲間で、能力は当初は同じだった。

エピナール「今まで俺に勝てたためしなんて一度もねぇだろうがよ!?」

エルブ「…そうだよ。僕は兄さんに手合わせで勝てた事なんて無い。

…でも今は、手合わせじゃない。絶対に勝たないといけないんだ」

ゼルシェードの言う通り。これは、この決着はエルブにしか付けられないのだろう。

苦痛の中、陛下に救われた者同士。

エルブ「僕は陛下も、兄さんも救ってみせる!」

エピナール「やれるもんならやってみろよ! 

勝てないと思い知って這いつくばれ!!」

エピナール、もう本当に正気じゃないな…。

セピアの時と同じ感じに。

エルブ「……負けません、絶対に。本気で来てください!」


エピナール「消滅する時間テンプス・ラクタック!」

さきほどソレイユに打ち消された能力スキルを再度使用して

瞬間移動が可能になる。

エピナール「氷閣忌・絶!」

エルブ「っ!」

相変わらず舞台は展開されたままなので、相手の先手。

しかも瞬間移動で攻撃してくるので回避はまず不可能。

ゼルシェード「回避はともかく攻撃なら大丈夫だ。エルブの今の能力スキルは…」

エルブ「捉える刃ポーテスト・エヴァーデレ! 氷刃・一刀!」

エピナール「なっ!?」

当たった…!

エルブ「僕が新たに得た能力スキルは、バリアもどんな敏捷も捉えます。

陛下に攻撃が通るようにと考えたものですが、

兄さんとの一騎打ちにも、必要だと思った。…その結果がこの力!」

エピナール「っ! 攻撃が当たるようになった程度で、勝てると思うなよ!?

ディストフローズ!」

エルブ「うぐっ!」

(兄さんのこの空間じゃ、回避は無理。たまたまかわせることはあるかもしれないけど)

つまりは…あまり余裕はない。

エルブ「っ、氷の刃…アイシクル!」

エピナール「この…華桜氷閃!」

エルブの魔法を喰らった後、すぐに斬り込んできた。

エルブ「ぐ、う…っ兄さん…! こんなことしてももう意味ない!

諸悪の根源のベレイザはゼニス師匠達が倒してくれた!

このまま続けても、陛下が死んでしまう! それが分かってて何で止めないんだ!」

エピナール「黙ってろ!!」

剣戟音がして二人がいったん距離を置く。

エピナール「………なるほどな…

さっきからかわすそぶりも見せねぇから変だと思ったが…!!

かわせない、じゃなくてかわさない、か!!」

そう言って魔法を放つ。

エピナール「ダークフォトン!」

エピナールの魔法はエルブを通り過ぎた。

エルブ「え…!」

パリス「っ!?」

エルブ(間に合って…!?)

滑り込んで何とか刀で防ぐ。

エルブ「グッ…はあ、間に合った…!?」

パリス「え、エルブ…」

サルファー「こちらに魔法が飛んできた…!」

エルブの丁度後ろにはパリスがいた。

自分がかわせばパリスに当たる。だからずっと回避せずにいた。

エピナール「誰かを守るために自分の犠牲は厭わねぇ?

綺麗ごとはいいんだよ!」

エルブ「陛下だって…そうじゃないですか…っ」

エピナール「ああそうだ! だからベレイザに付け込まれた!

けど、俺達は陛下に優しさは捨ててほしくねぇ、だから俺達は黒く染まる事を選んだ!」

エルブ「そんなことして…陛下が喜ぶと…?」

顔を伏せたままエルブが呟く。

エルブ「誰よりも優しい陛下が、僕達が冷たくなることを望むとでも!?

それに、何よりも……!」

踏み込んで刀をぶつける。

エルブ「今は僕が相手だ兄さん! パリスを狙うな!!」

エピナール「クハハハハハハハ!!! 今の俺に人の心なんかねぇんだよ!

ただうざいだけだ、あの世逝きにしてやるよ! エルブ!!」

ガキンと音がして、一度体制を整える。

エルブ「凍てつけ大地…ニヴルヘイム!」

エピナール「アトロシャスグラシア!」

二人の魔法が衝突すると同時に、またソレイユの中に流れ込んでくる。


エピナール『う…あなたは…?』

ゼファ『え…き、君達は…? そっちの子…!

疲弊してるじゃないか。君まで…雨の中一体…!』

エピナール『お願いします! エルブだけ…エルブだけでも、助け…!』

ゼファ『あ、ち、ちょっと君! 意識はあるけど、もう話せないか…』

サラテリ『助けてあげよ。』

グラファイト『僕が手当てする。宿屋、近くにある?』

プリムローズ『さっき、見かけたよ。連れて行こう?』

………

エピナール『……ここは』

ゼファ『気が付いたかい?』

エルブ『う…ん…?』

エピナール『エルブ!!』

フロスティ『随分やせ細っておったぞ。食事は用意しておいた。

冷めてるかもしれんが、食べるか?』

エルブ『……毒…とか…は…』

グラファイト『……境遇が酷かったみたいだね』

ゼファ『平気だよ。そんな事しないさ。

僕はゼファ。ここらに旅行に来ただけの君達の事情を何も知らない人だから』

エピナール『…エピナール、です…こっちはエルブ…弟です。

…頂きます…ありがとうございました…』


エピナール「陛下のために……全員あの世行きになれよぉぉぉぉぉぉ!!!!」

エルブ「…僕らは陛下に救われた。

なら、陛下を生かすために戦いましょうよ!! 兄さん!!

陛下の望みであっても、僕らは本当は、陛下のいないクレセディアなんてそんなもの…!」

少しエピナールの刀を握る手に力が込められた。

エピナール「うるせぇんだよ! そう言うんなら、俺を殺す気で来い!

生半可な気持ちなら、ここで死んで地獄行きになるのはてめぇだ!!」

ビオレ「…エピナール…」

パリス「エルブ……」

もう後に退けないのだ。どっちに行けばいいのか分からずに、立ち止まって。

ただ、陛下の望みを…果たす事だけ考えて。

エピナール「これで閉幕させてやる…! クトゥグアルイーナ!」

エピナールがオーブを使った時だけ使える奥義。

セピアのと同じような奴…!

エルブ「兄さんと、陛下と姫様と四零士とセピアさんとここに居るみんなと生きていたいから…!」

エルブの刀が光った。エルブにも万等属性は答えてくれた。

エルブ「レウニオンセルモ!」

怯まなかった。自分より強い兄でも。願いはそれ以上。

エピナール「ぐっ! これは…、俺は…俺達は…いつまで傷つけられれば終わる…!?」

エルブ「こっちに来てください…陛下と共に!

……らああああああ!!!!!」

エピナール「かはっ…エルブが俺を負かした……っ…

く、そ…俺達の居場所は………ふざけるな……!!」

苦しそうに声を上げる。

でも体力は限界。その場に膝をついた。


ソレイユ「エルブ! ちょ、怪我酷いよ!」

パリス「癒せ…エードヒール!」

パリスがすぐ回復。

エルブ「すみません…大丈夫です。

ソレイユさん、兄さんをお願いします」

ソレイユ「うん。彼の時の歪曲アクセプト・エグゼスト!」

能力を使い、エピナールをこの時代の人間として留める。

エピナール「……くそ…っ」

もう翼はない。オーブの状態はとうに切れている。

ビオレ「エピナール。貴方、居場所が欲しいの?」

エピナール「……やっと手に入れたクレセディアを奪われた…

陛下もゼルシェード様も奪われた…

世界は、何度私達を…僕達を虐げれば気が済む…!?」

エルブが近くに歩いて行った。

エピナール「…来る、な…」

エルブ「……兄さん。僕らの居場所はここにあります。

少なくとも、ここに居る人達は、僕らを虐げたりしません。

だって、僕は、ここで元気にやっている」

そう言って近くに座った。

エピナール「…エルブは、今…幸せ…?」

エルブ「はい」

ゼルシェード「セピアも生きている。全員生きて罪を償わせるつもりでいる。」

ビオレ「処刑なんて望んでもさせないから、覚悟して?

…また兄弟で、生きれば良いじゃない」

それを聞いて、やっと落ち着いたのか手に持っていた刀が落ちる。

エピナール「……罪を犯しすぎた…それでも…生きていていいのなら…

……陛下を…頼む…」

その言葉を最後に気を失った。

ソレイユ「光よ癒せ…エーテルキュア!」

軽く手当をしておく。

サルファー「彼も後ですね。」

ゼルシェード「よくやった。これで残るはゼファだけだ。」

セピア同様連れ帰っている時間はないので、ゼファを止めてから戻ってくることに。

パリス「お疲れ様、エルブ」

ソレイユ「そーだ! カッコ良かったよ、エルブ!」

エルブ「え、あ、えへへ…そうですか?」

うーん、やっぱりかわいい、かな? とは、言わないでおこう。

一行は先へ進む。残りはゼファ一人。
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